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優しさ故の。そして。



「それにね、全てを僕に頼るってことはつまり、ここにいるレイを助けたいと頑張ってる仲間たちを信用してないって事になっちゃうんだけど、そんなに……みんなは頼りないのかな?」



俯いてしまったシュトレイユ王子を覗き込むようにしていた守護龍は、話しながらそっと席を立った。



「違うの…好きだから、みんなにお怪我を、して欲しくなくて……」


「うん、レイは優しいんだね。大丈夫、その為に私がここにいるんだよ。みんなが思いっきり頑張れるように。そしてお怪我しそうになったら助けられるように、ね?」


「うん……」



どんどん途切れ途切れに、小さくなって行くシュトレイユ王子の声。

そばに近づくと守護龍は軽く腰をかがめて、頭を撫でて優しく囁いていた。



「だから、みんなを信じて。レイは呪いに打ち勝つことだけを考えていてくれるかい?」


「う…ん……」



ぽろりと涙の粒が落ちたのが見えた。

同時に小さくしゃくり上げている声も。

守護龍はシュトレイユ王子を椅子から抱き上げると、背をさすりながらゆっくりとベッドへと歩き出した。



「……見ての通り、レイはまだ体力的にも本調子じゃないからね、少しでもこの状況を良くするためにも、さっさと行動を起こすよ?いいかい?」



そんな父様の声ではっと我に返った。


優しい。と、守護龍のアナステシアスに言われてた通り、シュトレイユ王子は優しい子なのだろう。

お兄ちゃんであるレオンハルト王子に憧れて、一生懸命背伸びをして、下の子特有の要領の良さからの立ち回りの軽快さもあって。



(私にもその優しさから、暴言を聞こえないようにと耳栓してくれたりしてたけど、どう考えても優しさゆえの行動だものね)



ただただ、みんなと同じ位置に立ちたかっただけなのに。

なのに、まさか自分が一番足を引っ張っていただなんて考えたくもないし、その内容も、酷く呪われて、しかも状況も命に関わるレベルで良くないことを告げられていたら、怖くてたまらないと思う。


泣きじゃくるシュトレイユ王子を抱えてベッドへと向かっていく守護龍の背を見つめながら、レオンハルト王子も悲しそうな顔をしている。

さっきまでは兄弟でとても楽しそうにしていたのに。



「君たちも今回は立派な戦力だから、ちゃんと行動してくれよ?」



なぜか苦笑いの混ざった父様の言葉に、レオンハルト王子が神妙な面持ちで頷いていた。


どうやらこれから『監獄』攻略を本格的に行っていくらしい。



(魔物退治としても、今の時間帯……朝は魔物からすれば私たちの夜中のように、活動が抑制されている時間帯なんだ。要は睡眠中ってやつですよ!)



ひとまずの目標としては、私とカイルザークとルナとで『監獄』侵入時に遭遇した『地竜もどき』の討伐。

そして、初回侵入時……侵入じゃないね。誘拐されて『監獄』に放り込まれた時に、脱出に使った魔法陣のある部屋。

あの部屋に行く。


どうやらあの部屋が『核』と呼ばれる『監獄』の中枢で心臓部にあたる部屋だったのだそうだ。



(あの時、特に何かをいじった記憶はないし……ゾンビに追いかけられてたから、脱出に必死で、魔法陣を作動させることしか考えてなかったもんね)



ちなみに『核』というのは、そうね前世(にほん)でいうパソコンそのものだと思ってもらえたらわかりやすいかな?しかも無限供給の電源付き。


自然発生するダンジョンの中心部にも同じように『核』があるよ。


そのどちらも、中枢部というだけあって、だいたい中心部に存在するし『核』を壊してしまえば、簡単に機能を停止させられる。

ま、壊してしまったら、修理不可ですが。



(そう、パソコンと違うところは『核』は生命体であるという事ね。大型である施設型の魔道具(アーティファクト)を作る場合は、その『核』をシステムとして使うことによって、前世(にほん)の家電のように、細々とした設定したAIとして自己判断で動いてくれるようになるから、とても便利で多用されていたんだ)



そもそも『核』ってなんだ?というところでは、この『核』も『ダンジョンの核』もほとんど同じ存在で。

ただある場所が違うだけだと思ってもらえたら、わかりやすいかな?


冒険者なら誰でも『ダンジョンの核』の存在は知っているだろうお話だよね。

ただ、発生原因なんかは、案外知られていなくてね。


私も専門外だからはっきりとは理解していないのだけど、発達途中の規模の小さな『核』はまるで妖精の赤ちゃんのように、ただぼんやりとその場に存在するだけなのだそうだよ。

それが、成長していく過程で、自分を守ろうという動きを見せる。

その動きこそが、ダンジョンの生まれる瞬間らしいよ。


自身を守るために特別な自分の空間を作って、さらに防衛機能として、いくつも作り出した外殻に当たる空間部分に、周囲に生息していたモンスターを引き込む。

ほら…ダンジョンになっちゃったでしょう?



ぼんやりと守護龍アナステシアスがシュトレイユ王子を抱えたままベッドに腰掛けるのを眺めつつ、父様達の説明に耳を傾けていた。

ベッドのそばにはソフィア王妃も心配そうに付き添っているのが見える。



『核』で気がかりを一つ思い出したのだけど……『監獄』の『核』が自立型か共有型か?というところ。



(ここらへんの知識は、シシリー(わたし)の専門とは微妙に畑違いになっていくから、正確な対処法は『これだ!』と言い切れないのが辛いところなのだけど……)



魔導学園や、ここ『避難所』は間違いなく『共有型』だと思う。

共有型というのは『人工的に作られた核』が使われていて『核』自身からの自発的な行動がほとんど無い、まるでロボットのように、プログラム通りにしか行動しないタイプの事だ。


ほら、おまじないを使っての入室以外の方法としての『助けて!』って言葉での入室は、まれにしか反応しないって言ってたでしょう?


『避難所』としてはそれを本当は強化したいところだけど、滅多に反応しないってことは…『助けて!』と人が思う理由を理解できていないからなんだよね。

だから、判断の閾値をわざと下げてあるからなのだと思う。



(……くすぐられて『助けて!』と思ったら『避難所』に飛ばされたとか、笑えないもんね?

人工的に作られた核は、こういう細かい思考判断が苦手なんだよ)



逆に、そういう人の感情や周囲の空気を読んでの行動が、柔軟にできてしまうのが『自立型』なのだけど……これはね、一長一短な部分があって、シシリー(わたし)が研究室の室長になった頃には、大型の施設ほど『共有型』に差し替える作業が進んでいた。

……そう、自立型は旧型なんだ。



(ただ、大型ではなく、中規模の施設型魔道具(アーティファクト)の場合は『自立型』の方が好まれていたけどねぇ。だって、融通きかないんだもの)



ただ『自立型』は名前の通り自立しているからね。

自ら情報を収集して成長していく。

なのでその成長を間違えられてしまうと……大惨事になると思わない?

しかも、原材料が『ダンジョンの核』だからね。


そういう危険性を指摘されて、大型の施設は『共有型』への差し替えが急ピッチで進められていたんだ。



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