表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/462

確保。

前回までのお話。


魔法を使ったよ。

 




「……残念ながら、もう(これ)も貴女の物じゃないんですよねぇ。ほら、証も、無いですよね?」



 フィアの癇癪に対する返答なのか、ユージアはフードを外してみせる。

 証とは…『隷属の首輪』の事だろうか?

 ゼンが食べて外してしまったけどね。

 あんなものがないと成り立たない主従関係なんて、ろくなものじゃないと思うけど。


 ユージアの首にずっと当たり前のように着けられていたはずの『隷属の首輪』が失われていることに気づいたのか、フィアの双眸が一瞬大きく見開かれるが、すぐに何もなかったかのような無表情に戻り、叫び始める。



「なんで、なんで来ないのよ!早く来なさいよ!ここの全部捨てちゃってよ!」



 癇癪を起こした幼子のように、きーきーと叫びを上げる。

 しかし先ほどとは打って変わって能面のような、何も読み取ることができない表情となっていた。



『フィア司祭確保!至急応援頼む』



 ……風の魔法だろうか?拡声し、館内へ響き渡らせていった。

 すると、ほぼ待ち時間無しに隣の部屋から、彼と同じローブの人間が5人ほど駆けつけてきた。



「びっくりさせちゃってごめんね?オジサン達は王国の魔術師団の魔術師だよ。酷い事をしてた人たちを捕まえにきてたんだ」



 精一杯子供たちを落ち着かせるようにと、にこりと笑顔で私たちに話しかけてきた。

 魔術師団が来てるという事は……父様も近くに来てるんだろうか?


 その視界の奥では、フィアの両腕、両足首に銀の装飾の入ったブレスレットを装着しているのが見えた。

 手枷足枷のようなもので、装着者の魔力の発生を感知すると途端に磁石の様に、互いに貼り付こうとする性質を持っている。

 しかも装着者の魔力を使って、魔力分だけ全力で貼り付くので、実質魔封じとなり、魔法を使うことが出来なくなるんだ。



「しかしこれは凄いな。君たち火傷はしてないかい?ずいぶん怖い思いをしたみたいだけど」


「こんな……小さな子供に向かって、なんてものをけしかけてるんだ!」


「これの処理どうするんだ?高温すぎて水じゃ無理だぞ」



 火の壁を見上げ、ユージアのぼろぼろになってしまったローブとを見て、口々に心配そうに私たちを見渡す。



「確かフィア司祭は水の属性持ちだったはずでは?」


「フィア司祭は聖女として光でも登録があったし。案外あてにならないぞ?」



 火の壁までフィアのせいになっていく。

 どうやって誤解を解いたものやらと、ぼーっとユージアに抱えられたまま考えていると、レイの不満げな声が響いた。

 何かずっと不満な感じなんだけど、レイはどうしちゃったんだろう?



「それ、セシリアがやらかしたやつだから。フィア司祭じゃないよ」


「セシリア……セシリア嬢か!師団長の御息女であれば、納得の……」


「いや、納得しちゃダメだからね?」



 不機嫌そうに「納得しちゃダメ」と魔術師団員に向かって言うレイに、ローブを目深に被った人が近づいてくる。

 体格的には、ユージアより少し背が高いかな?といった背格好に見える。



「君もだよ?……レイ。あとでしっかり反省会だよ?」



 そう、レイに話しかけながらローブのフードを上げると青い髪が零れ落ち、出てきたエメラルドグリーンの瞳の涼しげな美貌に周囲はハッとなって見惚れてしまう。

 当の本人は全く気にした様子もなく、自身の背後にゆらゆらと怒りのオーラを纏いながらレイに中性的でとても美しい笑顔を向ける。

 たしか…この国の守護龍のアナステシアスさんですよね。



「あ…はい」



 少し不機嫌気味ではあるけど、基本的にはずっと落ち着いていた印象のレイが、見る間見る間に萎れていくのを見て、そばにいたエルネストが顔を引きつらせていた。

 美人さんの笑顔って、ものすごい迫力があるんだよね……怒りがこもってると余計に。

 ていうか、国の守護龍が出てくるとか、教会で何が起こってたんだろう?



「いや~ユージア君、足速すぎて一瞬見失っちゃったよ…って、ちょっと見ないうちに随分ボロボロになってるけど、そのローブ、借り物じゃなかったっけ?」



 一番最初に話しかけてきた魔術師団の人がにこにこしながらこちらに小走りに駆け寄りつつ、話しかけてくる。



「あ……あとで謝るしか……あぁ~許される気がしないっ!」


「だよなぁ。それ、師団長の子息に支給されたばっかの、初任の階級ローブだろ……」



 師団長の御子息って……セグシュ兄様だよね?

 セグシュ兄様の魔術師団就任のローブだったんだね……。



「弁償……できる気がしないし、どうしよう」



 ユージアは私をそっと側に下ろしつつ、軽く頭を抱える様な仕草をして、壁にもたれて座る。

 その頭をくしゃくしゃとしながら数人の魔術師団の団員が話しかけてくる。



「ちびっこ頑張ったな!ただ、少し無理が過ぎたな!こういうのは大人に任せとくもんだ」


「もうすぐ治療院の連中も来るから、それまでここを動くなよ?」


「あ~。バレてたかぁ」



 ふぅーっと深いため息をつくと「頑張ったでしょう?」と力無く笑う。



「戦いのプロをバカにすんなよ?」


「お前は頑張ったよ!司祭クラス相手にチビ3人守り抜いたんだから、あとはゆっくり休んどけ」


「どうしたの?……って!え?」



「無理しすぎ」この理由がわからずに、直接確かめようと振り向くと、私を小脇に抱えていた側の脇腹がじんわりと血がにじんでいることに気づいた。

 もちろんのことだけど、私の服にも血がうつっていた。



「……あ~、やっぱ辛い。ちょっと休ませてね」



 そう言うと、ゆっくりと崩れ落ちるままに横になる。



「ゆーじあ、これ、いつから?」


「え~っとね、この手前の部屋。フィアが『籠』って呼んでた部屋なんだけど。そこにも助けなきゃいけない子がいたからね……頑張ってきたんだけど、ちょっと失敗しちゃってねぇ」



 ……この状態で、ずっと私を抱えていてくれてたの?

 助かった、と思う感情から一気に血の気が引いていき、一気に視界が歪み始める。


 今、泣いてたってしょうがないのに。




多分、助かったよ。


*******


このお話はもともと、ファンタジー好きな身内に寝物語で聞かせていたものを文章化したものです。

楽しんでいただけたら幸いです。

面白い!続きが気になった!という方は、評価とブックマーク等を頂けると…皆様の反応が数値としてではありますが、見ることが出来るので、むちゃくちゃ嬉しいです!

創作への励みになります!

初めてなので、まだまだ拙い部分だらけかとは思いますが、どうぞよろしくお願いします♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランキング参加してみました。
小説家になろう 勝手にランキング
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ