表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
211/462

混乱。

 


「こんなにキレイなのに」



 癖毛がちの柔らかな淡い金色の髪の弟のシュトレイユ王子とはまた違う髪質で、さらさらなんだよね。

 まっすぐストレートで、本当に綺麗な金の色をした髪なんだ。


 心地よい手触りと抵抗の素振りもなかったので、思いっきり頭を撫でていて気づいた。

 抵抗どころか、むしろ微動だにしていない。

 呼吸、忘れてませんか?ってくらいにピクリともしない。



「レオンおうじ…?」



 いつもの笑いを必死に我慢している時と同じ、顔を真っ赤にして、涙目で。

 眼を見開いたまま、固まっている。


 心配になって覗き込むと、我に返ったのかパッとそっぽを向かれてしまった。



「あー、セシリア?セシリアも少し落ち着こうか」


「おちついてるよ?」


「……ん〜、セシリアが言いたい事は多分ね、思ってるようには伝わってないと思うんだ。ほとんどどころか全然、全く」


「えぇぇ……」



 なぜかジト目になっているカイルザークに「だから少しおとなしくしていようか」と諭される。

 視界の端では、レオンハルト王子が無言のままいつものようにうずくまって、エルネストに介抱されている。

 ……変な笑い声は聞こえてこないから、無音で堪えるという高等スキルでも手に入れたのだろうか?



「ほら、父様も悩むくらいに…」


「あ……うん、しずかに…しゅる」



 こほん。と、咳払いが聞こえ…振り向くと、ルークまで眉間にシワ!……を押さえながら、書類を片手に私たちが聞く姿勢になるのを待っていた。

 その隣では、父様が額に手を当ててなぜかとても疲れているように…深い深いため息を吐いていた。



「……もう良いか?」


「「「はい」」」



 ごめんなさい。と、それぞれルークに向き直る。

 そして、父様の説明により中断されていた、属性検査の結果が読み上げが始まる。


 測定の公平性を保つために、大勢の大人の立ち会いが必要なのはわかってる。

 わかってるけど……結果を最初から予想できてる以上、その結果に対しての大人たちの反応が怖くて、徐々に身体が強張ってくる。



(……また、『不吉だ』と殺されてしまうんだろうか。やっと、お家に帰ってこれたのに)



 友達も…できた。

 シシリー(むかし)の心残りだった知り合いにも、会えたのに。


 身体を走る、凍りくような寒さに指先から冷えていく。

 無意識にぎゅっと握りしめようとした手が、ふわりと温かいものに包まれた。



「……大丈夫」



 囁きが耳に届く。

 冷えちゃったね、ちょっと寒かったかな?そう言いながら手を握りなおす。

 温かいものの正体は、カイルザークの手だった。


 でも、大丈夫じゃないからね。

 魔力切れで歩行すら困難なのに。

 こんなにたくさんの大人たちに囲まれた状態で、殺意を持たれてしまったら……逃げきれない。

 恐怖から、涙がにじむ。



「カイルザークの属性値は土が9、光が6、水が6と出ていた。他の属性も0ではなかったのだが、5には届いていなかったので記載はしない」



 カイルザークの結果にまた、魔術師団の隊列からざわめきが上がる。

 土にも驚いていたが、なにより光持ちだということを騒いでいるようだった。


 特別な教育が必要だとか……特別な教育、ね。

 それが『教会の息がかかった孤児院で』の教育であるならば、もう、それは洗脳としか聞こえない。

 今までは孤児院での慈善行為として、入学までの学習や生活環境の確保はありがたいものだと思っていたし、そこへ教会からの善意としてのお手伝い等もあるから、教会へ憧れて傾倒していってしまう子が多少なりとも出るのは、当たり前なことだと思っていたけど。


 そんな傾倒するほどの憧れとなるべき善意の集団の本部に…ユージアが囚われていた『籠』そして、教会への害となるべきものを棄てる先のような『監獄』この2つの存在を知ってしまった今では、善意の宗教団体ではなく、悪意の犯罪集団にしか見えない。



(まぁ元々、私が宗教系を苦手としてるってのもあるけど…それでも善意の集団が、人を傷つけちゃダメだよ……)



 ……なんだろう、騒いでる人達ってカイルザークと私の武器の傍にいた人達がほとんどのような気がする。

 やっぱりあの人たちは新人さんとかなんだろうな。

 他の人たちは、隊列も崩さずに、多少のざわめきはあるけど大騒ぎ!というほどの反応は少なかった。



「セシリアの属性値は闇が9、光が6、火が6、風が6と4属性が5以上という結果だった。そして、カイルザークと同じで他の属性も0ではなかった」



 周囲の反応が怖い。けど、知らなければ対応も出来ない。

 そう思って、恐る恐る魔術師団の隊列へと目をやると、案の定ではあるけど闇の属性への指摘が聞こえる……。



「セシリア嬢の場合、風は……守護龍の加護込みでの数値となるが、光と火は、両親からの遺伝だろう…とても優秀だな」



 ルークはにこりと笑うと、頭を撫でてくれた。

 無表情から突如ふわりと大輪の花が開く様な、鮮やかな笑み。

 その笑顔は魔導学園で見てきた様な、自然と出る様な笑顔ではなくて。

 ……私を「大丈夫だ」と落ち着かせようと向けられたものだ。


 その効果は絶大で…主に私よりは魔術師団の面々へとだったけれど。

 今まで、不吉の象徴だとか、早々に修道院へとか……うん、口々に私のBADエンドルートを提示してくれていた音が、止まる。


 代わりに、はっと息をつめる者や、呆然とルークを見つめている者……見惚れているようだった。


 ていうか……修道院とかって、前世(にほん)で読んだ中世や異世界ファンタジー系の令嬢BADエンドコースですよねぇ。

 私、そこまで悪い事はしてないどころか、属性検査受けただけですよ……。



(あ、修道院って教会の一種だっけ……じゃ、本当にセシリア(わたし)にとってのBADエンドだわ)



 ゴミとか言われてたし、殺されなくとも洗脳されるなり、最悪、聖女か魔女という『駒』としてユージアみたいに『隷属の首輪』でもつけられてしまう気がする。

 それだけはイヤだな。



「……教会の光属性至上主義の考えであれば、闇持ちは悪に見えるかもしれないが、これほどまで各属性の愛し子であるセシリア嬢が悪であるなら、なぜ光属性にも好かれているのか……もっとも、これだけの使い手を虐げれば、『最悪』な相手として、いずれ立ちはだかる事になるのは間違いはないがね。……2人とも、将来が楽しみだな」



 うーん、光と闇、聖と邪は別物なんだけどなぁ……。

 大体混同されちゃうんだよねぇ。

 あ、これで私が『邪』も持ってたら、正真正銘の魔女とか魔王ってやつになれちゃうんだろうね?


 ちなみに、今の時代での解釈はわからないけど、光と闇は『魔法』としての属性。

 そして、聖と邪は気質……えっと、『気』というものの属性といえばいいのかなぁ?

『気』は魔法を使うのと同じ感じらしいけど、基本的には獣人やら人族でも肉弾戦を得意とする戦士系の人が使える。

 まぁ、使えるというか無意識に使ってるから、使ってても気付かない人が多いんだけどね。



「なお、契約精霊等の備考欄の情報に関しては、本人次第で今後も変わっていくので、記載はしない。以上だ」



 属性の測定が終わった。終わったんだよね?

 特に怒号が飛ぶこともなく、酷く糾弾もされなかったって事でいいんだよね?

 助かった、のかな?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランキング参加してみました。
小説家になろう 勝手にランキング
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ