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私も暴走して良いですか。

 



 主人(マスター)の不利になるようなことをしてちゃ、ダメでしょう?



(暴走ってね、名前こそはた迷惑そうだけど、本当は『どちらが護るか』の力の確認のようなものなんだよね)



 契約している以上、運命共同体のようなものだから、危険な目に遭わないように強い方がもう片方を保護する。これが基本なのよ。

 だから、珍しいことではあるけれど、こうやって精霊の方が格上なのに契約ができてしまっているという例もある。

 ……相手を、守りたい一心でね。


 表現で言うなら、精霊を『契約して使役する』のではなくて『契約して保護してもらう』そう言う意味で、格上の精霊から将来を見込まれての契約というのも存在する。


 ……ユージアが、そうやって契約できてしまえばよかったんだけどねぇ。

 自らの命を削ってまで、ユージアを守ろうとしていた水の乙女(オンディーヌ)だもの。

 きっと素敵な関係が築けたと思うんだ。



『大丈夫ですよっ!カイ様は、ライトちゃんがし〜っかりお守りしますからっ!』


「僕は、むしろトドメを刺されそうな気がするよ……」



 自信満々のライトに比べて、遠い目のカイルザーク。

 なんか、精神的というよりは体力的にも、文字通り疲れてるように見える。

 勢いに押され気味というか…なんだろう?

 やたらとフラフラしてる気がした。



『カイ様っ?!』


「ってライトは僕を『マスター』だったり『カイ様』だったり……呼び方が忙しいね?……カイで良いよ。みんなもそう呼んでるでしょう?」



 ライトは、ぱっちりとした可愛らしいピンク色の瞳が大きく見開かれると、途端に泣きそうに頬を紅潮させてくしゃりと顔を歪ませる。



『カイさ…っ!カイ、大好き〜っ!!』


「う、うわあっ」



 感極まったライトに勢いよく飛びつかれて、カイルザーク思いっきり背後へと倒れ込んだ。……押し倒された感じ?

 ライトにのしかかられたまま、立ち上がれなくてジタバタともがいてるのが見えた。



『確かに…トドメを刺されたねぇ。じゃ、先に行ってるからねぇ〜』


「えぇぇぇ、助けてくれたって良いじゃない……」


『ちゃんと、ライトを見てあげる(・・・・・)と良いと思うよ。そのままなのも面倒でしょう?』



 ほっといて良いのかな?と思ったのだけど、フレアは上機嫌で、今にもスキップでも始めてしまいそうな足取りだったし、素直に抱えられたまま食堂へと移動した。







 ******







「いただきます!」



 ソフィア王妃は、シュトレイユ王子のそばで食べるそうなので食堂には来なかった。


 晩ご飯は……まさかのちゃんちゃん焼き。鮭じゃなくて白身魚だったから、ちゃんちゃん焼き風、かな?

 やたらと脂がのっていて、さらに盛られた野菜やキノコと味噌ベースの調味料とで混ざり合って、すごく美味しかった!

 ……ひと欠けしか貰えなかったけど。


 他の皿には手のひらサイズのカレイがバター焼きにされて盛られていたり、骨の唐揚げがあったり。

 私の好きなものばかりで、泣きそうになった。

 本当に、色んな意味で。


 ちなみに私の雑炊も、これまた好物だったカレイの雑炊。

 カレイの脂の甘みと旨味、隠し味に使われている生姜とがよく合っていて、絶品でした。


 これもちょこっとしか貰えず……まだ食べれるよ!?食べたいよ?!



『……そんなに恨めしそうな目で見ないでよ。また作るからさ』


「作ってるの、ルナじゃん。仕入れもルナでしょう?」



 給仕も配膳も手慣れた感じに済ませていくフレアと、その間はキッチンスペースに篭りっぱなしのルナ。

 見慣れてきてしまってるけど、常に一緒じゃなきゃダメなルナとフレアが、きっちりと分担作業ができてしまっていることに少し驚きだ。



『まぁそうだけどさぁ。でも、食べすぎたのは僕のせいじゃないよ?』


「そうなんだけどね……」



 食後のデザートにと、フルーツを配膳しつつのフレア。

 私の分も持ってきてくれたけど、当然、小皿にちょこっと。


 私の口へとひたすらにお菓子を運び続けたのは父様だった。



(…でも、今はいないから文句言えないし)



 そうそう、ちゃんちゃん焼き風の白身魚もカレイだったそうなんだ。

 触ると身が簡単に崩れてしまうから、スプーンで掬う勢いで、取り分けていた、あのすごく柔らかくて脂が乗ってて美味しかった魚!


 今の時期、メアリローサの南方の海流には手のひらサイズの子供のカレイがたくさんいるそうなんだけど、なぜか稀に二回り以上の立派な体格のカレイが混ざり込むらしくて。

 もうちょっと後の季節に獲れる『戻りカレイ』とか『花見カレイ』とか言われるような大人のカレイなんだろうけどね。



『食料の買い出しに行ったら、偶然に見つけてさ、思わず買ってきちゃった!』



 そんな説明をしながら調理を終えたルナが、金の瞳をキラキラと強く輝かせて『好きでしょ?』と悪戯っぽく笑う。


 ええ、好きです。

 大好きですよっ!

 この食べれないタイミングじゃなければ最高だったのに!!!

 父様のバカあああぁぁぁぁぁっ!



(……ま、食べちゃったのは私だけど、無限に勧めたのは父様だもん!許すまじ)







 ******






 食堂からサロンに帰る前に、今日の部屋割りの説と相談のようなものをした。

 結局、昨日とあんまり変わらなかったんだけど。


 ソフィア王妃もいるから、今日こそ各自個室に…と話がまとまりかけたのだけれど、むしろ王妃たってのお願いで、昨日と同じワンフロア状態の、男女は目隠し程度のカーテンがひかれただけになった。


 解呪の魔法を使えるのがヴィンセント兄様だけであること、そして呪いの大半のフォローをしているのがセシリア(わたし)なので、何か…あってはほしくないけれど、急変等起こったときにすぐに対応して欲しいとのことで、全員同室になった。



「……お風呂、入りたいなぁ」



 ポツリとエルネストが呟くと、きょとんとした表情でフィリー姉様が言葉を返す。



「あるわよ?」


「「あるの!?」」


「無いわけが無いじゃない。仮にも王族が使う施設なのよ?」



 フィリー姉様は呆れた様子で…期待に目を輝かせているエルネストに教えている。

 エルネストの隣にいたレオンハルトも同じく目が輝き出してる様子を見ると、王子も知らなかったんじゃないかな?とか思いつつ。



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