適正を測る
一年間、約束通り瞑想をひたすらに続けたアデル。
今日からはいよいよ魔法の練習……!
6歳になった。
毎日の瞑想は、もちろん欠かさず続けている。
始めた頃より魔力量は間違いなく増えたし、身体にも馴染んできた。
うん。いい感じだ。そろそろ頃合いだろう。
そう思ってお母さんに打診してみると、無事に許可がおりた。
そういう訳で、本格的な魔法の修練が始まる……はず、だったんだけど。
◇◇◇◇◇◇◇◇
今、私は家の庭に出て来ている。
今日から魔法の修練を実際にしてみるということでお母さんに相談してみたところ、庭で待っているように言われたためだ。
今世では初めて魔法を扱うわけだし、信頼できる存在が見守ってくれているというのは本当に心強いね。
もちろん私も細心の注意は払うつもりだけど……お。
「アディ、おまたせ」
そう声を掛けながら出てきたお母さんの胸には、なにか丸いものが抱えられている。
彼女は、端においてあるテーブルの上にその球体を設置すると、こちらに手招きした。
「これはね、適正をみることができる水晶なのよ」
「適正?」
ひょこひょこと歩み寄った私を抱き上げて椅子に座らせて、お母さんは説明を始めた。
目前の水晶は、奥の景色がはっきりと見えるほどに透き通っている。
「ええ。これに触れて魔力を少しだけ通すとね、一番適正の有る属性の色に光るのよ。
火なら赤色、氷なら青色。風なら緑色で、土なら黄土色……という感じにね」
「へぇ……!」
「もし全く同じ強さで二属性に適性があったならば、特殊な色になるそうよ」
「お母さんは、何色だったの?」
「私は……内緒よ」
聞いてみると、ウィンクをしながらはぐらかされてしまった。
その様子は、背後に音符マークでも浮かんで視える。
むぅ、とむくれてみせたものの、頭を撫でられると直ぐに頬が緩んでしまった。
お母さんの手は、あたたかくて、ずるい。
「一番最初は、向いている属性からやったほうが何かと良いでしょう?だから、まずこれで調べるのよ。
早速やってみましょうか」
「ん!」
母の指示通りに、水晶にそっと手を触れてみる。
ひんやりとした冷たさが伝わってきた。
「そのまま、普段みたいに瞑想……できる?」
「ん」
目を閉じて、内面に集中。
この一年間、幾度となく行ってきたそれは流石に慣れたもので、直ぐに魔力が循環し始めた。
「良いわよ。そのまま、水晶にゆっくりと流してみて」
「……こう?」
「そう。そのまま…………はい、いいわ」
言われるがままに魔力を流していると、一瞬、水晶が強く光り輝いた。
咄嗟に瞑った瞼の上からでも感じるほどの強烈な眩しさに、思わず顔を伏せる。
「今のが、魔力の絶対量に関わる素養。光が強いほど有望だとされるわ。
そして、光が止んだあとの色が……っ!」
「……お母さん?」
不意に言葉を呑み込んだ母の様子を訝しんで、ゆっくりと目を開ける。
その先には、最初と全く変わらない様子で佇んでいる水晶があった。
「……変わってないよ?」
そう聞いてみるも、反応はない。
訝しんで見上げてみると、お母さんはなにかを堪えるような顔をしていた。
「……アディ」
「……ん」
「い、いえ。なんでもないわ。 ちょっと調子悪かったのかしら」
「え」
「そうね。そういえばずっと使っていなかったものね。メンテナンスしておかなきゃ……」
「おかーさん」
「な、なにかしら?」
「ごまかさなくて、いいよ?」
「っ!」
目線を泳がせていた母の動きが、固まった。
あはは。これでも前世の経験があるからね。流石にわかっちゃうよ。
じっと、お母さんを見つめる。
彼女は居心地悪そうにしたあと、観念したように息を吐いた。
「……魔力反応を起こしたあとの無色透明は……適正のある属性が全く無いということよ」
「全く?」
「……ええ。 この時点で、いくら魔力があろうとも魔法は殆ど使えないとされるわ」
「! ……そ、っか」
母の宣告が、重く身体にのしかかる。
覚悟はできていたとはいえ、魔法の才能がハッキリ無いとまで言われてしまうと、流石に心に来るね。
……まぁ、仕方ない。今世をこうして生きられているだけでも充分すぎるくらいだし。
未練がないと言ったらウソになっちゃうけれど、ここは魔法も魔力も忘れて……
「アディ」
不意の呼びかけに、再度、顔を上げる。
そこでようやく気づいた。
母の眼が、同情や慰めといったものとは全く違うことに。
反射的に背筋を伸ばした私の様子に、ほんの少しだけ母の表情が緩む。
数秒の沈黙を経て、ようやく口を開いた。
「……私も、同じなのよ」
────え?
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