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性別って難しい。

 


『セシリア〜大丈夫?フレアと交代してきたんだけど、何かあった?…って、あったのね』



 湯船に浸かって、ぼんやりとしているところに、『お風呂手伝いに来たよ〜』と、ルナが現れた。



「ないっ!」


『いや…言いたくないならいいけど……服、変えないとダメだね』



 ルナは小さく息を吐くと、私の姿を見て『フレアを怒らせちゃったの?』と、首を傾げる。


 怒らせたつもりは、全くないんだけどなぁ。

 って…『怒ったら、イタズラするの……?』と、思わずルナを見上げると、キョトンとした後、吹き出すように笑い出す。



『僕はイタズラしたし?』


「あ…あれ、怒ってたの?」


『もちろん!……ピンチになっても、呼び出すどころか、思い出してもくれてなかったし』



 ふん!と鼻を鳴らすように息を吐くと、肩をすくめて見せる。


 いや…そもそもさ、精霊との契約って、私は私でも、シシリーとの契約であって、セシリアとは関係ないじゃない?

 精霊も、龍の守護のように、家系にこだわって契約を代々続ける子もいるけどさ、セシリアはシシリーの血縁ではないし。



(というか、天涯孤独のシシリーの血縁って……シシリー(わたし)は独身だったのだから、いませんっ!)



 ……それでも、姿が変わっているであろう『私』を探し回ってくれてたのなら…ルナたちには失礼だけど、ちょっと嬉しいかな。



「……なんか…ごめん」


仕返し(イタズラ)したらスッキリ忘れる事にしてるから、良いよ』


「された方は、大変だったんだけどね…」


『うん、それでおあいこかな?って思ってる』



『おあいこ』と言うわりには、姿が変わってた時間が長すぎだと思うのよね……。

 あ、そうそう、今回のこの姿はルナの魔法とは違って、一晩で解けるらしく。

 ……裁判までには、元に戻れそうなので、少しだけ安心してるところだったりする。



「性別の違いって説明、難しいね…」


『ああ…うん……。あのね…まぁ、いっか』


「ん?」


『いや…なんでもないよ。説明は…どれも、むずかしいね』



 ルナが何か言いたげに、言葉を少し濁していたので『なんにせよ、言わなきゃ伝わらないからね』と言ってみる。


 むしろ、言っても伝わらない事がほとんどだけどさ。



『……性別に関しては僕も、なんとなくイヤなんだろうな?くらいしかわからないからね?』



 ルナは少し考えるように視線を彷徨(さまよ)わせたあと、軽く首を横に振る。

 精霊に性別はないからね。



「そうだなぁ…もともと自分に習慣の無いものを理解するのは……難しいよね」


『うん。姿としては、僕は男性体(このすがた)で慣れちゃったから。それっぽくは振る舞える。けど……でも、最初にとった姿が女性体だったら、それはそれで慣れてたと思うよ?』


「だよねぇ。どっちも得意な子もいたもんね」



 魔導学院時代、シシリーだった時のことだけれど、少し風変わりな精霊を連れた生徒がいたんだ。

 貴族の子息だったと記憶しているんだけど、普段は女性体の精霊を連れているのに、外出時や、休暇になると男性体の精霊を連れていた。


 精霊の複数契約というのは、珍しいとはいえ、人族でも魔力や条件次第では可能だから、実際、複数の精霊と契約していた生徒もいるには、いたのだけど……。


 彼の場合は、その複数契約なのかと思われていたのだけど、実際は、一人の精霊が、その場に合わせて、姿を変えていただけだったというお話で。



『うん。あれはあれで、すごいと思ってたよ。僕だったら言葉を間違えまくると思う』


「それはっ…!あははっ」



 そう、言葉遣いから仕草まで、別人だと思えてしまうほどに完璧に、使い分けてみせていた。

 ……複数契約じゃないにしろ、ルナやフレアのように双子ちゃんや、多重人格的な精霊なのかしら?とか、当時ちょっと考えてたりもするくらいに、別人に見えるんだよ。

 すごいよねぇ。



『どちらの姿をとっていても、女性喋りの精霊もいたよね』


「そうねっ!…でもあれは、なぜか不思議と違和感を感じなかったのよねぇ」


『ああ、あれはね。その逆の……うっかり女性体で男性喋りをすると、行儀が悪いって怒られちゃうでしょう?それが面倒だから、女性喋りで統一してたらしいんだよ』



 なるほど!と、言葉では納得しつつも、やはりあれは実物を知っていると…どうにも笑みが溢れてしまう。


 精霊のとる『人の姿』というのは、基本的に見目麗しい。

 契約主の年齢や好みに合わせて、精霊自体の見た目の年齢も様々なのに『どうして?』と思うほどに、とにかく美しく整っている。



(そんな端正な顔立ちの男性体の精霊が…女性喋りをする、と…)



 私には、オネエにしか見えなくなってしまうわけで。

 イヤではないし、聞いていて不快なわけでもない、むしろ言葉に妙な柔らかさを感じて、馴染みやすいんだけどね。


 まだ若い精霊の場合、どうしても表情やリアクションが薄い場合が多いので、そんな状態で、美貌の人が真面目な顔で発するオネエ言葉……なかなかに迫力があるのですよ。



「……にしても、性別かぁ…。改って説明しようにも、難しいね」


『1つだけ理解してるのは、そうだね…。ドレスやスカートは女性だけの衣装だ!ってこと』


「そこなの……」



 真面目な顔で、自信満々に答えるルナの言葉に、思わず遠い目になりかける。



(そもそも男女で身体の構造が違うんだから、脱いでしまえば一目瞭然だ!ってなりそうなものなんだけど)



 私から見れば、明らかに性別を判断するのに一番確実な部分だし、それこそ注意して見てもらいたいのに、精霊(かれら)の視界だと『明らかな違い』として、注視すべき部分には、入らないらしい。


 精霊(かれら)にしてみれば『ちょっとついてるものが違う』くらいの認識なのだろうね。

 その『ついてるものが違う』が、とても大事なんだけどなぁ……。



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