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①
恥の多い生涯を送ってきたことは、言うまでもない。
「私は待っていたのだ。果てしなく長い年月を。」
「駅のロータリーには、タクシーを待つ人の列ができていた。ゆらゆらと白い蒸気が、まるで暗い海を漂うクラゲみたいに、少しずつ、少しずつ、何もない宇宙に吸い込まれていく。」
「なんて孤独な旅なのだろう。」
「私は小さく呟いた。」
「無我夢中でスマートフォンをいじる人々の傍らで、ひっそりと産声をあげた私の声がその孤独な旅に寄り添わんことを切に願う。」
私の呟きは突如、背後から響いた声に掻き消された。
「あれ?もしかしてヒロ?」
振り返ると、「天真爛漫という字で体を表したような女がそこに立っていた。」
以前とは、別人と言っていいほどに姿形は違うが、この女には見覚えがあった。
「夏美か?」
「私は麻薬の売人のように、静かに問いかける。」