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お姉ちゃん。

 



 と、いう事で学年の初めの4月生まれのセシリア(わたし)

 そして5、6、7、8月〜と過ぎていって1、2月…の3月生まれのカイルザーク。

 数字的にはお隣同士なんだけどね、一応月齢的には、私は一回り近く離れたお姉ちゃん!


 妹って言われなくてよかった……とほっとしている後ろから、レオンハルト王子とエルネストの会話が聞こえてくる。



「姉、か……?」


「姉だぞ?」


「ほ、本当に姉なのか?」


「姉、だな……」


「あ…姉…ぶふっ…!」


「ちょ…!レオンっ……」



 何か失礼な事を言われている気がして、くるりと後ろを歩く彼等へと振り向くと……すでにレオンハルト王子が酸欠状態になってうずくまっていた。

 ……その姿に怒る気も失せて、かわりに大きなため息が出た。



「僕の姉だよ?……可愛いお姉ちゃんでしょう?」


「一緒にお勉強できるお姉ちゃん、いいなぁ」


「今もだけど、学校で(これから)も同じ学年になるから、楽しみだよね」



 3歳児ペアの会話は可愛らしい。

 けど、なんでだろう?やたら胡散臭く聞こえるのは。

 カイルザークだけじゃなくて、シュトレイユ王子の言葉まで胡散臭く……。

 ま、いいか…フォローって事にしといてあげる。



「……このペースでそこの弟妹2人で……悪さをしてたら、兄のエルか宰相が過労で倒れそうだけどな」



 顔を真っ赤にしてふるふると身体を震わせながらうずくまっているレオンハルト王子を介抱しようと背をさするエルネストを眺めつつ、気を取り直して歩き始めると完全に呆れ返っているといった風のゼンナーシュタットの声が聞こえてきた。



「あれ、ゼンもおべんきょう……ほんとうにしてたんだ?じつぎもうけるの?」


「えっ……してたよ?」


「堂々と熟睡(ひるね)してたセシリアよりは、ずっとまともに受けてたよ?」


「えぇぇ……」



 ほら、止まらないの!と左右の手をカイルザークとシュトレイユ王子とに引かれながら進んでいく。

 両手を繋がれて引っ張られてたら、止まりようが無いんだけど?

 しかも左右からステレオのようにフォローしてくるし。

 そんなに勉強頑張ってたんだ?

 もふもふの勉強姿……どんなだったんだろう?見たかったな。



「いや、そもそも一緒に勉強するために、僕を迎えに来てくれたんじゃなかったの?」


「えっ?そうなの?」


「そうなのって……えぇぇ…」


「ぶっ…!その(なり)じゃね……人化、まだ出来ないの?」



 ゼンナーシュタットはショックを受けてたのか、悲しそうな声をあげてる。

 その声を聞いて、からかうかのように面白そうに笑いながらカイが話しかけていた。


 けど、私は『龍の離宮へ行け』としか言われてなかったから、本当に知らないんだってば!



「ちょっとやらかしちゃって…罰として禁止されてるんだ」


「じゃ、自業自得だねっ!面白そうだから、頑張って?」


「なんだそれ……」



 笑いながらも、王宮の庭園を横切るように走り抜けていく。

 目的の場所に到着したのか、少し先にあった東屋の前で、ルークが立ち止まっていた。

 周囲には魔術師団の団員も数名、並んでいた。



「そうだな、これからの実技でゼンナーシュタットには頑張ってもらうとしよう」



 そう言いながら、にこりと意地の悪い笑みを浮かべているルーク。

 せっかくの美人さんなのだから、爽やかな笑みでお願いします!そう思いつつも、笑顔を見るとやはり見惚れてしまう。



「まずは、セシリアとカイの属性検査を…行う。……大体予想はつくが…な」



 まぁ、知ってますよね。

 特にカイルザークに関しては、昔のままなら予想どころか確定の情報として知ってるよね。


 セシリア(わたし)はどうなんだろう?

 過去の記憶は引き継いでいてもシシリーとは別人血縁関係も何もない他人だから……でも、魔力は魂に付随するものだし……でも血統で属性が継承されるってのもあるし……うーん、さてどうなるのか。気になるよね。


 ルークが周囲に目配せをすると、魔術師団の人達が大切そうにカートを押して近づいてきた。

 カートの上には石板。

 ……また強制転移魔法が発動したりしないよね?



(まぁ、発動しないように確認してから魔導学園から持ち出してきたやつだけど)



 そう思いながらチラリと、自分の腕にはまっているブレスレットを見る。


 本来、あそこに置かれて、使われていくはずの属性検査の石版は、前回の検査の時にちょっとしたトラブルを起こして、私のブレスレットになっていた。


 しかも外せない。

 まぁ外せはするんだけど、外して時間が経つと勝手に腕に戻ってきてる。



(外せないよりはいいんだろうけどね。着けてる部分が蒸れて痒くなりそうだし)



 しかしまぁ、外しても少ししたら勝手に腕へと戻ってきちゃうから、国宝級の魔道具(マジックアイテム)だったとしても返しようがないんだよね……。

 しかもブレスレット自身が、セシリア(わたし)を『持ち主』だと認識してしまっているから、例え返却できたとしても、今後使用はできない。

『持ち主』しか使えない専用アイテムとなってしまっているから。



「セシリア、カイ、装備を持ち歩いてるなら、外しなさい」


「あっ!……わしゅれてた」


「あぁ……ダメなんだっけ…ちょっと待ってね」



 杖……持ったままんですよ。

 鈴で小さく収納している感覚なんだけど、これも感知されちゃうんだっけ?

 まぁ、変な数値が出たらイヤだし、素直に外そう。



「こちらへどうぞ」



 魔術師団の一人が小さなトレイを差し出してきた。

 魔力を上げるちょっとした魔道具(マジックアイテム)を想定してのトレイなのだろうけど、カイが持ってるのは多分……。



「ごめんなさい、武器なので地面に置きます」


「受け取りますよ?」


「重いので……いいです」



 カイルザークは首を横に小さく振ると、少し後ろに下がると蹲み込んだ。

 魔術師団の人は、怪訝な顔でカイルザークを見つめて……あ、そうか、カイルザークがそんなに重そうな武器を持ち歩いているようには見えないからだね。

 現時点でも手ぶらだし、衣服だって軽装で、ローブ等を羽織ってるわけでもなかったから、隠しようもないし。



「セシリア様は……?」


「つえ、です」



 同じく首を横に振って、カイルザークと同じく芝生の上へ置く事にした。

 すでに芝の上には、カイルザークの細工が見事なレイピアと、短剣、杖が置かれていた。

 杖が……3本。3本?!



(あ……引越し準備のまま、杖を仕舞わずにそのまま持ち歩いてたんだね)



 研究棟での普段使い用と冠婚葬祭用、狩りに使う用と持ってた気がするから、あれが全ての杖だったと思う。

 そう思ってる側から、レイピアと短剣がもう一組姿を現した。




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