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花紋ってなんだ。

 



 流石にこの場で確認というのも気がひけるので…でも、後で確認しとこう。



『花紋だから……まぁ、奴隷紋よりはマシになったと思うわよ。違う方面で敵は増えそうだけど…ふふっ』



 優しげなとても柔らかな笑みを聞いて、反射的にぞわりと背筋に悪寒が走っていった。

 クロウディア様って、こういう素敵な笑いをしてる時こそ、意地悪なことや悪戯を思いついて実行中の時なのだ。


 思わず構えてしまいそうになったけど、でも、薄暗い机の上にあった魔法の手紙(レター)の残り枚数がかなり少なくなってい流のが見えて、星詠みの魔法の終わりが近い事を理解した。

 ……声は残っていても、もう会えない人には変わりないのだから、しっかりと耳に彼女の声を焼き付けておこうと耳を澄ます。



『さて、最後にハンス、貴方の事ね…。もし、私があなたをメアリローサに永く留まらざるを得ない様に仕向けてしまっていたのなら、ごめんなさい。そして……随分、時間が経っているのでしょう?今まで本当に、ありがとう。貴方の願いが、いつか成就することを願っているわ』


「こちらこそ、ありがとう」



 ルークの声の後、少し動揺する様に声が止まってから、会話が再開していく。

 やっぱりクロウディア様ってば、本当に色々と見えてるのね。



『…セシリアも、全力で生き延びなさいね?第一波が…間近に迫ってきてるわよ。じゃあ、またね』



 って、ちょっと待って…ルークには感謝の言葉と優しい言葉。

 私には『第一波が迫っている』ってなんですかっ?!


 聞き返そうにも、すでに手紙は終了していて、勝手に折り目どおりに折り畳まれていった。

 しかしまぁ、また誘拐とかがあるんだろうか?

 気をつけないと……。



「ああああー!もしかして、星詠みは終わっちゃった?」



 そう思っていると、息を切らし気味にこちらへと走ってくるフィリー姉様の姿があった。

 星詠みはすでに終了してしまっていた。

 今まさに終了したところなんだけどね。と、伝えると崩れ落ちる様にぐったりされてしまった。



「残念だわ!どんな方だったのか、写真でも出てくれば私の無実が判明するのに!」


「無実って、なんのことでしゅか?」


「あ……イヤね?この『星詠みの姫』と私、そっくりらしいのよね?ぶっちゃけ、姿絵を並べられて説得されてもさ、あんなの、髪の色と目の色くらいしか正確に描かれてないじゃない?なのに、教会もだけど、どこに行っても私は『聖女』としての行動を求められるのよねぇ……ま、嘘をつくつもりはないから、聖女ではないことを先方にまずお知らせする事で、トラブル回避はできるけど。これが毎度毎度と、行く先々で繰り返されていくから本当に面倒くさいのよねぇ」



 えっと……見た目だけでいうならば、うん、そっくりですよ。

 性格的にもかなり似てる…というかそのモノそっくりです。


 即答できるくらいにそっくりすぎて、ごめんなさい、励まそうにもその言葉が出てきません…。



「聖女自体、母さんくらいしか親族にいないんだけどね……それでもほら、この髪。母さんと同じでしょう?でもねぇ、髪が一緒だからって無茶いういなって話なのよねぇ……。セシリア(あなた)も『聖女』関係で教会に目をつけられているんですものね…困っちゃうわよねぇ」



 呆れた顔で肩を竦めるフィリー姉様。

 銀髪はメアリローサでは珍しい髪色だからね……余計にそう言われてしまうのだろうか?



「それにしても!本当に残念だわ!『星詠み』は無関係の人間には絶対に目に触れない様に始まるって聞いてたけど……ちょっとくらい見せてくれても良いのにね?」



 フィリー姉様が残念がっている。


 まぁ当たり前と言えば、当たり前なんだけどね。

 必要な人の前にしか現れない理由、それはむやみやたらに現れると、来るべき未来についての助言なのに、その未来自体がそもそも事前に変わってしまう恐れがあるからだ。


 例えば『誰かが暗殺される!』とかいう話であれば、本人の前にしか現れない。

 それをうっかり、守ってくれそうな友人や、恋人に身辺敬語を頼むと、事前にその計画を潰す様に動かれてしまったり、そもそも別の日に予定変更になってしまったら、命の守りようが無いからね?



「ま、こんなに必死になっても会えないって事は、私には危険な事が全く無かったかったってことよね、日頃の行いかしらね?」


 会えないのはしょうがないけど、平和に過ごせるのが一番だもの、むしろ会えなかったのは、悪い予兆が全く無いって事でしょう?と笑んでいた。


 切り替え早いわ……私なら悩みそうなのに。

 それにしても、やっぱ似てる…。

 フィリー姉様に言ったら激怒されそうだけど、やっぱり似てる。

 そう思って、ルークを見上げると、カイルザークと会話中の様だった。



「ルーク…なんか妙な既視感があるんだけど…主にフィリー姉様に」


「あぁ……似てる、かもしれないな」


「ああ…って、うわぁ……」



 やっぱり似てるよね?

 というか、まさにそのものだよね?

 そう思いながら2人の会話を眺めていると、話題の張本人であるフィリー姉様が2人の会話に顔を突っ込み始めていた。



「ん?なぁに?私がどうかしたのかしら?」


「ああ、星詠みの姫に似ていると、いう話をね」


「それ褒めてる?貶してる?」


「褒めて…ます」



 本当かしら……?と。ニヤリと笑うと、カイルザークの前にしゃがみ込むと、じーっと顔を覗き込みながら…。



「でも、うわぁ…って言ってたじゃない?…ん〜?言ってたわよね?」


「言ってな…言ったかも?」


「言ったわよねぇ?」


「言ったかな…?あはは…」



 カイルザークは何か嫌な空気に気づいたのか、そろりそろりと後退っていく。

 その反応に、フィリー姉様は逃すまいとカイルザークを捕まえようとするが、するりとかわして逃げ出してしまう。



「言ったわよ!こらっ!待ちなさいっ!」


「ごっ、ごめんなさいっ!」



 ひよこひょこと飛び跳ねたり、しゃがんで躱したりしながら、器用に捕獲の腕から逃げていく。

 さっきまでみたいな抱っこが嫌だったのかな?

 それとも、クロウディア様そっくりなフィリー姉様に捕まってたのが嫌だったのか?

 ……まぁ苦手だったもんね?



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