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side ユージア。仕上げの結果は。

 



 手を添えた魔法陣がそれぞれに発動をし始めたのか、色を持って浮かび上がった。



「えっ……色、僕の違っ…?!」


「あれっ…!私、間違えてたかな?」


「ユージア君の耳…!耳…!ぶふっ」


「いやっ!変わってないからっ!!変わる前から笑わないで?!」



 何故か、3人が3人とも魔法陣の発動色が違って、焦った。

 というか、2人ともほぼ同時に僕の耳を注目してるとかっ!

 しかも……期待の眼差しで!



(……自分が描き間違えてるって考えは、ないのか…?)



 それぞれの魔法陣の光が、用紙の中心に集約して、一度小さな球体を取った後、形をふよふよと変え始める。



「これ…なんだろうね?一応みんな同じ反応っぽいし、魔法陣は間違ってなかったってことで良いのかな?」


「いや、そもそも私でも発動するってことは、魔力あるって事…?」


「そういえばそうだね?あれ…どういう事だろう?」



 形状が定まり始めた球体から目は離さず、しかし、2人は訳が分からずに軽くパニックになりかけているのを見ていた。

 どんな形になるんだろうかと、自分の魔法陣の上にふよふよと漂う球体を凝視していると。

 僕の球体だけがポヨンと魔法陣の上に落ちると1度弾み、2度目の着地を見た瞬間、弾まずにそのままスッと魔法陣に沈み込んでしまった。



(……2人の球体はふにふにと、その場に浮いたまま何かの形状を取ろうとしているのに、僕だけ…何故?)



 もしかしてテーブルの下へ透けて落ちたのかな?と、下を覗き込むと。



『……呼びましたか〜?』


「うわぁっ!?なにっ?!」



 ふよふよの球体を両手で掬い上げるようにしている小さな女の子と目があった。



 テーブルはローテーブルなのでそんなに高さはない。

 そう、その子は肩下が床に埋没しているような状況だった。


 あまりにもびっくりして、思いっきり尻餅をついてしまったのだけど、その女の子は全く気にする様子も無く、そのままテーブルすら透過して立ち上がる。



「おや?…こんにちは?」


「ウサ耳の次は女の子かぁ……この魔法陣、芸が細かいね!」



 同じく、ルームメイト2人も、全く動じる感じはなく……むしろ面白そうな顔をしてこちらを見つめていた。

 ……こういう場合はちょっと動揺したほうがいいと思うよっ?!



『こんにちは〜!って、この魔法陣が何か知らないで使っちゃいましたぁ?』



 僕が魔方陣で作り出した、ふよふよとした球体を掌に乗せて、ぽよぽよとつつきながら、少し間の抜けた話口調の……精霊の女の子がカーテシーをする。

 その精霊はセシリアと同じか、ちょっと上くらいの女の子の姿をしていた。



『えっとですねぇ〜。これは精霊の(おやつ)なんですよ。「精霊(わたしたち)はこれをいただく代わりに、ささやかながらひとつお手伝いをしますよ〜」っていう、召喚魔法みたいな感じ〜?』



 で、何しましょう?と、にこりと笑って見せた。


 いきなり『何しましょう』って言われても、何も思い浮かばないわけで。

 言葉に詰まっている間に、2人が彼女にソファーへどうぞと座らせると『甘いものが好きって聞いたことがあるんだけど…』と焼き菓子を勧めていた。



「面白い魔法陣だねぇ……ちょっとほっとしたよ」


「じゃあこれ、魔力の塊みたいなものなのかな?……魔力なしなのに、魔力の塊が作れちゃうんだ?」



 と、自分たちが作り上げたぷよぷよとした球体を面白そうにつついて見せた。



『お二方「魔力なし」なのですか〜?しっかりありますけど?あっちで寝てる方は少し少なめですけど〜でも、皆さん、ありますよぉ?』


「……決めた!手紙を届けて欲しいんだけど、お願いできるかな?」


『お安い御用ですよ〜!』



 急いで、部屋に備え付けになっている、養成所の透かしの入った便箋を取り出す。

 内容としては、もらった課題が全て終わった事、「魔力なし」と測定されたルームメイトが、精霊には「魔力がある」と言われていて困惑している事を、少し殴り書きのようになりつつも、一気に書き上げた。


 それと一緒に、先ほど使った魔方陣が描かれた紙を一緒に封筒に詰めて、軽く糊付けしてから、封蝋を垂らして印璽を素早く、そして軽く押し付けて封印をする。

 ……ここまで厳重にしなくてもいいと思うんだけど、一応これがマナーらしいので、その通りに準備をしてみた。


 ちなみにこの印璽、公爵家からの支給品で、一応は『入所祝い』『就職祝い』とかいうものらしい。

 これって全部同じものかと思ったら、よくよく見ると小さく個人名が入ってたりするので、これで差出人を証明したりもしてたらしいんだよね。

 全く知らなかったよ……!


 そうやって僕が必死に手紙を書いている間、精霊の女の子はルームメイトの2人と楽しそうにおしゃべりをしていた。



「よし、できた!……これをク…親父に届けて欲しいんだけど、お願いできるかい?ちょっと届けにくい場所にいるから、見当たらなかったら、精霊のルナかフレア経由でも構わないよ」


『かしこまりまして!スルーズヴァン辺境伯のハンスイェルク様宛ですね!では、行ってきまぁす〜』



 元気に大きな声で、満面の笑みを浮かべながら、手紙を受け取ると同時に彼女の手の上でぽよぽよと転がっていた、僕が作り出した球体が、彼女の手の中に沈みこむようにして消えていった。

 契約完了!といったところなのかな?


 ……ただ、名前を言わなくても相手に伝わってる事って、すごいと思うんだけども、宛先を大きな声で言わなくてもいいと思うんだ。

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