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第28話 再会

「これだけあれば充分だろ……」


 町の再ダンジョン化も、高ランク冒険者たちにの手によって治められた。

 発見が速く、すぐに問題解決に移れたことが早期解決を呼んだと噂されている。

 他にも、高ランク冒険者の中でもSランクに近いレベルの者がたまたまこの町に滞在していたという幸運も重なったことも要因とされている。

 避難した市民も町へと戻り、町の再建が始まっている。

 その中でも無事に済んだ商店街に足を運んだ凛久は、買い込んだ野菜を見て頷いた。


「アンッ?」


「ん? 肉か?」


 野菜ばかりを買い込む主人に、クウは首を傾げる。

 別に念話が使える訳ではないが、凛久はクウが何を言いたいのか理解する。

 凛久の料理は何でも食べるが、クウは特に肉が好きだ。

 野菜ばかりではなく、肉も欲しいのかもしれない。


「肉は途中で手に入れよう」


「アンッ!」


 肉は次の町へ向かう途中、魔物を狩れば手に入いる。

 そのことを告げると、クウは元気に声を上げる。

 頑張るといっているかのようだ。

 

「ハハッ!」


 元々は弱々しかった子犬が、今では元気いっぱいだ。

 そんなクウの様子を見て、凛久は思わず笑みをこぼした。


「おっす!」


「おお、クラセロ」


 買い物も済んだことだし宿屋へと戻ろうとしていたところ、凛久たちはクラセロに遭遇した。


「買い物か?」


「あぁ、臨時収入が入ったから新調しようと思ってな」


 凛久の問いに、クラセロは武器屋を指差して返答する。

 再ダンジョン化で一番活躍したのは、攻略した冒険者たちだ。

 しかし、凛久やクラセロたち低ランクの冒険者も、領兵と共に上層部の魔物の退治や市民の避難に協力したため、ギルドから多少の報酬が支払われた。

 その報酬を利用して、武器を新調するつもりのようだ。


「聞いたぜ。出ていくんだって?」


「あぁ、ここで調べられることは終わったんでな」


 自分と同じ異世界人だと思われる初代日向国王。

 彼が日向に至るまでの道程を辿れば、もしかしたら元の世界に帰る方法が見つかるかもしれないと凛久は考えた。

 そのため、日向国王の情報を得るためにこの町に来た。

 図書館で調べた結果これから向かう方向も分かったし、そろそろ次の町へ向かうことにした。


「薬学の追及だっけか? まあ、がんばれよ。またこの町に来たら飲もうぜ」


「あぁ、じゃあな」


 色々と世界を旅するためには何かしら理由があった方が都合がいいため、凛久が考えたのは薬学の勉強をするという理由にしている。

 薬草集めばかりしているのもその一環としているのだが、クラセロはその設定を信じているようだ。

 野菜を買いに来たのも、町を出ていくことを決めたからだ。

 そんなに長い付き合いではないが、共に危険な魔物との戦いを乗り越えた仲だ。

 そのため。クラセロとしては多少の寂しさを感じている。

 しかし、出会いも別れも多いのが冒険者だ。

 再会を期待し、2人は別れの言葉をかけあったその翌日、凛久は地下都市イタヤを後にした。






「さて次はキョーワって町か……」


 イタヤの町の門から出た凛久は、次の町へ向けて歩き出す。

 そして、次の目的地のことを呟いた。


「結構遠いから、探知の方よろしくな? 馬車でもあれば良かったんだけどな……」


「アンッ!」


 これから向かうのは、イタヤから東にあるキョーワという町だ。

 地図上では東だが、その間には深い渓谷が存在しているため、それを避けて遠回りに進まなければならない。

 昔はイタヤから東にまっすぐに向かえる橋があったのだが、台風で壊れてしまい遠回りしなければならなくなった。

 橋が壊れたことでイタヤとの交流もなくなってしまい、キョーワへと向かう定期便もなければ護衛依頼もない。

 もちろん馬車を買うだけの資金は持っていないため、徒歩で向かわなければならないため、何泊か野宿をしなければならない。

 そうなってくると、魔物の夜討ちが気になる。

 その時のことを考えて凛久がクウに探知を期待すると、クウは嬉しそうに返事をした。


「私も付いて行って良いか?」


「っっっ!?」


「っっっ!?」


 街道を進んでいると、イタヤからそれほど離れていない所で突然から声をかけられ、凛久とクウは驚きと共に振り返った。

 どちらかと言うと、クウの方が驚いているかもしれない。

 何故なら、自分の鼻に全く反応しなかったからだ。


「あ、蒼!?」


 気配なく現れた人物が何者かと思ったら、顔を見て凛久は再度驚く。

 ヤーセンの町で別れたはずの、蒼がいたからだ。


「やあ! 久しぶり」


「……あぁ、久しぶり」


 凛久とクウを驚かせたことに成功した蒼は、してやったりといったように笑顔で挨拶をして来たため、凛久はまだ完全に呑み込めていないまま返事をした。


「もしかして、今回のダンジョン攻略に貢献した冒険者って蒼なのか?」


「正解!」


 迅速にダンジョン攻略しできたのは、Sランクに近い冒険者がいたからだという話だった。

 まだ低ランクの自分が、そんな人間と関わることなんてないと思っていたため凛久は興味がなかったのだが、目の前にいる蒼を見てその人物が誰なのか気が付いた。

 そのことを凛久が尋ねると、蒼は笑みと共に返答した。


「実は凛久に話したいことがあるんだ」


「……何だ?」


 蒼から先程までの笑みが消える。

 その変わりように、凛久は何を言って来るのか身構えたくなる。


「実は凛久に監視を付けていたんだ」


「……監視?」


「あぁ……」


“パチンッ!!”


 誰かに監視されていたなんて覚えがない。

 監視されていたというのなら、クウが探知しているはずだ。

 何を言っているのか分からず首を傾げている凛久を見て、蒼は指を鳴らした。


“シャッ!!”


「「っっっ!!」」


 蒼の背後に、どこからともなく片膝をついた人間が姿を現す。

 またも探知に引っかからず、凛久とクウは目を見開いた。


「あんた……」


「私の部下だ。風巻という」


 蒼の背後に現れた人間の顔を見て、凛久は気が付く。

 ヤーセンの町で会った魔道具屋の主人だ。

 何故ここにいるのかと思ったら、蒼が彼を紹介してくれた。


「色々と聞きたいことがあるだろうけど、先にこっちの質問に答えて欲しいんだ」


「えっ? あ、あぁ……」


 何故自分がここにいるのか、何故風巻という者に監視させていたのかなど聞きたいことはたくさんあるのは分かっている。

 しかし、それを答えるために確認したいことがあるため、蒼は真剣な表情で凛久に向き合う。

 何を聞かれるのか分からないが、そう言われては仕方がないと、凛久は蒼からの質問を待った。


「リク。君は異世界人だろ?」


「っっっ!!」


 蒼から発せられた質問に、凛久は気配なく現れたこと以上の驚きで言葉を失った。



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