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大人の会話と、お仕置き。

 



 それ以降の会話は、子供にも聞かせているとはいえ、内容的には教会の信用情報のようなものになってしまったので、正直私の頭には全くもって入ってこない。

 どうにもこういう話は苦手だ。



 ちなみに前世(にほん)で『信用情報』といえば、カードを作ったり、ローンを組むときに確認されたりするやつだ。


『他所でカードどれだけ持ってるの?』

『ローンはどれくらい組んでるの?』


 そんな情報が登録されているから、確認した相手…例えばローンだと銀行とかだね。

 その情報からさらに、この人は新たにローンを組んでも大丈夫なのか?

 ぶっちゃけ今のこの人の収入で『今までのローン+新規の契約』これを支払いつつ、生活して行けそうかな?と、収入と見合った契約なのかどうか?を確認するための手段として使われている。



(お金を貸すのも商売だからさ、お客さんに倒れられても困るし、まして破産なんてされた日には、会社の収入になるはずだった利息の支払いがされないばかりか、元金の回収すらままならなくなっちゃうし、シャレにならないからねぇ)



 つまり、ローンやクレジットカード系はお金を商品としたレンタルショップだから『レンタル料金が支払われなかった』と言うのは痛いけども、全体の取引の数%であれば、まぁしょうがない。

 次の商売で、徐々に取り返していければいいだけだ。


 だから、ちょっとしたアクシデントがあって『今月以降の返済が厳しくなった!』と、相談を受ければ、支払い期日の猶予や、利息の軽減をしてくれたりする。


 でも『貸した商品(おかね)すら返ってこなかった!』と、なってしまうと赤字どころか会社の大損失になってしまう。

 何しろ貸すべき商品がなくなってしまうのだから、こちらの商売の存続すら危うい。

『せめて貸した商品(おかね)だけでも返して』と裁判になったりもする。

 裁判になればその費用、そして回収するまでにも膨大な時間がかかる。


 精神的にも体力的にも双方に大ダメージになっちゃうのよね。

 そうならないための信用情報だ。



 こちらの世界での信用情報はまぁ、似たようなものではあるけど、聞いている感じだと、どちらかといえば個人情報に近い。

 収入とか取引の状況とか、そういうところまでは普通だけど、子供が何人いて、独立予定の子がいるとか。

 現状での収入とは関係ないけど、いずれは家を継ぐだろうから関係してくるかも?みたいな情報まで調べられちゃってたりする。

 あとは噂とかもね。備考的に書かれてるみたいだった。



(この情報に関しては一般の金融機関等が情報共有できるようなサービス等ではなくて、国の諜報機関独自のもののようだから、普通なら知らないようなことも書かれてるのかな?)



 とりあえず、ヴィンセント兄様をはじめとする大人達はその会話に参加していて、子供達の中ではレオンハルト王子が一生懸命耳を傾けている。

 レオン王子のわからない言葉が出ると、セグシュ兄様がわかる範囲で説明して…という感じで話が進んでいる。


 ユージアは一応聞いてはいるのかな?程度で、ちょこちょこと席を立っては、ルナとフレアの手伝いをしているし、カイルザークに至ってはエルネストと戯れあって…あ、いや、一方的に襲いかかってエルネストに怒られてる感じだなぁ、あれは。

 完全に鬼ごっこのようになって、部屋を駆け回っている。


 ただ、耳だけはぴょこぴょことこっちを向いていることが多いから、話は聞いているのかも?



(子供の中では一番、カイルザークが興味を持ちそうな話題かなと思ったのだけどね。

 ちょっと意外だわ)



 ……にしても獣人の戯れあいって、すごい。

 大人から見ていれば微笑ましいものなんだけども、当の本人(主にエルネスト)は必死の形相で逃げ回っている。


 何をしているのかと言えば、ただただ、カイルザークがエルネストに抱きつこうとしているだけなんだけど、それを嫌がるエルネストが全力で逃げる。逃げる。


 その、全力というのが、すごい。

 運動神経の違いなんだろうけど、私が混ざったら…いや、混ざれないなぁ。

 レベルが違いすぎる。


 真っ直ぐ走って逃げると、カイルザークに簡単に飛びつかれてしまうから、小刻みに、ランダムに、背後のカイルザークの動きも確認しつつジグザグと逃げる。

 その先が壁ならば、壁を蹴って移動してしまう。

 ……壁を走ってるようにしか見えない。



「やめっ…ろってばっ!」


「や〜!……遊んで?」



 それでも動きを読まれてしまったのか、小回りを利かせて方向転換をしたエルネストの目的地には先回りするように跳躍していたカイルザークが待ち構えていて、腕を掴まれて引っ張られる。



「や〜!とかっ……こういう時だけ、子供ぶってんじゃねえっ!」



 と、思ったら腕をそのまま押し込んで、カイルザークがバランスを崩すように動くと、足をかけてカイルザークを放り投げた。



「えぇ…子供なのにっ!……あ」


「あっ……」



 私も、カイルザークを投げてしまったことがあるのだけど……なんとも鮮やかに、猫のようにくるりと綺麗に着地するんだよね。

 ただ、今回の着地地点には……。



「え…?ちょっ!」



 はい、ユージアがいました。

 カートにお茶のセットとサンドイッチや、可愛くトッピングがされた菓子パンにサラダと、ちょっとした軽食を載せて。



「……これは、不可抗力かなぁ〜」


「避けろっ!!」



 ぽーんと宙を舞ったカイルザークから呑気な声と、エルネストからは悲鳴のような声、そしてユージアはといえば、カートの前に颯爽と移動してカイルザークを受け止めようと手を伸ばしていた。


 その様子にルークが小さく息を吐くと、指をパチン!と鳴らす。


 次の瞬間、子供達の姿が消えた。

 ……戯れあっていたエルネストとカイルザークはともかくとして、カイルザークと接触しそうになっていたユージアまで。


 その場に残されたカートだけ、何事もなかったかのようにコロコロと移動し、こちらへと向かってくる。



「……余計なものまで飛んだが…まぁ良いか」


「良くないっ!降ろして!」


「気にするな。すぐ……戻ってくる」


「お・ろ・し・て…!」



 すぐ戻る。と言いながら、口角を上げて満足そうに笑っているのは、なぜですかね?

 しかも、食堂よりさらに奥の方から『きゃー』とか『うわぁ!』とか、子供達の悲鳴が聞こえてるんですけどっ?!



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