楽しい狩りの時間がやってきましたわね。
静寂の森にわたくしと、リリさんが到着すると、そこは名前の通り、とても静かな森でしたわ。一般的なモンスターの出る森は、もうちょっと騒がしい感じだけど、ここは風と鳥の音が少しか聞こえてこない。まるで怒らせると恐ろしい凶暴なモンスターがいるから、静かにしているみたいな。そんな感じね。
二人で奥へと進もうとするが、目的のモンスターは入ってすぐには見つかりそうにないわね。そう思い、
「とっても静かですわね。広いし、キマイラを見つけるの苦労しそうね」
と、わたくしがぽつりと呟くと、リリさんがちょっと不思議そうに、首を傾げているわ。一体どうしたのかしら?
「あら、ミリアさん。もう目の前にいますよ?」
そう言いながらリリさんが前方を指差すと、そこには巨大なモンスターがいた。その姿は獅子と山羊と蛇が組み合わさった姿の、全長4メートルのキマイラ。その獅子の部分の鋭い鋭利な爪は、軽く人間の身体を引き裂く事なんて容易いわ。
――キシャァァァァァ!
キマイラが私達に威嚇をしてくるわ。でもどうしてこんなに簡単に、しかもあちらから来たのかしらね。
「あらあら、探す手間が省けて良いわね。でもあんたどうして私達の事がわかったのかしらね」
「ごめんなさい、ミリアさん。私の気配を感じて来たんだと思います」
どうやらこのキマイラ、雄らしい。モンスターでもサキュバスに惹かれるとは知らなかったわ。ちょっと面白いわね。
「サキュバスって本当に面白いでずのね。まっ、サクッとこの獅子なのか山羊なのか、良くわからないモンスターを狩るとしますわ」
私は背中に背負った大型ハンマーを片手で持ち上げる。確かこのキマイラのレベルは64とAクラスだけあるレベルだ。ギルドの討伐依頼の用紙にはそう書かれていたが、ステータスも強いはず。攻撃も、魔力も高いモンスターだったはずね。
キマイラはわたくしに鋭い前足の爪で顔面を切り裂こうと、襲い掛かって来たわ。そんな爪を大型ハンマーを構え、受け止める。重い衝撃が全身を貫くが、それでもわたくしは微動だにせず受け止めきると、思いっきりハンマーを振りかざし、キマイラの胴体ごと押し飛ばす。
しかし、さすがにゴブリンやオーガと違い、さほど飛ばず、すぐに体制を整えてくる。A級モンスターもお飾りじゃないって事かしらね。
「ふふ。さすがにその辺にいる雑魚とはレベルが違うわね。なかなか楽しめそうだわ」
じゅるりと、わたくしは舌なめずりをしてハンマーを片手で持ち、構えなおしたわ。束の間、キマイラの山羊の胴体部分から炎のブレスを放ってきた。
物理攻撃は軽く弾けるけど、魔法はチートしていないので、走って避けるものの、少しダメージを負い、ちょっとわたくしも焦るわ。まぁでもわたくし回復職だったので、魔法耐性があり、致命傷は受けずに済みましたの。
「ミリアさーん。大丈夫ですか~?」
「なーに、ちょっと準備運動みたいなものよ。まぁ見てなさい。わたくし、時間をかけて戦うなんて趣味じゃないの。一瞬で今から粉砕いたしますわよ」
炎をまき散らそうとキマイラの山羊部分が魔力を溜めようとしている。が、そんな時間を与える私じゃありませんわ。一気に勝負を着けさせてもらいますわよ!
「その鬱陶しい山羊の頭を潰して、その胴体をスッキリさせてあげますわ」
足にありったけの力を溜めて、わたくしは一気に爆発的な程の、7メートルのジャンプをする。そして、そのまま渾身の力を両手に込めて、キマイラの背中へと下降しながらハンマーを振り下ろした。
――キエェェェェェ!
キマイラは山羊どころか、その胴体丸ごとがハンマーによって粉々に粉砕されて、あっさりと息絶えましたの。
「わたくしの手にかかれば、こんな雑魚瞬殺ですわ。ふふ、今日も気持ちよく狩れましたわね」
「あらあら、本当にミリアさんったらお強いのですね」
やれやれ、これで3万ルピーとは楽勝でしたわね。でも少しは歯応えは前よりあったと思うわ。そうしてわたくしとリリさんは、ギルドに戻り、報酬をしっかり貰ったのでしたの。
ギルドの職員はちょっと信じられない目で私たちを終始、凝視していましたわね。