異世界転移【後編】
本日二話目です!
【前作で手詰まりした原因がこれかもな】
………返す言葉がございません…
ガゼボには、色とりどりのお菓子と純白のティーカップが人数分並んでいた。
「もしかして、花茶?初めてみたけど、きれいね」
中央にはガラス製のティーポットがあり、大輪の花が開いていた。
「レレルヒート様が先日、貰われました。それに合わせて、咲き誇る花の庭園をイメージして、お茶菓子をご用意いたしました」
ジュハンドはレレルヒートの椅子を引き、レリーナの椅子も引いた。
ジュハンドさんはやっぱり、紳士的ね!
レレルヒートは席についたジュハンドに笑顔で話しかけた。
「レリーナが『紳士的ね!』って、褒めてたぞ」
当然の事をしたまでですと顔色ひとつ変えず謙遜するジュハンド。先程もそうですが、なんで、私の心を読むんですか!と顔を真っ赤にしてレレルヒートに怒るレリーナ。
「流石、ジュハンド。顔色ひとつ変えないな。レリーナ、それは、わかってしまうんだから、仕方ないだろ?君たちは我が眷属なんだから」
眷属。神の眷属は主神の一部である。そのため、眷属の目や耳は主神の目や耳、力は主神の一部、眷属が思ったことは主神に筒抜けなのである。また、眷属と主神は連絡を取り合えることができるが、主神しか、通信を切ることができない。
「わかってますよ。でも、なんで言っちゃうんですか!」
面白いからとケラケラ笑いながら、レレルヒートは答えた。
「レレルヒート様、本題をお忘れですか?なんのためにこの場を僕が用意したと思っておられますか?」
お茶を入れ終わったジュハンドが笑顔で問う。レリーナは(あ、怒ってるわ)と思い、静かに入れられたお茶を飲む。レレルヒートは姿勢をすぐに整え、コホンッと咳払いした。
「………レリーナ、単刀直入できく。これから、どうする?」
これからですか?と少し考えて、
「そうですね、まだ、死んではいないので、もう少し、現世で過ごしたいです。しかし、あの王子達がいない世界がいいです。なので、私の希望としては『異世界転移』したいです」
と答えた。その答えを聞いて、レレルヒートはジュハンドと目配りをした。
「ちょうど、君たち二人のどちらかに行ってほしい世界があってね。サイフツ帝国に行ってほしいんだよ。レリーナの希望の『異世界転移』もできてるし、ぴったりだと思わない?」
「そうですね。ジュハンドさん、私が行っても大丈夫ですか?」
「僕は行く気がなかったので構いません。現世には正直、行きたくないんです」
では、決まりだね。そう言って、レレルヒートはお茶を飲みきった。
「荷物はどうすればいい?この2つは持っていくけど」
レリーナはウエストポーチから扇と大刀を取り出した。
「どっちも神界で作ったものですよね。まあ、大刀は失敗作なので、神剣類には入りませんが………現世に持っていくと、なんだかんだでまずいでしょうし…」
「扇はだめでしよ!収納されてる、鋼糸が神剣類だし、扇は神器だし…」
どうしてもだめ?と大刀を抱え、扇を握って首をかしげた。
二人は悩みに悩んで、扇は極力使わないこと、大刀は手を抜いて使うことを条件に、持っていく許可を出した。
「ドレスとかはおいていってね。冒険者として落ちてもらうから」
「『渡る』のではなく、『落ちる』ですか?」
「うん!本当に落ちるから、気をつけてね」
レレルヒートとジュハンドの会話を聞き流しながら、レリーナは荷造りを完了させた。
「レレルヒート様。準備完了しました!今すぐでも大丈夫です!」
「じゃあ、落としますか、今すぐ」
「落としますって…言い方が悪いですよ」
レリーナは立ち上がり、レレルヒートは光の出口を作り、ジュハンドは後片付けをさっさと終わらせた。
「では、行ってきます!」
元気に挨拶をして、光の出口に入っていく。
「困ったときはちゃんと連絡してね〜。あ、そうそう、その体、傷とかすぐ、治っちゃうから。戦死は免れるよ!言っておくの忘れてたけど〜」
「くれぐれも、力を暴走させないようにしてくださいね。世界の均率が崩れますから」
二人の叫びにはいは〜いとテキトーに返事をするレリーナ。彼女の姿が全く見えなくなったとき、光の出口は消失した。
「いいのですか、レレルヒート様?」
「どういうことだい?」
テーブルに座って自分の眷属の問に答えた。その顔はいたずらをした子どものようだ。
「レリーナに次期帝位争いを決着する鍵が向こうに落ちた眷属である、と」
レレルヒートはフッと笑った。そして、テーブルから飛び降りた。
「さ、行くよ。彼女にレリーナが向かったと伝えに行くよ」
そう言って、歩いていく主神の後を彼の眷属が「かしこまりました」とついて行った。
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