表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
210/462

仲間。

 



「そして、レオン王子もレイ王子も魔術学園へ入学となれば、その成績や魔力の高さから否応無く生徒達のトップ、つまり目標とされる立場になるだろう。そしていずれ外交や国の仕事を手伝うようになった時、これは国のトップという扱いだね。そういう人の上に立っている時に無意識にでも、差別を助長してしまうようなことが絶対にないように、学んでもらいたいと思っているんだ」



 ……父様は前世(にほん)での道徳のような授業を王子達に。と、思っているようだった。

 道徳は人の気持ちを育てるものだから、正直一辺倒な正解っていうのは存在しないと思ってる。

 それでも、少しでも優しい行動が取れるように、考える余裕ができるようになれたら…どんな時代になっても、きっと良い統治者でいられる。



「まぁトップが率先して差別してたら、その下につく人間はそれに従っちゃう、というか従わざるを得ないもんねぇ」



 あはは。と、カイルザークが肩をすくめる。

 父様の説明に、レオンハルト王子の返答は?と思い、視線をやると悲しそうに俯いていた。



「幸い、エルネストやカイルザーク、ユージアは縁あって公爵家(わがや)へと迎える事になった。こうなると彼等は私の家族だ。その姿や特性だけで謂れのない差別を受けることは、私が絶対に許さない。それと同じに、王子達は晩餐会で彼等と楽しく過ごせていた、今も一緒に勉強を受けている……そんな共に学ぶ仲間が、どこかで差別されて辛い思いをするとしたらどう思う?」


「それは…イヤです」


「そうだな、そしてだ『差別は良くないことだ』という知識から、王子として、義務として、ただ漠然と行動するのと『仲間が辛い思いをしないように』と行動を起こすのと……手伝う立場から見たとしても、どちらを率先して手伝いたいか……優先順位をつけるにしても扱いが変わってくると思わないかい?」



 レオンハルト王子に視線が集中する。

 周囲も静まり返った中で、シュトレイユ王子を「よいしょ」と抱き直すと、父様はレオンハルト王子の前にひざまずき、頭をぽんぽんと撫でた。



「たったこれだけ。そう思うかもしれないけど、それでも、周囲へと伝わっていく熱量が違ってくる。……これは種族への差別だけではなくてね、どんな事に対してもだけど、誠実に対応できるように、困っている相手への理解度を深めていって欲しいと思う」



 ん〜、相手の立場に立ってみる。親身になる。そう言いたいのかな?

 父様は「まだ難しいかなぁ」と言いつつ笑っているが、そうだね、いずれは国のトップになる王子達に、その優しさを教えられたのなら、ゆっくりかもしれないけど、優しい国へと変わっていけると思う。



「……風邪をひいた時に、優しく看病してもらえると嬉しいよね?それと同じように、辛い状況の人ほど優しく、助けられるようになると良いねってことかな?」



 にこりと笑みを浮かべながらカイルザークが捕捉のように話すと、レオンハルト王子は理解できたのか小さく頷いていた。

 父様がちらりと私にも視線を送ってきたのがわかったので、私にも理解して欲しかったのかな?と思い、胸を張って答える。



「くわずぎらいを、するな!でしゅ…です、ね!」



 父様がシュトレイユ王子を抱えたまま崩れ落ちるのが見えた。

 あれ?簡潔にまとめすぎたのかな?と思い隣りにいたカイルザークへと目をやると……耳としっぽがピンと真っ直ぐに立っていた。

 えっとこれは『驚愕!』……驚愕!?



「ええぇ、僕達、食われちゃうの……」


「ぶっ……私っ、は…好き嫌いは、なっ…い。ない…。ははっ…」


「レオンっ!……あ、大丈夫そうだな。なら、良いや」



 いや、エルネスト、良くないよ?全くもって良くない!

 エルネストはレオンハルト王子の爆笑我慢病を落ち着かせようと、構えてたらしいけど、レオン王子は珍しく普通に笑ってる。我慢してないから介抱の必要は無いよね。


 あははっ!と、声を上げて思いっきり笑っているレオン王子。

 両サイドからさらさらとこぼれる金髪が、春のやわらかな木漏れ日を受けてキラキラと輝く様は、まさしく王子様!と言った感じで……御令嬢であれば見惚れてしまうんだろうなぁ。

 ま、やっぱり少しだけ笑いが激しくて、相変わらず頰は紅潮気味だし、瞳は涙ぐんでるけど。


 それはまぁ、良いこと…あ…『良いこと』ではないっ!

 そうやって笑う、笑いの対象がいつもセシリア(わたし)なのは勘弁してほしい。

 ていうか、なんで私なのさ……。



「……かむのは、しょうがないでしょ」


「すまん。どうしても…面白くてっ……!」



 思わずジト目になる。

 ぐふぉ!とか、げふぅ!とか変に笑いを堪えられているよりは傷は浅い!…と思うけど、ここまでハッキリ笑われるのも、やっぱり傷つくのですよ……?



「でも……ちゃんとわらえてるから、ゆるしゅ……ゆる…すっ!」


「ぶふっ!ほらっ!かんっ…じんなっ所で、しっかり、噛むからっ……!」



 ……許したらこれだ!

 ていうか、許せない。何より自分の滑舌がっ!!!

 どうしてこうやって肝心な所でこそ、しっかり噛んじゃうのよ…。



「あははっ…セシリア、火に油注いじゃってるよ?」


「うわっ。我慢も苦しそうだったけど、この爆笑も止まる気がしない……レオン、大丈夫か?」



 カイルザークとエルネストまで、一緒に笑い出しちゃってるし、ひどいよね。

 とりあえず2人の声に「だめかも」と、小さく呟いたレオンハルト王子の声が耳に入ったけど、気にしない事にして、レオン王子に近づく。



「うん、ちゃんとわらってるレオン王子、カッコイイね」


「え…っ!」


「カッコイイよ」



 肩につかない程度の長さの、サイドの長めの髪が、笑いすぎの影響でハラリと顔にかかっていた。

 両サイドへと手を伸ばして、髪の位置を整え、ついでにほっぺをうにうにしといた。

 ……笑われた仕返しに。



「うん、カッコイイから、いっぱいわらってね?」



 思わずにこりと笑みが浮かぶ。

 ただ、笑い続けていたはずのレオンハルト王子は、目を見開いたまま固まってしまっていた。

 笑いは止まったけど……いや、表情も止まっちゃっていたけど、顔はどんどん赤くなっていった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランキング参加してみました。
小説家になろう 勝手にランキング
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ