1.〜転生〜
新しく書き始めました。
よろしくお願いします。
僕は夢を見ていた。今、僕が存在する世界、「地球」とは似ても似つかない世界。人間も、動物もいる。これだけなら地球と変わらない。僕の興味をそそるのは、「魔物」と呼ばれるモンスター。スライムもいれば、ドラゴンもいる。更には「魔族」もいて、これらを討伐する事が生業の人々が存在する。これはもう、正しくゲームの様な世界である――――――――――
――――――――――目が覚めると何時もと同じ、暗く狭い部屋にいた。リビングには中年の男女がいたが、気にせず素通りする。ダイニングのテーブルに1000円札が数枚あったので貰って、玄関を出ていく。
これが、我が家の日常だが、一般家庭の普通では有り得ない光景だろう。
けれど、僕はこれが苦しいとも寂しいとも思わない。
まあ、だからといって決して楽しい訳でも無い。
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この生活が始まったのは僕が12歳で、小学校の卒業まで残り3ヶ月をきった時だ。
両親はが結婚記念日なので僕は留守番して、2人には久々のデートに行ってもらった。この時はまだ冬真っ盛りなので、温泉に入ろうと両親は、箱根まで行った。
この日は日曜日だったので学校もなく、ゲームをしたりマンガを読んだりして気ままに過ごした。
夜になり、夕食も風呂も済ませてまた先程の続きをしようとゲームに没頭した。
眠くなってきて、そろそろ日付けも変わった頃だろうと、時計を見ると1時を回っていた。そして違和感に気付いた。異常に家の中が静かなのだ。時間も時間なので外が静かなのはなんの問題もない。けれども、家の中に僕以外の人の気配がないのだ。両親は日帰りのなのでこの時間にいないのはおかしい。不安に駆られたが、道路が渋滞でもしてなかなか進まないのだろうと1人納得して眠ることにした。
翌日になっても両親はいなかった。寂しさを紛らわすためにテレビ点けた。何時も通りのモーニングショーがやっていた。突如テレビの画面が切り替わった。
『緊急ニュースです。
昨夜午後10時半頃、神奈川県内で自動車と軽トラックによる衝突事故が発生しました。この事故によりトラックの運転手は腕や肋などの骨折、また意識不明の重体です。
自動車の運転手、水戸 和志さん、そして一緒に乗り合わせていた、水戸 加奈子さんの死亡が先程確認されました。
この事故は、路面凍結によりスリップした軽トラックが自動車に衝突したと見られ、警察は路面凍結による更なる事故の発生の注意を促しています。
これで緊急ニュースを終わります。』
ここでまた、楽しげなモーニングショーが始まった。○○県の郷土料理、オススメスポット、見どころなどリポーターが解説しているが僕の耳には届かなかった。
水戸 和志が死んだ。
水戸 加奈子が死んだ。
声が出ない。
体に力が入らない。
この時、僕、水戸 海生海生の頭の中は真っ白 になった。機械的に淡々と告げられた両親の死によって僕の脳は麻痺した。
それからのことは、よく覚えていないが遺族である僕に、免許証か何かで確認したんだろう、警察が家に来て色々確認や説明を受けた。
そして僕は、唯一の親戚だからという理由だけで愛情も何もない空間に閉じ込められた――――――――――
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今日も何時もの様にコンビニで、朝ごはんと弁当を買ってから高校までの道のりを歩いて行く。
義父と義母そして、僕より2つ歳上の義兄は家でまともな朝食を摂っている。因みに義兄は高校三年生だが、電車通学の為、僕より起きるのが遅い。
何時も通り学校に着き、僕の席である窓側の一番後ろに座って何となく外を眺めていると、人に話し掛けられる。決して楽しいものでは無い。
「よぉ、水戸ぉ。何時もの買ってきたかぁ?」
この粘着質な声。見なくても分かる。関わってきたのは、篠崎とその取り巻き。正直言って面倒臭いが、この人数に喧嘩で勝てる訳もないので、逆らう訳にも行かない。痛いのは嫌なので。
「あぁ、これだろ?」
そう言ってコンビニで買ったおにぎりとカレーパンを渡す。
既に分かっていると思うが、僕はイジめの対象になっている。貧相な体つきに目を付けられたのだろう。そりゃあ、毎日コンビニ弁当やら、スーパーの惣菜やらだけで済ましていたらこんな身体になるのも仕方ない。義理の両親達よ、恨むぞ。
其れよりも、僕はイジめ軍団のイジめの内容にツッコミたい。
古くさ!
そんなこんながあって下校途中。またまた何時も通りに帰っていると、公園で5、6歳位だろうか、小さい子供がボールを木に引っ掛けてしまっていた。見て見ぬ振りをするのは後味が悪そうだったので、僕は近くの木の枝で突ついてボールを取ってやった。その子は笑顔で
「ありがとー!!」
と言って走り去った。何だか清々しい。
再び帰ろうとしていると 目の前の曲がり角からボールを持った子供が走り出てきた。よく見るとさっきの子供だ。何処かに抜け道でもあったのだろう。
この時間は、学生やら会社員やらの帰宅時間なので走っている子は、何度もぶつかりそうになる。そして、遂に学生の集団の1人に軽くぶつかってしまった。
その拍子にボールがその子の手から離れてしまい、車道を点々と転がっていく。
そこは大きな公道なので通行量が多いのだが、今は信号が赤のため車は通っていない。
その子は迷うことなく車道に突っ込んで行くのだが、それより一瞬早く信号が青に変わった。先頭は軽トラックなのだが、信号が青に変わったタイミングに空いている車線にいた為、急に止まれる訳もない。
このとき僕の足は、もう既に動いていた。子供を抱えあげて避けようとしたのだが、ドジって足を捻り子供は投げるしかなかった。そうして自分の死を悟ったとき、両親のことを思い出した。
―――――そう言えば、父さん、母さんも軽トラが原因で死んだんだったっけ―――――
死んだら2人に逢えるかな、そう思うことで幾らか気持ちが楽になった。そして僕の意識は途切れた――――――――――
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眩しい。目を開けると白い様な輝いている空間にいた。
「何だ、ここは?」
声を出してみる。しっかりと発声出来る。でも何かが頭の中で引っ掛かる。
あれ??そう言えば僕は死んだ筈じゃあ?
この疑問は直ぐに解決する事になる。
どこからともなく神話の挿絵に載っていそうな服を着た金髪の綺麗な女性が近付いてきた。パッと見は人間そのままだが、その人は背中の純白の大きな翼で飛んで来たのだ。
「こんにちは。私は神の遣いとして貴方に伝言に参りました。単刀直入に言います。貴方は死にました。」
単刀直入過ぎないか?と思いながらも質問をした。
「じゃあ、なぜ僕は今存在できているの?」
「では、その説明をしましょう。神は善意ある行動をして死んでしまった人に、別の世界に、別の肉体でもう一度人生を送らせる、所謂転生させる事が出来ます。そして、貴方はその基準を充たしたということで半強制的に転生してもらいます。」
転生と言う心躍る体験が出来ると聞いて嬉しくなったのだが、そうすると両親との再開が先延ばしになってしまう。どうやら転生出来るのは、人助けで死んでしまった人限定の様なので。
ここで1つ疑問が浮かんできた。
「半強制?」
「はい。別の世界には強制的に転生してもらいます。けれども、そこから先は神が干渉する事は有りません。自殺しようとも、気ままに暮らそうとも貴方の自由です。また、転生した時点で神による貴方の評価はリセットされるのでご注意ください。」
両親と再会できずに多少がっかりしたのも事実だが、もう一度人生を送るのも良いかな、と思いながら返事をした。
「わかったよ。ところで僕はどんな世界に転生するの?」
「魔物と呼ばれるモンスターが蔓延る世界になります。当然、人々は高い戦闘能力を持っていますが、逆に言うと文明は地球よりも遅れています。」
魔物がいて高い戦闘能力を手に入れられるとは、転生への期待が高まる。
「時間になりますので転生を開始します。」
と同時に、足元に魔法陣が浮かんできた。魔法陣が光り始めたと思うと僕の意識はまた途切れた――――――――――
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目が覚めるとそこには青い空が広がっていた。転生は成功したようだ。そこで僕は記憶を探って今の自分の立場を理解する。
カイ・エドワーズ 5歳
このアンデルクの町の領主、エドワーズ男爵家の4男
僕は4男なので、領地で畑を耕すか、出ていって仕事を探すかしなければならないらしい。そして、嬉しいことに冒険者というものもあるそうだ。
よし、決めた!
冒険者になろう!
次話は近いうちに投稿します