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冒険が始まっちゃう?

 


「……足手まといになるのを覚悟した上でも、それでも子供達の同行が必要である。と、いうことですか?」


「そうだ」



 フィリー姉様が急に真剣な眼差しになって、ルークに確認をしていた。

 そうだよね……移動・戦闘時、撤退でもそうだ、歩幅も体力の差もある。

 どう考えたって危険な場所であればあるほど、足手まといな人員がいるだけで自分の安全すら脅かされてしまうことだってあるのだ。


 意味なく連れ歩くのは、自殺行為になる。



「あぁ、話の続き、良いか?」


「あっ、はい」


「……まず理由の一つとして『監獄』の新たなる管理者は、セシリアだと思われる」


「ふぁっ?!」



 え?とみんなの注目から逃れるために、気配を消すことに集中していたはずなのに、むしろ名前を呼ばれて、驚いて変な声が……。


 なんで私の名前が、今ここで、このタイミングで、出てくるのか。

 ていうか、あんなおどろおどろしい所の管理者なんて、全くもって嬉しくないぞ!?



「この腕輪だ」



 変な声を上げてしまって固まっている私の様子なんて全く気にしている様子は無しに、私の腕をそっと上げてみせる。

 私の右腕、その手首には水晶のように半透明で、少しだけ淡く水色がかったブレスレットがついていた。


 このブレスレットは魔導学園の管理者の証だっていうのは、確かなのだけど『監獄』とは一切関係ないぞ?

 ……と思いつつ、一つだけ思い出したことがあった。



「セシリア、その腕輪を見せてくれるかい?」


「どうぞ……?」



 ヴィンセント兄様にブレスレットを渡した。

 私の腕から外れた途端に、水晶のような半透明のデザインではなく、女性がつけるには少々(いか)ついデザインの大理石からそのまま削り出したような、まさに『腕輪』といった形状に変わった。



「普通…とは言い難いが、魔道具(マジックアイテム)の腕輪…かな?これは古代文字?それとも文様か?」


「これは元々、王宮で使っていた属性検査の石版だった物だ」


「あー!あの四角いやつ!って事は今は、王宮では詳細の検査ができなくなっているのでしょうか?」


「いや、同じものを手に入れる機会があってね、代わりに王宮へ納めてある」



 そういや、そんな話を父さんから聞いてたな…。と、言いつつも不思議そうに腕輪を角度を変えながら真剣に観察している。



「それとその腕輪も、変形したとはいえ王家のものだからと返却を試みたのだが……」


「あっ……消えた」


「そうだ。少しするとセシリアの腕に戻ってきてしまう」



 角度を変えながら真剣に見つめていた腕輪が、忽然とヴィンセント兄様の手から消えたのを確認すると、ルークは頷きながら再度私の腕を上げて見せる。

 そこには外す前の、水晶のような華奢なデザインのブレスレットがはまっていた。



「ちなみにその腕輪の紋様のようなものは古代文字だ。『所有者以外の着用・使用ができない』と書かれている一文がある。……『所有者 セシリア』とも」



 そしてこれが発動したことによって、強制転移魔法が発動したり、移動した先での施設利用が容易くできてしまったことが説明された。

 ……それが魔導学院の施設、ということは触れずに、だ。

 その話し方に少しホッとする。


 きっと魔導学院の話をしてしまったら、いずれ連れて行ってほしいと言われてしまいそうだから。

 でも、安全だったとしても、連れて行きたくないんです。



(あの場所はシシリー(わたし)の大切な場所だったから、所以ある人ならともかく、それ以外は…身内でもイヤだ)



 この感情、ダメなのかな?


 そう思っている間にもルークの説明は続いて、セシリア(わたし)の魔力の質が、昔のこの腕輪の持ち主と似ていての強制的に所有者登録をされてしまったこと、そしてそのおかげといって良いのか……過去の施設が利用できたこと、この建物内の『開かずの間』も開けられてしまったことから考えられる事は……。



「この腕輪は、製造責任者のキーを兼ねていると思われる」



 ですよね……。

 実際、この腕輪をつけている時点で、私、魔導学園の学園長ってことになっちゃってるし、魔導学院は様々な魔道具の生まれ故郷だ。

 例えば私たちが魔導学園から帰ってくるときに使ったゲートも、魔導学園が製造責任者だった。

 だから定期的に、学園のスタッフや生徒が実習も兼ねて、ゲートの定期点検を行ったりしてたわけなんですよ。


 パソコンとか、スマホにもそういう機能あったでしょ?確か。

 なくしちゃったり壊れちゃった時に、遠隔操作で、サポートや修理してもらったり…あれですよ!


 だから中央公国からの嫁入り道具として持ち込まれたこの建物も、管理権限は『ルークと中央公国の血筋に連なるもの』の他に、正確には『製造責任者』が設定されてたんだと思う。

 トラブった時に、フォローができるように、ね。


 特に大掛かりな魔道具(マジックアイテム)であればあるほど、前世(にほん)でいう所の特許のような利権が絡むので、製造責任者の登録が必須となっていたんだ。

 ……シシリー(わたし)もいくつか、特許のようなものを持ってたんだよなぁ。

 まぁ、ここまで大それたものじゃないんだけどね。



「まず、この石板が腕輪へと変形して、セシリアの所有となった日と『監獄』の管理者が強制書き換えとなった日が一致する。『監獄』の施設の様式自体も、水の乙女(オンディーヌ)からの報告から聞く限りでは、ここと同年代の作出のようだったというのも…理由の一つだが。単なる偶然かもしれないが……『監獄』への入場の手立てがない以上、試せるものは全て試したい」


「そういう事ですか……」


「それと、そこのユージアとセシリアは『監獄』に入ったことがある。正確には『放り込まれていた』のだが、内部の情報も欲しいようなのでね」



 そう言いながら、ぽんぽんと頭を撫でると、おでこに頬をあててくる。


 ぎゃあああ!

 やめて?しかもみんなの前でとか…本当にやめて……。

 悲鳴も口にこそ出さないけど、本当は叫びたい。公開処刑すぎるからね?!



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