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3話 初戦闘

アローは周りの風景を見渡そうと、丘の上に登った。


 「おいアレス……先はずっと森しかねぇぞ」


 登ってみると、確かに王都のある方向の反対側は地平線の先までずっと森が続いていた。


 「みたいだな。町はなさそうだしどうする?」

 「どうするっつっても、周りの奴ら全員森の中入ってるし行くしかないな」


 俺たちは目の前に広がる森へ足を進めた。


 それにしても、こんな所に森があるなんて知らなかった。幼い頃見たあの冒険者はここで見たのだろうか。その冒険者以外の事は十年程前だから記憶が曖昧だ。


 森の中は意外と明るいし、歩きやすい。

 俺みたいな経験不足な者でも快適だ。

 もしや余裕なんじゃないか?


 「安全そうだからといって慢心するなよ。こんな森でも魔獣が出る場合もある」


 釘を刺された。

 これが俺とアローとの差ってやつか……


 そんなことを考えつつ歩いていた時。


 「おい!! そこの農民!!」


 何だ?

 俺たちのことか?


 「農民がなんでこんなとこいんだ? 目障りなんだよ」


 振り返ると、ゴツい鎧を身につけた男がにやけながらこちらを見つめていた。

 コイツ誰だ?

 知らない奴だな……


 そんなことを考えいた瞬間、男は顔面に石を投げつけてきた。


 「がっ……」


 モロに当たる。


 「ざまぁねぇな。次は隣のやつ、お前だ。」


 男はそう言って笑った。

 ムカつく。

 顔が痛いが、それすらも気にならない程ムカつく。


 しかし、ムキになって手を出さないほうが自分の身のためだ。奴は経験がかなりありそうだ。ここは抑えて引かなければ……


 その時、アローが自作の剣を抜いて言い放った。


 「俺の友人を傷つけ、罵倒するとは……死に値するぞ。ここには試験官はいない。一人欠けても問題ないだろう」

 「ほう……農民にしては度胸あるじゃねぇか。まぁ、一人欠けるというのはお前のほうだがな」


 男はそう言い、腰に挿してあった細長い剣を抜いた。


 まさか……戦うのか?


 「俺から行かせてもらうぞ!!」


 アローが斬りかかる。


 「「ガキィィィン」」


 男は既にスピードが出ていたであろうアローの剣をそれを上回る速さで受けとめた。


 「ぐっっ」

 「その程度か?」


 強い。

 奴は強い。

 アローが両手で剣を持っているのに対し、男は片手で受けとめている。

 やはり無謀だったのか?


 男がアローを弾き飛ばす。


 「ガハッッ」

 「ふんっ。度胸の割には期待外れだな」


 アローは地面に手をついている。

 男が俺のほうへ歩いてくる。

 その身から溢れた明確な殺意を感じる。


 え? 

 俺?


 いつの間にか男に対する不愉快な感情は消えていた。

 そこにあるのは……恐怖。それだけだ。


 逃げなければ!!

 しかしそれだとアローの命が危ない……


 足が震える。


 ど、どうしよう……


 そう迷っていると、俺は近づいてきた男に素早く抑え込まれた。

 首筋に冷たい物が当たる。

 剣だ。剣の先が当てられている。


 「ほら、早く立たねぇと大事な友達が死んじまうぞ?」


 首に痛みが走る。


 「いッッッッッ」


 い、痛ぇ!!

 鋭い痛みがゆっくりとやってくる!!


 「ゥアアアああぁぁぁぁぁぁ!!」


 アローが立ち上がり、もう一度男に斬りかかる。

 しかし男は俺を抑え込んだまま、それを難なく受け流していく。


 アローは斬りかかるごとに、かなりの体力を消耗しているようだった。

 このままだと力尽きて負けてしまう。

 俺が何か行動を起こさねば!!


 「ぬぅ!?」


 俺は男の足首を掴んだ。

 力を込める。

 全く動かない。


 今の俺にできるのはこれくらいしかない。

 でも、やらなければならない。

 アローは俺の為にこんなに頑張っているのだ。


 「無駄だ!!」


 アローが無残にも倒れ込む。


 マズい!!

 何かしなければ!!

 アローの身が危ない!!


 俺はこの状況で他に出来ることを模索した。

 何をする?

 何をどうすればいい?

 どうしたら切り抜けられる?


 その時、脳裏にある考えが浮かんだ。


 そうだ!!

 【農地耕作】を人に使えばどうなるんだ?


 俺は手に魔力を送った。

 何度もやってきた動作だ。

 手馴れている。


 「メシメシメシッッッ」


 男の足が鎧ごと捻れる。

 やはりこうなったか!!


 「ぐッッッッ。魔術かッッッ」


 それは目を逸らすほど酷い捻れ方だった。

 声を上げないのは流石と言ったところか。


 視界の端の方でボロボロになりながらも、アローが起き上がるのが見える。


 「……最後に言いたい事はあるか?」

 「……」


 男が何か言おうと口を開いた瞬間、生い茂った草の中から細身の男が出てきた。


 「ま、待て!! 待つんだ!!」

 「……チッ。ヘンスか」


 男はその細身の男を知っているようだった。


 「お前……この男の知り合いか?」


 アローが詰め寄る。


 「ま、まぁね」


 ヘンスという男はそう言いながら、肩に掛けていたバッグから緑色の小瓶を取り出し、中身を捻れている足へ振りかけた。


 「何故邪魔をした? 俺はその男を殺さねばならん」

 「コイツに死なれたら困るんスよ。まさか負けそうになるとはね」

 「違う。負けそうになったんじゃない。負けたんだ。ただ単に強さを見誤っただけだ」


 男が否定する。

 最初にあんなことしてきた癖に理性はあるみたいだな。

 足は緑色の小瓶の効果か、完全に修復している。


 「ほらっ。君らにもやるよ。質のいい回復薬だ。飲んでみろ」


 一瞬毒かもしれないと疑ったが殺意は感じられない。

 信じて飲んでみると、体の疲れと首の傷が消えていくのを感じた。それを見ていたアローも、それを飲むと戦う前の様子に戻っていった。


 「さて、首を出せ」

 「――こうして助けられた以上、殺される訳にはいかん。善意は無駄にしてはならんからな。勘違いするなよ?お前ら農民ごときに屈した訳ではないからな」

 「じゃ!! そーゆーことで」


 二人は森の中へ消えていった。


 「待て!!」


 追いかけるも、既に姿は見えなくなっていた。


 「クソッ!! すまんアレス……仇を討てなくて」

 「いいよ。アイツにダメージ与えただけ十分だ」


 アローは悲しそうな顔をして倒木の上に座った。


 「……」

 「…………」


 「「グゥゥゥゥーー」」


 「ブッッッッ」

 「め、飯にするか!!」


 俺は顔を真っ赤にしてそう言った。

 ともかく、初めての戦闘を乗り越えたのだ。

 祝わなければな。


 

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