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side セグシュ。その3。

前回までのお話。


セシリアが寝ちゃったので、家族会議はおしまい。

 



 夜更けに、ふと目が覚めた。

 トラブルが頻発し慌ただしくしていた、そんな中でひと時の家族での食事という、ほっとひと心地をつけた後だったからか、もしくは、守護龍という僥倖にでも逢わない限りは目にすることがないような存在を知ってしまったからか、眠りが浅く妙に目が冴える。



「……少し飲みすぎたかな?小腹も空いたな」



 夜勤以外の使用人は下がってしまっているし、その夜勤の使用人も防犯の意味あいが強いものだから、こんな時間に食事を頼むのも憚れる。



「食堂に行けば、何かあるかな?」



 寝間着の上から長めのジャケットを羽織って、こっそりと部屋のドアを開け、廊下に出る。

 暗い。廊下の灯りが切れている。

 日中よりは光量を落とすが、夜間も使用人の定期的な見回りがあるので、完全な暗闇になることはないはずなのだが、魔石が切れちゃったのかな?


 ──そう思って部屋に戻り、サイドチェストにあるランプを手にとって再度廊下へ出る。

 軽食をあさりに行くついでに、魔石もはめてこようと階下へ歩を進めようとしたところで…背後から微かな声を耳が拾う。



「……っ!」


「……っう…」



 僕の部屋よりさらに奥の方から聞こえた気がした。この廊下の奥の部屋はセシリアの部屋だ。セシリアはまだ幼いので、母さんか専属メイドのセリカが必ず側にいる。

 それに今夜からは、ゼンナーシュタットも一緒にいたはずだ。


 夜泣きかな?と振り向いた瞬間、首筋に冷たい金属が当てられている事に気づく。



「騒ぐな、そのまま動くな『きゅううううううぅーんっ!!!』な、なんだっ……ぐぅ」



 ゼンナーシュタットの尋常ではない甲高い咆哮が館内に響き渡る。


 咆哮にビクリと相手が怯んだその隙に、首に当てられていた刃物ごと腕を捻り上げ、バランスを崩しかけてるところで足を払う。

 仰向けに倒れ込んでいくのを確認し、反撃を警戒しつつも上から、勢いをつけて全力で踏みつける。これで当面は動けないだろう。


 響き渡ったゼンナーシュタットの咆哮によって、他の部屋からも人の動く気配が増えてくる。


 僕は急ぐ勢いそのままに、セシリアの部屋のドアを開けた。



「セシー!」



 ──頼りなく揺れる、サイドチェストに置かれたランプの薄暗い光源により、浮かび上がった室内の光景に、血の気が引いていく。



「…っうー!うー!」



 目の前にシーツと思われる布で文字通り蓑巻(みのま)きにされ、猿轡(さるぐつわ)を噛まされて、床に転がされている専属メイドのセリカ。

 ベッドには無数に散らばる白い(ゼンの)獣毛。

 かなり抵抗したあとがうかがえる。


 そして、この部屋の主人であるセシリアは……ベッドに存在せず、その奥、闇に紛れるように立つ、黒い装束の男の肩に、淡い銀髪の幼子が担がれているのが見えた。



「……セシーっ!」


「動くな!……く、来るなぁっ!」



 セシリアの姿が見えた瞬間に体が動いて、黒装束の男へ走り出していた。

 左手には、廊下で襲撃された時に奪ったナイフを逆手に。

 対して黒装束の男は肩にセシリアを担ぎ、突進してくる僕に、少し動揺をしている風だった。


 突進が着弾直前に、セシリアの背を掴み、左に逆手で持っていたナイフで切り上げる、と同時に背後からの風圧を感じたあとに突風と、強い衝撃が走る。


 直後、黒装束の男は後方へ吹き飛ばされた。

 セシリアは僕が掴んでいたので、無事だ。


 背後へと視線を向けると、ドア付近で父さんが手に風を集めて構えていた。あの突風も父さんの援護だったのだと気づいた。


 ほっと息を吐き、セシリアを抱き直す。

 これだけ騒いだのにセシリアの反応がないのが心配だが、呼吸はしていた。

 薬で眠らされているのだろうか。



「セグシュ、頑張ったな!」


「父さ…!」



 ……父さんのいるドアへ向かって、歩き出そうとしたところで肩と背に重い衝撃を感じ、じわじわと痛みが広がって、暗くなる視界とともに、赤く染まるセシリアが見えた──。



「そんな少人数で公爵家に襲撃なんて、来るわけないでしょ~?」



 男の子の、明らかに子供の声が響く。


 意識が途絶える直前に聞こえたのは、母さんの悲鳴と父さんの怒号。


 セシー、無事でいて…。




朝まで起きない深い眠り。


*******


このお話はもともと、ファンタジー好きな身内に寝物語で聞かせていたものを文章化したものです。

楽しんでいただけたら幸いです。

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