表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
404/462

お茶会みたいな裁判でした。

 


 ちなみに、私たちのいる証人や被害者が座る席は、前世(にほん)のコンサートホールなんかによくある、バルコニー席っていうのかな?

 すり鉢状の施設の両脇の壁面にバルコニーのように2階席が用意されている感じで。


 その2階席には、品の良い、布張りのソファーのあるテーブルセットが置いてあって、ちょっとしたシンクも用意されている。



(……どう見たって、貴族仕様なのですよ)



 大体、使用人が同行するから、お茶とかお菓子とかね。

 そういうものが簡単に準備できるようになってる。



「ほら、セシリアも…そろそろエルネストを解放して?…こっちに美味しそうなお菓子があるよ」


「はぁい〜」



 それぞれのバルコニー席が、それぞれで個室になっていて、この席は子供達だけという。

 ……名目上は、中身はともかくユージアが1番の年長さん!の、姿をしているし、セシリア(わたし)の執事なので、使用人が同行しているからなのか、子供だけで座っていても問題はないようだった。



「ねぇ、教会って……聖職者の集まりなんでしょ?なんで人身売買の元締めなんてやってるんだろうね?」


「え……元締め?…人身売買?」


「ああ、セシリアには…まだ難しいかな?」



 ゼンナーシュタットは、ふわりと優しげな笑みを浮かべると、この国での人身売買についての仕組みや、元締めという立場や言葉の意味を説明してくれた。

 そもそも、その全てがこの国では『違法にあたる』という結論へと導かれてしまうのだけど。



(……生まれたばかりのわりに、博識だよね?これが守護龍アナステシアスとの謹慎やらお勉強の成果なのかな?頑張ってるよね)



 一つ気になった、というより、前々から気にしていた事なのだけど。

『籠』に囚われていた男の子たちの姿は、なかった。

 時系列に合わせて、裁判が行われているのなら『もしかしたら会えるかな?』と、思っていたんだけど。


 ……それに関しては、また別件で裁判が行われたらしい。


 本当であれば…そこにも、私たちは出席しなければならなかったのだけど。

 私たちが出席してしまうことによって、同時に私たちの件まで、法的な判断を行なわなければいけない状況になってしまった場合『一人当たりの罪の重さが軽くなってしまう』


 それに、あの時、その場には保護者でもある父様と母様もいたわけで、証人としては大人たちの方が適役だということで、私たちの出席は見合わされ、彼らと会うことはなかった。



(元気なんだろうか?結局、お見舞い行けなかったなぁ。……あ、でも、思い出したくもない事件の関係者ってことで、そもそも会うことを拒否されてしまうかもしれないね)



 おっと…話がずれちゃった。


 つまりね、時系列もだけど、被害を受けたルートごとに裁判を行なっていくらしいのよ。

 なので、エルフの里の襲撃から始まってるユージアは、すでに何度か出廷している事になる。

 ……にしても、この会場内・建物の認識が異常に細かいんだよなぁ。

 どこから手に入れた知識なんだろうか。


 ちなみにね、シュトレイユ王子もカイルザークも、これの後の裁判に召喚予定なのでした。

 まぁ私たちも、引き続きここに留まる事になるのだけど。



(この後の裁判は、反乱の件だろうね。呪いもそうだし、授業中に襲い掛かられてしまったわけだから)



 それまでは、レオンハルト王子も一緒に、建物内を探検してるらしいよ。

 後ろに控えてるお付きの執事さん、そして警護の人たちが微妙にぐったりして見えていたのは…気のせいだよね?







 ******







 私たちがバルコニー席で、微妙にわたわたしている間も、裁判は粛々と進められていく。


 私たちの出番は…えーと。

 てっきりすぐ始まるのかと思っていたのだけど、どうやらまだ少しかかるらしい。

 どれだけ余罪があるのか……聞いているだけでも、気が遠くなる。



 どうやら今回の議題は、小さな子供に対する犯罪を…まとめているようだった。


 それにしても、ここの部屋は音がよく響く。


 魔道具(マジックアイテム)を使っているのだろうけど、そうじゃなくても音がよく響く構造になっている。

 このままコンサートホールとして使ってしまってもいいんじゃないかと思う位に、音響設備が整っていると思うんだ。



「よく聞こえるでしょう?魔道具(マジックアイテム)を使っているんだけどね、そこから下の音が通るようになってるんだよ!……オナラの音まで聞こえちゃう…っ!」



 いや、性能の話はともかくとして、最後の一言は、いらないからね?

 そんな音は、要らない。


 マイクとスピーカー的なものなんだろうね。



(しかし大人たちが必死に議論してるのに、お茶を飲みつつ、お菓子を食べつつ……のんびりしている私たちって、どうしたらいいんだろう?)



 すぐ自分たちの出番になると思ってたんだけど、全くもって話が進まず、というか、前置きのお話しが多すぎて、私たちの話までたどり着けない感じで。



「なかなか始まらにゃいね?」


「にゃ…てっ…!ふふっ。僕は、こういう時間があっても楽しいと思うけど」



 ゼンナーシュタットが、優雅にふわりと笑いかける。

 レイの姿だけどね!

 ほどよく肌で感じる程度の緩やかな風が、ゼンナーシュタットの…いや、レイのだけど、柔らかで優しい色合いで少し長めの金の髪を、踊らせる。



(シュトレイユ王子もしっかり王子様なんだなぁ…)



 可愛らしさに見え隠れする、男の子っぽさやその整った美しさに、ふと目を奪われてしまう。


 ゼンナーシュタットの申告によると、レイの姿は5歳児相当を考えての変身なのだそうだ。

 本人である3歳児(いま)の姿は、ただただ天使のように可愛らしい。

 それが4歳、5歳と成長するに従って、やはり男の子っぽくなっていくんだろう。


 将来有望っていうのは、まさにこの子のようなことを言うんだろうね。



「と、いうか。貴族って、こういう感じの時間の流れが普通なんじゃないの?キミたちは、何を基準に考えてるのか知らないけど、思考が殺伐としすぎてるからね?」


「殺伐……かぁ。それでも僕には充分平和だけどねぇ」


「そうか?」



 ユージアがにこにことポットから紅茶を注いでいく。

 受け取ったゼンナーシュタットは、ジト目になりつつ紅茶を口に運んでいく。



「……どこにいても、僕には…殺伐としてるよ…」



 ぽつりと呟くエルネストの声を、耳が拾う。



「あ…エルが帰ってきた」



 どこからっ?!

 思わず突っ込みそうになるのを抑えつつ、裁判の内容に耳をすます。

 視界には、ほっとした笑みを浮かべて、エルネストにもお菓子と紅茶を勧めていくユージアが映る。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランキング参加してみました。
小説家になろう 勝手にランキング
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ