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雑談?と決意ですよ。

 

「そういえば……我が家の精霊たちは、ずっと昔から顔馴染みなのかな?」


『そうですねぇ。魔力が強いモノのそばにいる事が、妖精や精霊(わたしたち)の幸せなのですよ!』


「だから、ハンスを知っているのかい?」


『ちょっと違いますね。グロリオーサちゃんは「強い魔法を使ったルーク様」を知ってるだけなのですよ!』


「人より、魔力なのか……」


『ふふふ〜ライトちゃんは、それ以前から、ルーク様を知ってますけどねっ!』



 父様とライトの軽快な会話が続いていく。

 ただ、ライトが何か喋るたびに、本来の自分の主人である、カイルザークのことを喋りはしないかと、ヒヤヒヤしていた。



(説明やら、対応にも、色々と面倒になるから、フレアが抱えていた獣人がカイルザークだという事がバレませんように。…バラさないように。…言っちゃダメだからね?!)



 ハラハラと祈りにも似た気持ちで、2人の会話に耳を傾ける。


 父様は悪戯っぽい笑みを浮かべると、小さな身体を限界まで大きく見せようと、強く胸を張って座席の真ん中で仁王立ちをする、ライトの頭をワシワシと撫でる。



「……ライトは、なかなかに面白い子だよね…。グロリオーサは、少し恥ずかしがってしまっているようだが」


『グロリオーサちゃんは、まだまだ未熟な子なので!』


「……ライトの方が年下だろ…」


『そっ…それはですねっ!それでも!経験の違いがっ!!』



 自慢げに、天狗のように鼻を高く高く、胸を張って話すライトに、ぽつりと水を差すユージア。

 途端に、頬が風船のように、ぷくーっと膨らむ。



「グロリオーサも、ライトも…これから頑張って行けば良いんだよ」



 父様、優しい!……と思ったのだけど。


 この言葉の後に『精霊も、子供(うちのこ)たちと変わらないな…』と、なんとも言えない苦笑がこっそりと混ざっていたのを見ちゃったので、ちょっと減点。



(まぁ精霊ってね、神聖視する人たちもいるからね。特に昔と違って今は。精霊を連れている人自体が少ないみたいだから、気になるのはわかるけど……)



 確かに人間とは、身体の構造も食事も、何もかもが違うからね。

 それでも成長過程は同じなんだよ?


 父様の目の前にいる精霊()たちは、見た目こそ大人になったりと変化させることができるけど、同じ精霊たちから見れば、まだまだ子供の部類だ。

 いっぱい体験して、いっぱい知って、いっぱい吸収して……成長するんだ。



「焦る必要はない。……まぁ、ユージアは少し焦りなさい。水の乙女(オンディーヌ)に…愛想を尽かされるぞ?」


「それは困るなぁ……でもね。多分、待っててくれると思うんだ」


「そんなもんか?」


「うん。……母さんの匂いがするから」



 ふわりと柔らかに、そしてどこか懐かしそうに、笑みを浮かべる。

 10代の姿のユージアの、はっとするような艶やかな笑み。


 うっかり見惚れかけて、我に返る。


 そういや、ユージアってばエルフだもんね。

 綺麗に決まってるじゃないか。

 それでも、なぜか目が釘付けになってしまうほどに、素敵な笑みだった。



「そうか……母さんの匂いがするなら、余計に頑張らないとなぁ…。手助けをしたり、失敗を見守るのは親の仕事だが、成長を見せて安心させるのは……子供の仕事だぞ?」


「ああああ……わかってます。わかってるんですけど…。水の乙女(オンディーヌ)格が高(りっぱ)すぎて、追いつける気すら、しないんだよなぁ…」



 ああ、そうか。

 ユージアの普段の表情が、今みたいに『お手上げです』と頭を抱えていたり、涙目だったり、悲鳴だったりと、そんなのばかりだったから。

 ……素直に笑った顔を、あまり見てなかったんだわ。



「ははは…。それこそ、頑張るしかないな。さぁ着いたぞ。ライトも、ユージアも…セシーを頼んだよ?」


『まっかせてくださいっ!』

「頑張り…ます」



 ユージアとライトの対照的な返事に、父様と母様の苦笑が重なる。



 親としての気持ちは、よくわかるから。


 3歳児は魔のイヤイヤ期だし、なんでも自分でやりたい年頃で。


 子供に体験させることは、とても大切なことだと理解してる。

 それはわかってるけど。

『まだ早いだろう』とか『危なすぎる!』とか…心の葛藤もあるわけで。



(そもそもこれは、体験とか言うレベルの話じゃないし)



 でも、子供達を守るためには必要な事なのだろう。

 ……誰が味方で、誰が敵か?

 はっきりしないからこその、苦肉の策だというのもわかる。


 わかってはいても、わかってはいるからこそ、こんな場へと我が子を送り出す親の気持ちなんて、絶対に理解したくないし、させたくない。

 胸の張り裂けるような思いどころの話ではないからね。



 だから。

 絶対に、怪我をしない。

 絶対に、誰も失わない。


 ……私が、父様と母様の弱点にならないように、絶対に、捕まらない。



「頑張りまし…しゅ、す!」


「んんん〜。きまらないなぁ…」


「ふふふ。セシリアちゃんは、セシリアちゃんのままでいいの。無事でいてくれたらいいのよ。……頑張って」



 私の手をぎゅっと握り、今にも泣きそうな母様。


 頑張ってきます。

 だから、父様も母様も、ご無事で…うん、この2人なら無事だろうなぁ。


 ……自分の身を守ることに専念しよう。

 だって、どう考えたって、このメンバーの中では…私が一番非力だ。


 みんなの足を引っ張らないように、頑張るよ。

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