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精霊のお手伝い。

 



風の乙女(シルヴェストル)かぁ……ルークの趣味かな?」


「それ、冗談に聞こえないから、本当にやめて?」



 冗談じゃ無いんだけどね。

 もしかしたらだけど、再会一発目に襲われたってユージアが怒ってたし、めちゃくちゃ警戒してたから、ユージアの様子をしっかり観察したかったんじゃないかな?と思う。


 ……襲われた後だったら『身体の状態を確認したいから服を脱げ』とか言われても絶対に信じられないし。

 時系列的には、襲われて→お風呂で拘束→晩餐会っていう感じになるのだろうから…まぁ、そうね、確かに晩餐会の時のルークに対するユージアの態度は、警戒通り越して威嚇する勢いだったもんね。



「いや、相性が良い精霊となら、視界共有ができるって昔、聞いたことがある……っていうか、これ、教えてもらったのルークからだったわ。つまり……」


「それは……」



 ユージアが固まっての沈黙に、からん、とレモン水を飲み干してしまった後の氷が崩れる音が響く。

 ルークは出来るんだよね、きっと。

 あ、もしかして、さっきのも共有されてたのかしら。

 まぁ……見えちゃって困るようなものは、なかったはずだし大丈夫……な、はず。



「素敵なお父さんって事かなぁ?いろんな意味で」



 慰めの意味も込めて、にこりと笑う。

 ルークは一応ユージアの保護者というか、お父さんだもんね。

 心配するのは当たり前なんだけど……コミュニケーション不足というかなんというか、ユージアに誤解されていることが多すぎだったりしませんか?


 誤解されていることに気づいても、面倒だからってあえて訂正しないんだろうし。

 これは昔からの癖だよなぁ。

 必要な情報さえ伝わればいいって。

 でも、訂正も大事だと思うんだ……。



「……うわああああああ」



 ユージアはぶわりと顔から首から全身を真っ赤に染め上げると、両手で顔を覆ってしまった。

 羞恥に悶えてるっぽい?


 顔を両手で覆ったまま、ふりふりしてる。

 何の羞恥にか知らないけれど、その悶えっぷりが、可愛すぎる。どこの乙女ですか……。


 無事かどうかの確認だったらしょうがないね。

 ただ、誤解は解いてあげたほうがいいと思うよ、うん。



「でもまぁ、身体をしっかり洗うってのは大切な事だから、洗い方は知っておいて欲しいのよね……そうだ、私の精霊に教わってみる?どっちも男の子だから、恥ずかしくは無いんじゃないかな?」



 ……本当は精霊に性別は無いんだけどね。


 ルークが良く使う風の乙女(シルヴェストル)も、私が契約していたら男の子の姿で現れたんだろうし。

 あぁ、精霊ってね相手の人間に好かれたいって気持ちがあるから、無意識にでも相手が好くような姿をとるんだって。



(基本的に異性が多いのと年齢層も近かったり……あれ、ルークの風の乙女(シルヴェストル)は少女だなぁ……)



 あれは『身体が小さい方が呼び出した時の魔力消費が少なくていい』って昔聞いたんだけど、むしろ好みだったりするのかしら。

 やたらとルークに猛アタック?されてるセシリア(いまのわたし)は10代の外見だ。

 ……少なくともシシリーよりは、風の乙女(シルヴェストル)に近い年齢層なわけで。

 もしかしたら、好みドストライク!とかが最近の態度の原因だったら、怖いんですけど。

 花とかいう以前に、貞操の危機な気がする。


 ふと、とんでもないことに気づき軽く戦慄してしまった。



 ちなみに、私の精霊たちも例に違わず……という事で、初対面にルークとかカイルザークとか、常に暴走してる精霊達のとった友人たちの姿に……私は発狂というか、まぁルークに至っては本人の前だったからね。

『精霊から見た私が喜ぶ姿』ってわけでしょう?

 そりゃ爆笑されますよね……。


 次こそは、まともな姿での登場を切に願いますよ!


 そう思いつつ、ユージアの反応を見てみると、あからさまに警戒されてるし。

 身体の洗い方は親切心からなのに。



「……セシリアも、その…精霊越しに…覗けるんじゃないの?」


「ないない。私は精霊使いでも無いし、ルークのように優秀でも無いもの。そこまで精霊を器用に使えないよ……つまり、私の場合は頻繁に精霊の主観で暴走するわけなのだけど…それでも良ければ」



 やっぱり。

 ……人を覗き趣味のように言わないでほしいわっ!

 まぁ本当なら、この世界での身の回りの事や、それこそ性教育のようなものは、思春期くらいまでは親に教えてもらう。


 ユージアや私とか、3歳から5歳あたりは、周囲とのコミュニケーションもだけど、自分の身体の事もお勉強する時期だから、わかりやすいところで、それこそ身体の洗い方、爪切りや、手洗いうがい、他には歯磨きとか、ご飯の作法もかな。

 お昼寝も…我慢や譲り合いなんかも、この時期に覚えていく大事な事。



お父さん(ルーク)がいるのだから、ルークに教わりなさいって言いたいのだけれど、ユージアに変態認定されてるしなぁ)



 幼児期に身につけておくべきことを知らないまま……ってのは、ユージアは本来であれば、当の昔に奪われてしまい取り返すことのできない幼児期を、やり直せるチャンスを手に入れたのだから、ここは是非是非しっかりと身につけさせたいところなんだよねぇ。



「暴走って……」


「うん、思いっきり暴走しちゃう。この姿だって、精霊の暴走の結果だし。まぁ結果的に今は役に立ってるっぽいけど、本当なら怒るべき事案なんじゃ無いかな?」



「この姿」と、うっかりバスタオルを巻いた状態の私を見て、顔を赤らめているユージアの様子を見ていると、私が教えるってのは完全に選択肢から除外だろうし、ルナフレアに頑張ってもらうしかないかなぁ。

 ……ちゃんと教えられると良いんだけどなぁ。

 不安しかない。



「ま、まぁ……そうだね。そういう暴走は困るね」


「って事で、私が教えるかもしくは、精霊は……あからさまに性格悪い方と、こっそり性格悪い方とどれが良い?」


「どっちも性格悪いんだ…?」


「あはは……ルークのように制御できてないからね。風の乙女(シルヴェストル)より確実に性格悪いと思う」


「じゃ、じゃあ、こっそりの方で…おねがい」



 頬を赤らめながら、私を直視できないのか、伏せ目がちにお願いされた。


 もじもじと恥ずかしそうに、おねがいって……か、可愛すぎるっ!

 じゃなくて!ちゃんと言ってくるくらいだから、知りたくはあるんだね。

 ちょっと安心した。



『……随分な言い様だよね。ま、少なくとも性格の良い方(・・・)のフレアですよ』



 じゃあ、呼ぼう、と思う前にすでに現れてるフレア。

 びくりと、反射的に小さく飛び上がるユージア。


 変な姿じゃありませんように……と、勇気を総動員してフレアの姿を見上げると、フレアの元々の優しい金髪で、なぜか甚平を身に付けている……。



「ぼ…僕っ!?」


「ね?暴走するって言ったでしょう?……その姿、やめなさい」



 金髪で甚平を身に着けた、やたらときらっきらの10代(いつも)の姿のユージアがいた。


 湯船の縁に頬杖ついてた手が、そのまま頭に移動する。

 文字通り、頭を抱えちゃう……。


 でもあれだね、甚平が意外に似合ってる。

 縫ってみようかな?



『だって身体の洗い方なんでしょう……?この姿(ほんにん)で教えた方が一番教え易いんじゃない?』


「暴走するって、本当なのね……」


「言ったよね?!……不安なら、やっぱり私が教える?」


「それは絶対にダメっ!」



 即却下されました~。

 息子には普通に教えてたけどね。

 あ、ついでに孫にも。

 ていうか、むしろ女の子が実子にも孫にもいなかったから、女の子に説明する方のが、私には難しいかもしれない。



『えーそんなに僕の信用がないのなら……わかった、ここで教え…「あっちのシャワー室で!」……はいはい』



 ユージアはその場で甚平を脱ごうとしたフレアに気づくと、凄い勢いでそれを阻止し、フレアの手をガシッと掴むと、洗い場の奥にあるシャワー室へと歩き出して行った。

 こうやって見てると兄弟みたいだな、なんてちょっとほのぼのしつつ見送る。


 っと、私もそろそろのぼせてきたので、湯船から上がってベンチのようになっている部分へ座る…と、突如視界が暗転した。




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