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わたくし、力の種100個飲みましたの。

 わたくしが何故この様な脳筋回復職(ヒーラー)になったのか、それは今から約2週間前に(さかのぼ)る事になるわ。


 そもそも、その時はどこにでもいる、ありふれた回復職(ヒーラー)で色々なPTを回っていましたの。杖を持ち、後衛で傷付いたPTメンバーを治療したり、時にはMP(マジックポイント)が足りなくなった時は、カバンに常備している回復薬(ポーション)で回復させたりしていましたわ。


 当然前衛などに出ずPTの回復と補佐をメインにしていたわけよね。回復職(ヒーラー)は後衛、常識の中の常識なのは、わたくしも当然分かっているわよ。わざわざ力も攻撃魔法もあまりないのだから、突っ込んで死に急ぎたいなんて思わないから。


 その日はフリーの休日で、モンスターのいない安全な草原で好きなお花を摘んでいましたのね。こう見えてわたくし花を摘んだり、薬草を摘むのが日課と趣味で、よくやっていましたの。そんな日常が普通で、まさかハンマー片手にモンスターの群れに突っ込むなんて、この時はつゆ程も想像などしていませんでしたわ。


「この花綺麗ですわね。それにこれも珍しい、合成したら痺れ効果に効く、痺れ草ですわ。今日はとってもラッキーですのね、わたくしったら幸運ね」


 今日は天気も良く珍しい痺れ草も入手して、うっすら笑みがこぼれてしまう。


 ふとわたくは思ってしまうの。いつも後方で、安全な立ち位置で申し訳ないと思いつつ、PTの皆さんはわたくしを守ってくださる。でも、もしも、わたくしにも力があったなら、ステータスに力があったのならどうなっていたのか。しかしそんな事など考えるだけ無駄ね。


 回復職(ヒーラー)が天職なのは絶対。ギルドの人も、色んなPTの方もそう言ってたわ。いつもミリアさんには助けられるよ。君の的確な判断の回復は一流だよ、と。そうわたくしはこの時までは、回復職(ヒーラー)としての資質がとても高い女性だったわけ。そうこの瞬間までわね。


「あら、雨が降りそうかしらね?」


 つい先程まで晴天だったのに、急に雲行きが怪しくなり、今にも雨が降り出しそうな天気へと変わってるのを見ると、少し不穏な気持ちになりますわね。このままここにいたら、ずぶ濡れになって風邪を引いてしまいますわ。


(とりあえず目的の薬草やお花も摘めましたし、そろそろ宿へと戻ろうかしら)


 わたくしがカバンに薬草やお花を詰めていき、帰り支度をしていると、空から何か硬い、小さな豆粒が、わたくしの上空から雨あられと降り注いできましたわ。


「――ほえっ?」


 一体何が空から降り注いでいるのか、顔を上げて確認すると小さな種のようなものが降って来て、しかもわたくしの開いた口へと、まるで狙い撃ったかのように、ぼとぼと、どばどばと、大量の種が口へと入り込み、かみ砕く間もなく喉へスルスル通り胃に瞬時に溶けていきましたわ。


「おごごごごごごごごっ!」


 まともに息も出来ず、その小さな種は次々口へと入り込み、喉を通り、胃に消化されてゆく。とても苦しくて辛くて、でも不思議と死ぬとは思いませんでしたの。


(一体何が起こってるのですの!?)


 ざっと100粒。それくらいがわたくしの胃へと小さな種が消化されたと思うわ。


(き、気持ち悪いですの。吐きそうですの。でも、もう胃に消化された感じでお腹は膨れてませんし、変な感じですわね……)


 溢れた種はどういうわけか、地面から消失して、今は何も残ってなくて。一体今のカオスで摩訶不思議な現象は、何なのかはわたくしには理解できませんわ。


「あら……? これは一粒だけ落ちてますの。この種調べたら何か分かるかも知れませんわね」


 わたくしは早速アイテムの鑑定が出来る道具を使って、種の正体を見極める。するとこの種は『力の種』だった事が判明しましたの。


「ち、力の種……ですの!?」


 力の種は食べるとその対象者に一律、力のステータスポイントを10上昇させられる、貴重なアイテム。このアイテムはその辺に転がっている事はなく、難易度の相当高いダンジョンに生えているか、かなりの強いモンスターからしかドロップしない、希少なアイテムですわ。


 そんなレアな力の種がどうしてわたくしめがけて空から降って来たのかはわからないけれど、明らかに異常事態にわたくしは遭遇した事になりますわ。そしてとても気になる事が当然ありますわよね。そうです。ステータスの事ですの。


(力の種をこれだけ食べればわたくしのステータスは……)


 早速自身のステータスウインドウを開く。


 名前ミリア・エスニア。レベル29。力999。防御力45。素早さ42。魔力98。魔法防御力83。運138。


 これが今のわたくしのステータス。ちなみに以前の力は23で、運は生まれつき高めよ。


「力999って! やっぱりあの力の種を食べたせいで、わたくし脳筋になってますわ!?」


 こんな脳筋ステータスになりパニックになる。わたくし頭が混乱の極みですわ。一度冷静になって、近くのこの巨木を一度殴って落ち着いてから、このわけわからない状況を整理しましょう。そして一発殴ってみると――、


 ――ドゴオオオン!


 軽く叩いたつもりの巨木が、何と言うことでしょう。いともあっさりなぎ倒されていきますわ。これが力999の脳筋パワーですのね……。そしてその木が倒れた音に反応して、どこからやって来たのか、ゴーレムが近くに湧いてきましたの。


「どうしてこんな場所にレベル50クラスのゴーレムがポップしてますのおおおおお!」


 必死に逃げるものの、ゴーレムが追いかけて来てくる。でもわたくしの素早さでは、到底逃げ切れないわ。このままだと追いつかれてしまいますわ。ここは一か八か、この拳であのゴーレムに少しでもダメージを負わせ、その隙に逃げるとしますわ!


 全長6メートルはあるゴーレムが、その岩のような巨大な剛腕で、わたくしを粉砕するべく拳を叩きつけようとしてくる。こんな剛腕のパンチを受ければ、身体の全身ごと砕け散るのが目に見えてますの。


(こんなのを喰らったら即死ですわ。でもこの力999ならどうにかなるはずですわ!)


 ここは脳筋パワーを信じてやるしかありませんわ!


「こんなところで、わたくし死んでたまるわけにはいきませんのよー!」


 力強く願いを込めて、女性のか弱いこの右腕で、ゴーレムの拳に自らの拳をぶつけた。すると――驚くことに、こちらの放ったパンチによってゴーレムの腕が粉砕され、そのパワーの勢いは留まらず、全身をも力が流れていき粉々に砕け散る。まさに力こそ正義だと、わたくしは確信した時でしたわ。


「やってやりましたのよっ。わたくしが一人でゴーレムを倒せる日が来るなんて信じられませんわ!」


 それがわたくしが脳筋回復職(ヒーラー)として覚醒して、第二の人生を歩むきっかけでしたのよ。お分かり頂けたかしら。ちなみにゴーレムを倒したことによって、レベルが現在38まで一気に上がりましたの。本当に笑いが止まりませんわね。

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