職業体験(動物園)
彼の通う中学校では二年生になると職業体験が行われる。
一週間、学校の代わりにそれぞれ自分たちの希望した職場へ通い、どのような仕事かを体験するというものだ。
動物好きの彼は迷わず「動物園」を希望した。
初日、彼は胸がはちきれんばかりの興奮とともに動物園へやってきた。
「今年からは昼食が豪華になったんだよ。君はラッキーだね。」
職員さんのフレンドリーな対応によって、僅かばかり感じていた初めての職というものへの不安も一気に吹き飛んだ。
スタッフルームへ案内されると、まず服を脱ぐように言われた。着替えだとばかり思っていたが、全裸のまま別の場所へ案内された。
動物を入れるための檻の中へ連れてかれた。だが肝心の動物がいない。
「それじゃあ閉園までよろしく」
職員さんが檻の外へ出て鍵をかけてしまった。
何が何やら分からず、ただその場に茫然自失として突っ立っていることしかできなかった。
しばらくして、檻の前に設置されている看板に気づく、「人間」と書いてあった。