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〜旅立ち〜

いよいよ旅立ち、、、

  、、、!?

  これって職業なんだろうか?

  目を開けると牧師さんも明らかに動揺しているのがよく分かる。【無職】と言うのはすごく珍しいのだろう。目の前の牧師さんに聞いてみると、なんと1億人に1人の割合なんだとか。

  ある意味宝くじを当てるよりもすごい事だが、全然嬉しくない。


  職業と言うのは、それによって人生が半分以上決まると言われている。その職業によってそれぞれが適した『スキル』と呼ばれる能力が手に入る。

  例えば、【剣士】なら『剣術』、【魔術師】なら『属性魔法』、【鍛冶師】なら『鍛冶』、となる。


  けれど、無職と言うのはそう言ったスキルを全く手に入れることが出来ない。

  更には、普通の職業なら上級職へと転職する事が出来る。けれども無職には、そう言った「転職」と言ったものがなく一生無職のままなのである。


  そういう事で、一生スキルが手に入らない身体になってしまった僕は、がっかりした。

  折角憧れの世界に転生出来たのに、まさか何も出来ない身体だとは。

 

  ここで僕は思い出した。僕の夢に出てきた世界にも、確かに職業というものが存在していた。今の世界と同じ様に。

  けれども僕は、スキルを使っての戦い方は全くしていなかった筈だと。そう、僕は夢の中でも【無職】だったのだ。

  それにも関わらず僕は『賢者』と呼ばれその世界で活躍していたのだ。


  ならば!この世界でも僕は頑張れば活躍し、『賢者』になれるのではないか。

  そうと決まれば、僕は早速家を出ていくことを父に伝えた。この町でやれる事はもう無いので、早く冒険者になり、己の身体をさらに鍛えようと考えたからだ。

  父には事前に、成人して職業を授かったら家を出ていくことを伝えていた。なので直ぐに了承されると思っていた。しかし、

「ダメだ。お前はこの町に残りなさい。」

 反対された。


「職業を授かったら出て行ってもいいと言われました。」

「私は、ちゃんと()()()()職業を授かったら出て行ってもいいと言ったのだ。【無職】ではまともに闘うことも出来ないだろう。」


  最もな言い分だが、僕は反論した。

「僕は闘えます。どうすれば認めてくださいますか?」

 父はどうしても僕に諦めさせたいのか、父自身との模擬戦での勝利を提案してきた。

  僕は迷うことなくこれに応じた。今まで僕は父や兄たちは以上に『努力』してきたのだ。ここで折れてしまっては全てが無駄になる。


 ……………………………………………………………………………


  父との模擬戦は2日後に行われた。場所は集会所の広場。最初は屋敷の庭という予定だったのだが、どこから聞きつけたのか多くの町民に広場でやるよう促され、結局こうなった。

  この日は広場が人でごった返した。町最強と呼ばれる人物とその人物の実の息子が、模擬戦とは言え決闘をするのだから注目を集めるのは必然だった。


  早速試合が始まろうとしている。僕は夢がかかっているので負けるわけにはいかない。

  広場の中央で父と向き合うと途端に騒々しくなった。耳を傾けてみると、

「【無職】が勝てる訳ねぇ」

「あっという間に終わりそうだな」

「カイ君にも頑張って貰いたいねぇ」

 と皆、僕には期待していなかった。けれど、関係ない。

  審判のアゼルが合図をかける。


「アレク・エドワーズ対カイ・エドワーズの模擬戦を始めます!

  それでは、、、開始!!!」


  僕と父は同時に1歩目を踏み出し、一瞬で間合いに入った。

  右上段の父の斬撃を受け止める、と見せかけて剣で軽く左に逸らせて避ける。

  父は職業【聖騎士】のスキル『神聖加護』によって戦闘中のステータスが上昇しているので、まともに受け止めると力技でダメージを与えられてしまう。

  逆に攻撃が外れると隙が出来るので、そこが狙い目だ。

 隙が出来た父の死角に”縮地”で一気に入り込み、右肩に突きを入れる。

  父は辛うじてこれを防ぐが完全にバランスが崩れている。

  ここで”身体強化”を使い一気に踏み込む。『神聖加護』には及ばないが、ここで最初よりも強化された攻撃を受ければタダでは済まない。

  加速した剣で袈裟斬りを決める―――


「終了!勝者、カイ・エドワーズ!!!」


 ―――寸前に審判の声がかかる。どうやら勝てたようだ。


  けれど、試合後の歓声は無くただお葬式の様な空気が流れる。皆、驚愕しているのだ。

  最強だと思っていた人物が、成人したばかりの、しかも【無職】に負けたのだ。

  驚くのも無理はない。


  僕はただ普通に闘っただけなのだが。


  父が口を開く。

「な…何だ、今のは…

  なぁカイ、一瞬お前が見えなくなったんだが…何をしたんだ?」

  隠すつもりは更々無いので、素直に答える。

「”縮地”を使ったんだよ。その後に”身体強化”も。」


 ………………


  再び静寂に包まれたと思うと、


「「「「「「「「「んなにぃぃぃぃぃい!?」」」」」」」」」


  質問をした父はおろか、観戦していた町民も一様に驚きを露にした。


  それもその筈。僕が使った”縮地”や”身体強化”は、実は『スキル』自力で再現したものだ。

  僕が【無職】であると知っている皆は、僕が『スキル』を使ったことに愕然とするのも無理はない。【無職】は本来『スキル』を使えないので。

  なのでここでしっかりと訂正しておくとしよう。


「僕が使ったのは、『縮地』スキルや『身体強化』スキルを再現した”縮地”や”身体強化”だよ。」


「「「「「「「「はあぁぁぁぁぁぁあ!?」」」」」」」」


  更に驚かれてしまった。


 ……………………………………………………………………………


  決闘も終わり、帰り道。父に未だスキルについて言及されていた。


  「なぜスキルが使えるんだ?」

  「訓練したから。」

  「訓練しても普通は使えないぞ?」

  「死ぬほど訓練したらいいよ。」

  「いつから使えるんだ?」

  「10歳の頃には既に使えてたよ。」


  そう、僕は早く強くなりたい一心でひたすら努力していたのだ。スキルは兄たちの訓練を見て、1人で特訓していたのだ。


  また、僕の中の魔力は認識出来るようになった当初から、膨大な量になりある程度魔法も使えるようになった。

  術式は屋敷の書斎を読み漁っていたら、魔法理論についての著書を見つけ、それを教科書にして学んでいた。


  しかし、魔法と言うのも普通は魔術師系の職業だけが、魔法についてのスキルを得られるらしい。

  なので父たちに言ってしまったら、卒倒してしまうかも知れないので、辞めておく。


 ……………………………………………………………………………


  翌日、父に勝ったので早速荷物を整理して出ていくことにする。父も僕の実力を認めてくれたのか素直に送り出してくれる。

  玄関には父、母、そして、兄たちが揃っている

  僕はこんな温かい家庭に生まれ変わったことに感謝する。


「ありがとう!行ってきます!!」


 ――温かい家族に送り出された僕はろくに舗装もされていない道を行く。

  ここから、僕の新しい人生をが始まる―――



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