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念には念を入れて。

 


『お手伝いにあがりましたっ!…って、あれっ?怪我人とか…いなさそうだね?』


「……なんで、そこでガッカリしてるのよ」


『いやっ…!流石ですねって!!』



 もう、原型すらわからない小さな黒い塊となった魔物だったモノのさらにずっと向こうから、フレアがすごい勢いでこちらに走ってきていた。

 ……なんか『避難所』以外でフレアに会うの、久しぶりに感じてしまった。


 まぁ登場早々、フィリー姉様にツッコミを入れられてるわけですが。



「当たり前でしょう?国の最高戦力が集まってるようなものなんだから。これで怪我してたら、恥でしかないわ」


『あ…はい。すみませんでした。えっと……それでですね!シュトレイユ王子、つい先程ですが、解呪されました!』


「あら?まだ呪った本体はここにあるみたいなのに?どう言うことかしら?」


『ん〜、でも、解呪されましたよ?こびりついていた思念も随分薄くなって、あともうちょっと!と言ったところですよ』



『だから、僕がここに来れたんだし!』と嬉しそうに笑って見せる。

 そのまま嬉しそうに、作業中のルナのそばに向かうと、ぎゅーっと抱きついていた。



(やっぱり、魔力きついのかな…)



 フィリー姉様が『何してんのよあの子たちは…』と呆れた声を出していたけど、あれは戯れて(じゃれて)いるんじゃなくて、魔力の補給だ。

 身体が接しているほど、効率よく行える。


 私もルナのそばに行きたい!と意思表示をしようとした時に…



 からん。と、金属が落ちる音が響いた。



 すぐさま、ルークが落ちた金属のそばに向かった。

 金属に触れるな!と言いながら。



「これは『隷属の首輪』だな……思念の込められた指輪…これが禁呪の『仮初の命』だな…併用でもされていたか」


『死してなお、操られ続けてたってやつ?うえぇぇぇ…。人間って本当にエグいことするよね』



 落ちていた『隷属の首輪』は古代の魔道具(アーティファクト)だった。

 つまり拘束力が強烈なやつ!


 ……教会の『籠』の中に、閉じ込められていた男の子たちが着けていた、一見して魔道具だと分からないようなデザインの、効力の緩い『隷属の首輪』とは違う。

 ユージアがつけていたのとほぼ同じデザインの、頑丈な作りをしていた。

 多分、ユージアの着けていたものと同一の作だと思う。



「あら…本当に指輪に使う禁呪なのね?」


「…ん?この禁呪は、何に使っても良い。ただ『誰かの手に取ってもらう』『外れにくい位置に装着してもらう』これがクリアできる物でないと、肌から離れた途端に、禁呪の呪縛から逃げられてしまう。……指輪が手っ取り早いってだけだ」



 ルークは直接には触らずに、手に呼び出した長剣で、突つき検分していた。



「そうだねぇ。対象を女性に絞るのであれば、アンクレットという手もあるね……ドレスの下ならば、誰も気づかないし、素敵なアクセサリーであれば、つけてみたいと思うよね?」


「やだ怖い!……迂闊(うかつ)にアクセサリーに触れなくなっちゃうじゃない!」


「まぁ禁呪だから…そうそう存在しないと思うが、年代物のアクセサリーには気をつけた方が良いかもね?」



 守護龍アナステシアスが、フィリー姉様を脅かすように笑って話していた。

 女性は、アクセサリー好きだものね。

 恐ろしい…!



「……さて、この指輪の主人(なかみ)には悪いけど、解放させてもらうよ」


「頼む…ああ『隷属の首輪』もだ」



 指輪と首輪に、守護龍アナステシアス手をかざすと、粉々に砕け散る……いや、ぐずぐずと灰のような粉状になってしまった。


 他にも落ちていないか確認をしてから、施設の設定をひとまずclosing(閉鎖)に。

 そして『宝』の返却が終わり次第『避難所』へと戻る事になった。



 ちなみにだけど、ルナの『後処理』という言葉が気になって、帰還は、おまじないを使って『避難所』へは直行せずに、『監獄』の出口に指定されている『聖樹の丘』へと退室することにした。



 約1週間ぶりの『聖樹の丘』は、ユージアとゼンナーシュタットと…『監獄』から必死になって脱出した時よりも、下草の背丈が上がり、ちょっとした草原どころか、私の背丈ほどもあって、私から見たらここも既に森の一部と化していた。



(おかげで、せっかく自力で歩けると思ったのに、また抱っこされちゃったよ!)



 ちなみに、今度は戦闘になる事はないと確信してなのか、思いっきりお姫様抱っこですよ。


 ことあるごとに頬擦りをされて、いちいち顔が近いんですがっ!



 さて、聖樹の丘のそばにあった小屋は、相変わらず倒壊したままで、それでも周囲に何かの木材が積まれていて、これから補修が始まるのかな?といった感じにはなっていた。


 ……草原の真ん中に立っていたとても立派な1本の大木。


 これが『聖樹の丘』の名前の由縁であろう、聖樹なんだけどね。

 聖樹は、倒木のまま周囲にロープが張られており、メアリローサ国の紋が入った札で人の立ち入り、倒木部分も含めての、聖樹の採取を禁じているようだった。

 ……はっきりとは読めないけどね!



 到着直後、父様とフィリー姉様は周囲の探索。

 そして守護龍アナステシアスは同行して、周囲の浄化をしに行ってしまった。



(ほら、ここに『監獄』から『核の再構成時の部外者』として強制排出された父様たちと一緒に、けっこうな量の『宝』も排出されたんだって!)



 しかも軽く戦闘にも、なったそうなんだ。

 とは言っても、ゾンビとスケルトンばっかりだったみたいだけど。


『監獄』内の魔物のように、魔道具(アーティファクト)を落としていなかったかの再確認をしに行ってるんだ。

 みんなより遅れて『監獄』に来たくらい、ルナがしっかりと確認してたのだから、取り落としは無いとは思いたいけど、偶然拾った人が、これまた偶然に、悪用しないために。


 新たな被害者を出さないために。




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