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4話 俺は魔獣を「耕す」

初めての戦闘を何とか切り抜けた俺達は、食料を探すことにした。


 「飯にするっつっても肝心の食料がねぇじゃねぇか」

 「どこかに都合よく動物とかいないかな?」

 「……お前の魔術、戦闘用だったんだな」


 妬むような声になる。

 とんだ誤解だ。

 羨まれても困る。


 この魔術は父さんに農業用の魔術だとずっと教えられてきた。人に使うなんて気付きもしなかっただろう。

 たとえ思い付いたとしても、「さあ、やってみよう」とはならんだろうし。


 「違うよ。あくまで農業用さ。君だってどこで剣を習ったんだ?」

 「通りすがりの冒険者を観察して覚えたんだよ」


 見ただけで?

 剣はそう簡単に扱えるようなれるものなのだろうか。少なくとも俺は扱えない。


 「それこそ羨ましいよ。だって俺、剣どころか包丁すらまともに扱えないんだぜ?」


 アローがクスクスと笑う。


 よしっ。

 なんだかんだいい感じの空気になってきた。


 「「ガサガサッ」」


 !!

 動物か!?


 「グルルルルルルル…………」


 俺は猪あたりを想像しながら音のした方向を見ると、そこにいたのは……犬のような魔獣だった。


 デカい。

 大きさが俺の身長ぐらいある。


 「ま、魔獣だっ」


 再び緊張感の増した空気になる。


 「さっきので戦い方は分かるよな?」


 アローが視線を送ってくる。


 「人と魔獣じゃ訳が違うだろ!!」


 そう言い切らない内に、すでに剣を抜いて飛び掛かっていた。


 「「バシュッッッ」」


 一発。


 魔獣の首が俺の横に転がり落ちる。

 どうやら俺の出る幕はないようだ。


 「一撃じゃないか!!」

 「さっきのあの男の剣筋を真似てみたんだよ」


 もしかして、かなりの天才か?


 「ガフッ!!」


 首だけになった魔獣が血を吐く。


 「まだ生きてるぞ!! 【農地耕作】を使ってみろ!!」


 生命力が高いな。

 まだ王都に近いというのにこれ程の魔物がいるとは……


 俺は頭に触れて多めの魔力を込めた。


 「【農地耕作】!!」

 「ギャッ。バキッメシシッッ。グチャッッ」


 それはえげつない音を出してミンチ肉になった。

 相変わらずグロい。


 どうやら送る魔力によって程度が変わるらしいな。

 覚えておこう。


 「よし!! これ食ってみるか」

 「な、魔獣だぞ!?」

 「俺の直感が食えって言ってんだ。美味かったらいいんだよ。美味かったら」


 アローはそう言って、どこからか持ってきた火打石で火を起こし、切り落とした魔獣の肉片を焼き始めた。


 ジュゥ〜という音と共に、黄金色の肉汁が滴り落ちる。

 それと同時に、スパイスを使っていないのにも関わらず唾液を誘出させる濃厚な匂いが周りを漂う。


 魔獣だからと敬遠していたが、意外とイケるんじゃないだろうか。


 俺は期待を胸に抱きながら、それにかぶりついた。


 ……結論を言うと、かなり美味い。

 今までで食べた肉で一位二位を争うレベルで美味い。


 噛み締めるごとに肉のうまみが口の中を通り抜ける。外側は少し固めだが、中はトロリと舌の上で溶けそうだ。


 「美味い!! 美味いぞ!!」


 アローが感嘆した声を出す。

 気に入ったようだ。


 「おいおいおいおい。何かいい匂いすると思って来てみたら旨そうなもん食ってんじゃねぇか」

 「私たちにも分けてくれないかなぁ〜チラッチラッ」

 「うまそうだろ? 分けてやるよって、誰だお前ら」


 俺たちぐらいの年齢の剣を持った青年と、背が低めで大きな帽子を被った、いかにも魔道士らしい格好をした女がいつの間にか並んで立っていた。


 「自己紹介が遅れたな!! 俺の名はアルフォンスだ。剣士をやってる」

 「はじめまして!! 私はドロシー。駆け出しの魔術士よ。」


 アローが剣を抜く。


 「お前らは俺たちをバカにしに此処へ来たというわけか。受けて立つぞ?」

 「そ、そ、そ、そんなつもり無いですよ!!」

 「ただ単にいい匂いがしたから来ただけだ」


 アルフォンス……こいつ、剣を向けられたというのに肝が座っているな。相当の実力派だろうか。

 いや、ただ単にバカなだけか?

 てかアローの奴、初対面の人に剣を向けるとは恐ろしや。


 「……わかった。どうやら本当のようだな。俺はアローだ。こいつはアレス」

 「どうも」


 剣を収める。

 切り合いにならなくてよかった。


 「この魔獣の強さは俺たちも知っている。それを倒したお前らに喧嘩を売るような真似はしねぇよ」


 彼は首が無くなった魔獣を横目に言いながらそう言った。


 「ドロシーの他に組んでるメンバーがいたんだが、ビビって森に入ってこなくなっちまった」

 「王都には戻らなかったのか?」


 アローが質問を投げかける。


 「戻ろうとはしたみてぇだが、透明な防壁バリアが覆ってたらしい。

 鎧のパーツを手に入れねぇと入れない、制限がかかってるみたいだな。

 アイツら鎧を持って帰ってきた奴を待ち伏せるとかなんとか言ってたが……」


 ちょっと待て。

 鎧のパーツは十個。

 王都にはパーツを持ってないと入れない。

 嫌な予感がする。


 「それって、最大で十人しか試験に合格できないっていうことですか?」


 俺は震えた声で言った。


 この試験には五百人を超える受験者がいたはずだ。


 「そういうことになるな」

 「十人しか冒険者になれないって、そんなバカな!!」

 「毎年ニ〜三百人は合格するんだが……ノクシャスとかいう奴が何を考えているかは知らん」


 アルフォンスは諦めたような顔になる。

 

 「しかし、こうなった以上やり切るしかないようだ」

 「そうだな。枠は十人しかない。すぐ出発しよう」

 

 「あの!! アレスさん!!」


 「「!?」」


 ドロシーとか言ったか……急に叫んでどうしたんだろう。


 「さっきから呼びかけてるのになんで気づいてくれないんですか!!」


 顔が真っ赤になっている。


 「何かありました?」

 「何かありましたかじゃないですよ!! そ、その……お肉食べていいですか?」


 アルフォンスが吹き出す。


 「そんだけかよ!!」

 「で、いいんですか?」


 肉の前に座っているアローが肩越しにドロシーを見る。


 「おう!! いいぜ!!」

 「ありがとうございます!!」


 口に何か含んでいる。

 もしかして……生肉か?


 「生でもこいつなかなかイケるな!! ホラッ、食ってみろ」

 「もぐもぐ……ほんとだっ!! 美味しいですね」


 切り換え早過ぎだろ!!

 しかもちゃっかり生肉勧めてるんじゃない!!

 寄生中でもいたらどうするんだ……


 「ハハハハッッ、食べてから行くとするか!!」


 全く……

 合格できなかったらどうするんだ……


 



 魔獣の生肉は結構うまい。

 覚えておこう。


 

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