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恋愛事情と言うのでしょうか。

 



「そうかぁ…何かきっかけでもあったのかと思ったけど、セシリアが意図して何かをしたようにも見えないものねぇ。……あんなに好かれてるのに、思いっきり嫌がってる令嬢とか、初めて見たわ」



 追い回されて嫌なのを通り越して能面みたいになってるハンス先生ならいつもの事だけどね。と、頬杖をつくと寂しげに笑う。

 そこ、笑い事じゃないですよ、フィリー姉様……。



「あ…もしかして、ギャップ萌えとかいうやつなのかしら。嫌がられるからこそ、好き!みたいな。否定されるほどに近づきたくなる習性が……!普段、否定されることがないからこそ…!うん、それはそれでアリだわ!」



 閃いた!と言わんばかりに顔をぱっとあげて、なぜか嬉しそうに語り出すフィリー姉様。


 ナシです。それはナシでお願いします。

 しかもそれ、ギャップ萌えというよりは…マゾヒズムとかいうやつなのでは?


 メアリローサ国でのルークの評判というのはすごく気になっていたところだけど、そういう変態チックな印象がつくような情報は、要らない……。

 ルークに本当にそんな性癖があったのなら、むしろそのギャップ(こと)に私の方こそびっくりするわ。

 ……萌えはしないけどね!



(ああ、でもそうね、やっぱりこの語り口調は後輩を思い出すわ……)



 これは、世の女性であれば当たり前の反応ですよ!と、シシリー(わたし)が呆れるたびに、真面目な顔でいつも諭されていた。

 今思うに、ルークはシシリー(わたし)にとって家族や兄弟のような認識だったから、後輩のような反応は理解ができなかったのだろうけど。



「フィリー姉様はルーク…先生が好きだったのでしゅか?」



 あ、また噛んだ。

 この肝心な時にだけ噛むのやめてほしい……。


 フィリー姉様は私の言葉に一瞬、動きを止めて、目を見開いたかと思うと、懐かしそうにふわりと笑う。



「そうねぇ…一時期、好きだったかしら?でも、王族の女の子や、先生の周囲にいる女子なら誰でも一度は考えることみたいよ?」


「誰でも…?」


「ええ、誰でも。自分に傅いてくれる人間の中に、あれだけの美貌の人がいるんですもの。気にならないはずがないじゃない?しかも独身よ?!誰だって誤解しちゃうわよねぇ」



 そんな状況を想像しているのか、半ばうっとりとするフィリー姉様。

「……まぁ例外なく、必ず玉砕するのだけどね」と、悪戯っぽく笑う。


 必ず。の理由はルークの(つがい)がどこかに存在するからだ。

 (つがい)探しを諦めているのであれば、交際や婚姻に応じたのだろうけど、実際、ルークは自分の(つがい)を見つけ出して、子を設けている。


 今は既に先立たれてはしまっているけど、生まれ変わりである(つがい)を探し出せてもいる。

 まぁ、見い出すのがちょっと遅かったみたいで、今回は振られてしまったようだけど。



(そういう意味では一途なんだよなぁ。と、私は評価したいのだけど、後輩的には『女性よりも男性の方が…!』という燃料投下の原因にもなっていたのよねぇ。メアリローサ国(いま)でもそうなのかしら?)



 当時の若い女性達の間で流行っていた恋愛小説にも、あからさまにルークをモデルにしてるよね?!という内容のものがあった。

 しかもベストセラーというね。

 ちなみに、ヒロイン役が王族女性の場合と、王族男性のものがあって……後者の方が人気が高かったと記憶している。


 後輩が熱烈なファンで、研究室に持ち込んではシシリー(わたし)に強く勧めてくるので世情に疎い私でも、はっきりと覚えていた。

 ……そう、セシリア(わたし)が魔導学園へと飛ばされた時にルークに『見られたら困る、怪しい本』と焦っていたのはまさにこの事で。


 ああ、でも、あえて見せちゃっても楽しかったのかもしれないなぁ。とも思ったりして。

 部屋にあった本を読み漁っていたものね。

 ルークがモデルなんだよ?って読ませたら、どんな反応したのだろう?と考えると焦る必要はなかったのかもしれない。



「あの先生に結婚していた期間があること自体、信じられないくらいに綺麗さっぱり断られてしまうのよねぇ。辺境伯の現当主はもとより……何よりユージアが息子だって言われてもいまだに信じがたいし、って考えたら、亡くなってしまったハンス先生の奥方は、どれだけ美人なのかと、嫉妬のネタになるような存在だったのよ?」



 ……婚姻歴(ぜんれい)があるからこそ、さらに人気が上がるというのは、こちらの世界ではとても珍しい。

 一般的に、男女ともに初婚であることが婚姻の相手としては評価が高いのだけど…。


 貴族は特に男性は、パートナーに先立たれると『後添え』とか『後妻』といって、再婚を周囲に強く勧められる。

 恋愛結婚よりは家同士の結びつきを重視する貴族だから、そういう相手との結婚が親によって決められてしまってガッカリ…という女性も多いわけです。


 ……前世(にほん)でも、私の世代くらいまではお見合い結婚が多かったから、あまり違和感がないのだけど、息子の世代での『お見合い結婚』は根本的な意味合いからして変わっていたものね。



(個人的には息子の世代での『お見合い結婚』の方が私は好きだけど)



 私の世代くらいまでの『お見合い』って、相手の性格どころか顔すら知らないままに、親と世話人の間で勝手に話がついていって、式当日にご対面!という事もままあったのよね。


 イマドキの『お見合い』はマッチングだっけ?本人達が、紹介されて実際に会ってみて、そのどちらかでも一方が合わないと思えば、次の人との『お見合い』が始まるのでしょう?

 私の世代と違って本人主体だし、イヤならイヤとはっきり言える。しっかり選べる。



(それがとても羨ましいし、自分で考えて決めるからこそ、幸せになれる気がするのよね)



 今世(こちら)の婚姻事情も、家の当主が決めるのではなくて、本人が決めていけるようになれば良いのになぁと、願わずにはいられない。



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