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子供たちには、難しいお話。

 


 それはもちろん、魔物相手に使うものにも、だ。

 万が一、悪用されて人間に使われないようにするためでもあるし、必要以上に魔物を虐待しないためでもある。


 魔物の扱いも、基本的には人間に害がないのであれば、野生動物のように共存できる方向へ考えられていたからだ。

 それでも、村や作物を襲ったりする『魔物の討伐』は定期的に騎士団によって行われていたし、食料としての狩りも行われていたから、どんな事があっても魔物を保護しよう!というモノではなかったのだけど。



「しかし『監獄』は存在している」


「そうだ。そして『監獄』内には、ご丁寧に『堅牢の封印』まであしらわれている」



 珍しくルークの端正な顔が、嫌悪に歪む。

 歪んだ顔すら美術品のような美しさで…思わず見惚れそうになるわけだけど、今はそんな場合ではない。



(ちなみに『堅牢の封印(これ)』、ゼンナーシュタットがボリボリと食べてたやつね!つまり、南京錠のような形をした錠前型の魔道具(マジックアイテム)……あ、アーティファクトの一つになるのかな?)



 今の技術では作れなさそうだし、作れない強力な魔道具を古代の魔道具(アーティファクト)もしくは遺物だったかな?そんな呼び方をされているようだった。



「堅牢……?」


「ああ、中に入れられた者の一切の能力を封じ、無力化する魔道具(マジックアイテム)だ。……こちらは古すぎて耐久を超えたのか、そのほとんどが模倣品になっていたが、一部はまだ壊れずに機能していた」



 ルークが頷くと説明をする。

 表情より口調から、怒りを感じる。

 こっそり怒っているらしい。



自分の息子(ユージア)がとてもとてもお世話(・・・)になった場所だからね、当たり前か)



 ……ユージアが放り込まれていた牢の鍵がまさに『堅牢の封印』だった。

 私が放り込まれていた牢のは壊れてしまったのか、後から真似て作り直された模倣品だったけども。しかも、適当作成で機能してないやつね。



「同時に『思考吸収の檻』まで準備されていたそうだからな。……あれらは、人間に使わない前提で作られていた魔道具(モノ)だ」



 そう、ユージアの首に着けられていた『隷属の首輪』と同じ、魔物を閉じ込めるためにだけ、造られたモノだった。

 そもそもそれも、魔物に対しての実験・観察用であって、商用ではないし、まして、魔物をそのまま殺してしまうためのものでもなかった。



(魔物を冒険者に捕まえて来てもらって、生態を調べて、魔物たちの習性等を利用して人が襲われないような魔道具(マジックアイテム)を開発するためのものなんだ)



 確かに魔物にしてみたら、嫌なことをされる瞬間はあっただろうけど。

 そりゃ忌避剤のようなものを作るための研究だから「何が嫌かな?」と、色々試されたりはしただろう。

 でも、限界まで切りつけてみたり、理由もなく毒を使う等、命に関わるような、あからさまな虐待とも言われるような事は、基本的には許されていなかったはずだ。


 ま、捕まえて来たのがオークとかだったら、研究の後にご馳走になってしまう(!)という事は、ままあったようだけど。

 ……食料としても重宝されている魔物は…しょうがないかなと。


 ただ、高ランクの魔物ほど、捕獲した後に研究・観察が終われば、必ず解放されていた。



(……まぁ、執拗に恨まれて、解放した近隣の村が再襲撃されないように、簡易の『隷属の首輪』と同じような魔道具(マジックアイテム)を装着の上で、だけどね)



 なので『監獄』が魔物の研究・観察のための施設として造られていたのであれば『思考吸収の牢』や『堅牢の封印』があってもおかしくはない。

 おかしくはないが、檻の中に人であれ、魔物であれ、遺体が転がっているのは絶対にあり得ない状況だった。



「それと『使用者』が存在しているという理由の一つとして『管理者』であるはずのセシリアが『監獄』のルールに巻き込まれていた事だ」



 えーっと、つまりですね。

『監獄』が…まぁ不謹慎だけど、とある遊園地のアトラクションだとして、メンテナンスや管理をするはずの『管理者』が、一緒にアトラクションを楽しむ必要はないって事。

 お化け屋敷の修理で、お化けに脅かされながら修理とか、嫌すぎるし。


 言われてみればだけど、いくら『監獄』だからって、保守点検に来た業者まで、閉じ込めたりする必要はないもんね?

 それじゃあ誰も保守管理なんて請け負わないよ……。


『管理者』なのに簡単に出入りできないのはおかしいし、そもそも管理者の命令を聞かない施設もおかしい。

 そう指摘されるまで、閉じ込めておく施設だから『監獄』

『監獄』だから、脱出も難しいって……思い込み過ぎたっだわ。



「つまり『管理者』より上位の権限である『使用者』を持った人物か、もしくは直接『核』から設定を操作できる人物がいた。と、いう事になる」



 ルークは小さく息を吐くと、エルネストへと視線を向ける。

 ちょうど、大きなアクビが出かけていたところでルークと目が合った事に気づいたエルネストは、びっくりしたのか思いっきりむせ込んでしまった。


 ちなみにレオンハルト王子は、エルネストの盛大にむせる音に、飛び上がらんばかりにびくりとして、うたた寝から復帰していた。



「エル、魔力切れか?辛かったら、休んでても良いぞ?」


「だ…大丈夫、でっ…す」



 父様が口元を隠すようにしてくすくすと笑いながら、声をかけてくれていた。

 さっきまでのレオンハルト王子、可愛かったんだよ?

 少し俯き加減で視界を塞ぐように、うつらうつらゆらゆらと揺れている前髪と、真剣な眼差しが徐々にとろーんととろけてくのがね、とっても可愛かった。



「……子供には難しい話だからな。では、そろそろ君たちの課題を開始としようか」



「では、始め」と、子供たちの返答を待たずに、ルークは小さな魔石のかけらをサロンへ向かって放り投げた。


 すると、レオンハルト王子の傍にいたはずの仔犬姿のヘルハウンドが、大きく跳躍をし、魔石のかけらとともにサロンの暗闇へと消えてしまった。


 ヘルハウンドを追うように、レオンハルト王子とエルネストが椅子から飛び降りると、颯爽とサロンへ走っていく。

 さっきの眠そうだった2人の表情はどこへ行ったのやら、ぱっちり。

 好奇心に瞳をきらきらと輝かせていた。



「難易度高過ぎでしょう……」



 ポツリと呟きながらも、カイルザークがレオンハルト王子とエルネストの後を追うように、サロンへと突入していった。




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