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魔闘士という選択

いよいよ魔法の練習……の前に、簡易適正チェックを行ったアデル。

結果はなんと、魔法の才能が皆無であるという残酷な結果であった。





「……実はね、私も同じなのよ」


「え」


 突然のカミングアウトに、一瞬思考が止まる。

 そんな私の頭をそっと撫でると、お母さんは水晶に手を触れた。


 魔力を流し込まれた水晶から、一際強烈な光が放たれる。

 二回目なことと、何となく察していたのですぐに目は瞑った。

 閉じた瞼の上からでも感じるほどの眩さは、物凄い。


「……!」


「……ね?」


 恐る恐ると目を開けた先にあったのは、先ほどと何も変わらぬ様子で佇む水晶。

 確かに、私と同じ。

 違うのは、光の強さ……魔力の素養?


「……いっ、しょ」


「ええ。本当なら内緒で通そうと思ってたんだけど……アディもそうだなんてね」


 また、優しく頭を撫でられた。

 ちょっとだけ伸びた髪の毛が、くしゃっとなる。


 適性が全くないということは、魔法は殆ど使えない。

 お母さんは確かにそう言った。

 母も、私も。同じ、適性のない人間。


 ……けれど。


「……アディ」


「ん」


 お母さんは、冒険者だった。今でこそ基本的に私のそばに居てくれるけど、昔は良く飛び回っていたんだって。

 言葉が本当なら、お父さんよりも強かった…………とか。


「魔法の才能がなくとも、一戦級の戦闘能力を得ることは出来るわ。

 それこそ、私やアディみたいに、魔力そのものが極めて潤沢なタイプには、魔法なんて要らないくらい」


「……」


「……けれど、そうなるには、普通の努力の五倍は大変よ。正直、無理に冒険者にならずとも。

 私たちみたいにならずとも、普通にのんびりと暮らしていくのだって立派な選択よ」

 

 そこでいったん言葉を切ったお母さんは、私をひょいっと抱き上げる。

 ぎゅっと抱き締められた。


「今すぐに決める必要も無いわ。むしろ、逆かしら。

 もし、強くなりたいなら……お母さん達みたいになりたいなら、教えることはできるってところね」


 考えておいてね、と告げる母。その心遣いは有難いけれど、私の心はとっくに決まっている。

 降ろしてもらった私は、なるべく強気に見えるようにまっすぐお母さんの目を見つめた。


「私は、なりたい。 お母さんみたいに、強くて優しい人に。

 そして、冒険をするの!」



 ◇◇◇◇◇◇◇◇




 私なりの答えを聞いたお母さんは、一旦家の中に戻るとなにかを持って戻ってきた。

 幅30cmくらいの、平べったい板を沢山……にみえる。


「おまたせ。こういうのは見せたほうがはやいかなって」


 そう言いながら、母は手に持っていた板の束を地面に投げ落とした。

 ドシィン、と鈍い音が辺りに鳴り響く。


 ……え?待ってなんか重い音しなかった!?

 そこは普通、ドサっとかそういうものじゃないの?


 

「……お母さん、それ、なに?」


「鉄よ?」


「へ?」


「鉄。訓練にちょうど良いのよ」


「……ごめんお母さん。わたし、初めておかーさんの言ってることが理解できない」


「すぐに慣れるわ」


 ふふっと笑って、投げ捨てた板から一枚を拾う。

 さっきは意識しなかったけど、鉄ってことはあの一枚でも私には持てないレベルだよね。


「もう察していると思うけれど、ハッキリ言って才能が全く無い私達にも、魔力を使った唯一の活路があるわ。

 ……拳よ」


「こぶし」


「ええ。正確に言えば、身体……かな。魔力で直接身体を強化するのよ」


 そう言いながら、鉄の板を地面に立てるようにするお母さん。

 左手で上から抑えるようにして支えている。


「あまり一般的な戦闘法ではないけれど……私達はこれを、魔闘士と呼んでいるわ」


 フッと風を切るような音が一瞬聞こえたかと思うと、母が持っていたはずの鉄板がドサリと地面に落ちた。

 中心部で真っ二つにされたようで、残骸が転がっている。


「一般的に一流と呼ばれる戦士は、みんな少なからず魔力で身体を強化するわ。

 けれど、魔闘士のそれは次元が違う。自らの肉体一つで闘うのだから当然ね」


 一枚の鉄板を壊してみせたのをなんでも無かったかのように……いや、実際なんでもないのだろう。

 淡々と解説を続けるお母さん。

 私はそれを黙って聞いていた。


「魔闘士にとっていちばん大切なのは、自分の限界をきっちりと見極めること。

 身体の強度自体をむりやり魔力で強化するのだから、負荷が強すぎると自壊してしまう。

 日頃の訓練で限界を見極めつつ、それを少しずつ高めていくのが肝心なの」


 逆に、本当の窮地や土壇場では、反動覚悟の限界を超える強化で乗り切ることも有るんだけど。


 そういって軽く笑うお母さんは、物凄く大きく見える。

 

「まああとは、膨大な魔力量も必須ね。

 使った魔力の分だけ長く、強く闘えるのだから。

 そして、当然だけど素の身体能力。

 予め言っておくけれど、魔闘士の修練は本当に大変よ。覚悟は、良い?」


「……うん。お願い、します」


 私の言葉に大きくうなずいたお母さんは、まだ無事な鉄板を綺麗に積み直し始める。

 目の前に積み上げられたその枚数は、5枚。 


「──ハッ!」


「っ!」


 気合一閃。 ドガァン!という音とともに、5枚の鉄板がまとめて真っ二つに砕かれた。

 目視すら出来ない速さ。 

 踵落としを繰り出したと思われる体制のまま、にっこりと笑いかけられる。


「ま、まずはコレくらいできるようになるのを目標にしましょうか」


「キツくないっ!?」



 とりあえず、お母さんを怒らせるのだけは絶対にしてはいけないと学んだ私なのでした。








お母さんを怒らせてはいけない……!


導入はお終い。次で一気に時を飛ばすつもりです。


日刊の21位……!!もういまぴょんぴょん飛び跳ねてます!!

も、もっと上行きたいな……!

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