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side エルネスト。考える。★(動きます。)

……文末に挿絵という名の落書きが貼ってありますので、イラストが苦手な方は、見なかった事にしてください。

 



 里にいた今までなら、すべてを否定された。

 今は、すべてを楽しみだと言われる。


 ボクは何も変わっていないのに。


 今までなら、ボクに何か悪いところがあるのだろうと思って、必死に直せるところは直そうとした。

 直せば、きっと仲良くしてくれると思っていた。

 ……結局、何も変わらなかったけど


 今は、そのままで良い、ゆっくりで良い、いろいろ試してみなさいと言われる。

 本当にこのままでいいのかな?

 ボクみたいなのが、公爵家(ここ)にいていいのかな?


 新しい父様と母様の会話は、どんどんスピードアップしてしまって、もうボクにはついていけないけど、すごく楽しそうだ。

 仲の良い父様と母様、子供にも優しくて……良いなぁ。


 そんな様子を眺めながら、後部座席の柔らかい背もたれに沈み込むように深く座ると、不意に視界が暗くなった。

 驚いて顔にかけられた視界を暗くしている物をどかそうとすると、さらに押さえつけられる。



「わぁ!!なっ…なに?!」


『あっ!起きてた!』



 声を上げたと同時に、視界が戻った。

 どうやら、頭からブランケットを被せられたみたいだった。

 視界が戻ると、ブランケットを押さえていたと思う相手の顔が目の前にあってさらに悲鳴がでかける。

 金髪の男の子で、目が合った瞬間、にっこりと笑っていた。



『起きてた!じゃ無いわよ。寝ててもそういう扱いはダメっ!!』


『あっ…はい』



 ブランケットはこうかけてあげるのよ!と後ろにもう一人、女の子の怒った声が響いた。

 女の子の声は聞いたことがある……。



風の乙女(シルヴェストル)……」


『ごきげんよう♪エルネスト。名前を覚えてくれていて嬉しいわ。でも、ちょっと待っててね』



 そう言うと、くるりと向きを変えて父様と母様へとカーテシーをした。



『おはようございます。アルフレド様、クロウディア様。定時のご報告でございます……と、言いたいのですが、少し急いでおりますので簡潔に。セシリア様の一行は既に死の森を抜け、聖樹の丘に到着なさいました。一休みをしてから、合流予定の野営広場へ向かうことになりますので、双方の合流・到着予定はお昼過ぎになるかと思います』



 少し高めの可愛らしい乗除の声が車内に響く。

 風の乙女(シルヴェストル)は父様と母様へ報告をしながら数枚の手紙を渡していた。

 ボクはと言えば風の乙女(シルヴェストル)と一緒に現れた金髪の男の子の姿をした精霊に、じーっと凝視をされていた。


 か……顔が近い。



『あっれー……変わった獣人の幼生がいる……って!痛いからっ』



 じりじりと近づいてきていた金髪の男の子の精霊の顔が、がくりと一瞬ブレる。

 痛みに顔をしかめたまま、一気に離れていった。

 顔が離れて、広がった視界に飛び込んできたのは、男の子の後頭部を掴んだまま、ボクへと優しげな笑みを浮かべている風の乙女(シルヴェストル)だった。やっぱり怖い。



『そうね…痛いわよねぇ…もっと痛くしてみる?……貴方、ここに何を(・・)しに来たのかしらね?』


『は…はいっ!えっと……』



 男の子の精霊が、もじもじとしながら何かを話し始めようとしたところで、風の乙女(シルヴェストル)が小さなため息を吐いて、頭を鷲掴みにしたままだった腕を、ぐいっと引いた。



『はい、時間切れ。移動するわよ』


『って…えぇ〜。ちょ…理不尽っ!!』



 何かを話し始めようとした男の子の後頭部を片手で掴んだまま、引きずるようにしてすぅっと2人の精霊の姿が消え始める。



『エルネストもまた後でね。では、失礼致します』


「えっと……」


 空いている手をひらひらと振ると、姿が消える早さが加速し、ボクの返事が届く前に姿はなくなっていた。と思う。



「……消え、ちゃった」


「精霊って可愛らしいわねぇ。私も欲しいわ」


「見た目は可愛らしいかもしれないがな……」


(中身は凶悪だよっ!!!特に風の乙女(シルヴェストル)!!!)



 思わず心の叫びが、うっかりそのまま口から出そうになった。

 ……主人のために、忠実に働く姿は評価できるはずなんだけど……やっぱり評価できないっ!

 でも、孤独を気にせずにいられそうなのは羨ましいかな。

 お友達として存在してくれるような精霊、いたらいいのに。


 そう思いつつ、父様と母様の会話に耳を向けると……すでに、精霊のお話は終わって、夜会?のお話になっていた。

 何が楽しいのかよくわからないけど、貴族は夜会と言っては夕方から夜までのパーティーをこぞって開きたがる。



(まぁ、里の近くの領主もパーティー好きで、王都で開けばいいのにわざわざ地方に帰ってきてまで、周囲の有力な商人や有名な冒険者達を招いては、頻繁に夜会を開きまくってたんだよな。おかげで(うち)で採れた肉や加工品を多く買ってくれてたから、良い商売相手ではあったんだけど)



 母様の口からはいろいろな貴族の名前が出ていた……今は全く覚えられる気がしないのだけれど、これも本当は覚えていかなくてはいけない。

 というか、ある程度の年頃になると、貴族の子供たちも参加するようになる。

 行きたくないんだけどな……強制参加な部分があるらしいから…イヤだな。

 ……そもそも獣人である時点で、自分には縁のない世界だと思っていたのに。

 贅沢な悩みなのかな?でもイヤだな。


 そういえば……『変わった獣人の幼生』と言われてしまった。

 ……やっぱり、ボクは変わってるのかな?

 精霊が言うくらいだから、珍しいんだろうか。

 でも、嫌な顔はされなかったような気がしたんだけど、ボクって本当は何者なんだろう?



(……ダメだ、考えても全くわからないや。考えも全くまとまりそうにないし。ひとまず……寝よう。ブランケットもかけてもらってるし、ほどよく眠くなってきてるし)



 王家の馬車ってくらいだから、最高級なんだろうな、これ。

 クッション沈みすぎて、ボクのベッドよりふかふかかもしれない。

 公爵家のボクの部屋のベッド……ふわふわすぎて感動してたんだけどなぁ。

 上には上があるようだった。


 馬車の揺れでお尻が痛いとかが全くなくて、それより揺れがゆっくりと揺れる振り子のような、ふわりふわりとなるものだから、トドメを刺すかのようにとにかく眠くなっていった。












 ******













 以下は落書きという名の挿絵です。

 ……苦手な方は、見なかったことにしてください。














『キミってば、とっても珍しいのに、知らないの?』


挿絵(By みてみん)


フレアです。

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