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ゴリンセスコネクト リ・二億!

「死に晒せえええ!!」

 

 タチバナさんは襲い来る。


「ん」

「ごばああああああ!!」


 だが負けた。

 一瞬で敗北した。

 本当にもう、可哀想なくらい一瞬でケリがついてしまった。 


「幼女!! いやタチバナさんの関節という関節が! 指先ひとつでこんにゃく畑みたいになっちまったぜえええ!!」


 だがヴォルフガング=真冬=フォン=シュトロハイムさんが小指で押しただけでご臨終なされた。負けてしまったのだ。

 なんかこれから共闘が始まる流れだったけど結局俺、何もしてない。


「お、おかしい。このドラッグ『L.L(リトル・リリカル)』で幼女になった俺の握力は二十万kgはくだらないはず! 14万3000kg程度の握力しか持たないJKに負けるはずが」


 全身の関節がこんにゃく畑みたいなってしまったタチバナさんはアスファルトに倒れ恐怖しながらつぶやく。

 というか大丈夫かアレ?

 見たところ強人類だから命に別状はないだろうが、集中治療室行きは免れない感じだぞ。


「なに、私の握力がたったそれだけだと思ったの? 私の最大握力は二億kgよ?」


 二億!

 およそゴリラの40万倍!

 およそ六歳女児の2500万倍!


 圧倒的!

 圧倒的チート握力である。


「ちなみに俺の最大握力は八億はくだらないぜ?」


 何も出番がなかったのでここぞとばかりにアピールしておく。

 明日高校入学を控えた身ではあるが、就活面接の準備は怠らない。


 俺は意識の高さでも頂点に立つ男だ。


「ふ、ふえええええん! しょんなの勝てるわけないよぉ!」

「タチバナさんが!? 身も心も幼女になってしまった!」


 DQN二匹はタチバナさんを抱える。


「覚えていやがれ! 次は絶対に勝つ!」

「い、いたい。いたいよぉおおお! やさしくしてくれなきゃやだああああ!! ママあああああああ!!」


 DQNたちは逃亡していく。

 怪しいドラッグの影響で、いろいろとセンシティブな光景が完成してしまったから通報される前に病院にたどり着けるかが不安だ。

 やつらが逃亡すると残されたのは平和なスキップ村の夜道に残されたJKと俺である。


 JKはこちらを向く。

 DQNが幼女になるという異常事態でよく受け入れていなかったが改めて見つめなおすと相当美人だ。


 流れるような金髪碧眼。

 二億の握力をまるで感じさせない枯れ木のように細い手足は病人なのかと心配してしまうくらい真っ白だ。

 JKと呼ばれていたが、隣接する和光市にある中学の制服を着ている。可愛いというよりは美人という言葉が似合う外見だが、正しくはJCなのだろうか?


 ……しかし今の姿が全裸で毛むくじゃらのゴリラで良かった。

 人間の姿であったら見とれているのがバレバレであっただろう。


 JK(?)は上品に微笑み、俺に話しかける。


「一応お礼は言っておくわね。ありがとう(アウフヴィーダーゼン)

「お前馬鹿だろ?」

「な、なんでよ!?」


 さよならだ、といいたくなるくらいの馬鹿さ加減。

 頑張って難しい外国語を使おうとした努力は認めるが、お前のそれは学の無い中二病のソレだ。俺にも覚えがあるからわかる。とてもよくわかるから放っておけないんだ。


 そっと差し出したスマホの電子辞書(日独辞典第85版)の画面を見せると、JKの顔は真っ赤になってしまう。


「し、知ってましたし!! アウフヴィーダーゼンはさよならでありがとうはダンケだってしってましたし!!」


 テンプレな反応である。

 宇宙が一巡してもうこういう反応のほうが好きだと思えてしまう俺は意外に玄人なのかもしれない。


「じゃ、じゃあ! 二度と会うことも無いでしょうけど! 織田宇治春! さようならロコモーターモルティス!!」


 わざとやってんのかアイツ?

 足縛りの呪文はもう挨拶ですらねーぞ。


 JKは顔を抑えて『馬鹿馬鹿、私の馬鹿! もっとかっこいい展開を考えてたのに!』などとわけのわからないことをブツブツとつぶやいて去っていく。


 つーか馬鹿のくせに記憶力はいいんだな。

 俺の名前一発で覚えていた。


 俺はマルエツの前の自販機でなっさんオレンジを買うと帰路につくのであった。

 

 

===


「皆さん、戦争が始まりました」


 翌朝。

 なんとなしにつけたテレビ画面では、黒人のアナウンサーが重々しげにそう告げている。


「昨日、全世界で最も治安がよいとされるわれらが成増において大事件発生です。DQNによる幼女の誘拐暴行事件です。連れ去られた幼女は全身の関節がこんにゃく畑のようになっていたようですが、幸い命に別状はありません。成増最高裁は加害者と思われるDQN二人に終身刑を言い渡しましたが、加害者側はこれに対し、控訴を要求する模様です」


(昨日の案件大事になってんなあ)

 

 まるで他人事のようにニュースを流し身すると俺は朝食もそこそこに入学式へと向かう。

 そして何事も無く高校について何事も無く入学式を終えた。


 残念ながら俺には血のつながっていない妹も、通学路で一緒に登校してくれる幼馴染もいない。

 それに俺は植物のようにおだやかな人生を望む者だ。


 昨日のようなトラブルは極力さけていきたい人間なのだ。

 そういう人間なのだが。


「シロツメクサの花言葉しってるかしら?」

「あ?」


 教室でいち早く窓際の一番後ろを確保していると、異能バトルものの刺客が言いそうな言葉が隣のせきから聞こえてくる。


「復讐」


 そこには昨日のJKの姿が!?

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