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タチバナさん

「えっ……ゴリラ?」


彼女は俺を見るなりそう評した。

勘違いしないでほしいが、このJKの人格が崩壊している訳ではない。


今の俺は文字通りゴリラなのだ。

毛むくじゃらで全裸の生物がJKの前に立っているのだ。


強すぎる力は時に諸刃の剣となる。


俺は握力を解放すると姿がゴリラとなってしまう異能の持ち主である。


「ヤバかったら助けようと思ってたが……どうやらそんな必要はなかったみたいだな」

「えっ?! なにこのゴリラ。なに生意気に人間様らしく人語を解してるの? なにちょっとカッコいい助っ人キャラみたいに腕組んで斜に構えながら物陰から現れてるの? 馬鹿なの? 中二病なの? 死んだ方がいいの? 服着てよ!」


前言撤回。このJKかなり人格が終わってる。

普通初対面のゴリラにここまでボロクソに言えるか?


うん、まあ夜道でゴリラに話しかけられたら言うだろうな。俺が悪かった。


「驚かせて悪かったな。俺は織田宇治春。ごく普通の強人類の高校生だ」


握力を抑え、人間の姿に戻ってから俺は出来るだけ気さくに自己紹介した。


強人類。


それは令和が生み出した新たな人類である。強人類が生まれるきっかけとなったのは今から500年前。ここ板橋区成増を直撃した巨大隕石の影響で全世界規模で人類の握力に異常が生まれた。


やごて強すぎる握力は異能へと変化するのことがわかる。

彼らこそ強人類。


俺とここにいるJKもまた、握力を統べしものなのだ。


「普通? どこが?」


JKの反応は未だ辛辣そのものだ。

視線も不信感そのもので、紛争地域の少年兵ばりに瞳に光が無い。


だから俺はまず彼女の警戒心を解くことにする。

どうするかって?

こういう時は共通の話題から始めるもんだ


「あんたも強人類なんだな。さっきの話をきくと、相当な握力だ。俺も姿がゴリラに変貌する程度の握力は持ってる」

「どうして握力が強いと姿がゴリラに変貌するの?」


そんなもん俺だって知らねえよ。

簿記の計算と一緒だ。原理不明。そういうもんなんだよ、って考えるしかねーんだ。


答えられない俺の前で、JKはスマホを取り出す。


この状況、おそらく簡単に予想がつく。

人を信じていないJKの目力とゴリラから人間に変わった俺という状況が示す結果=通報。


何も悪いことをしていないが戦略的撤退を余儀なくされた時、声が割り込んできた。


「タチバナさん! あいつです!」

「てめえか。握力が、14万3000kgのJKっていうのは」


ホスト風の優男だ。

後ろには股間を抑えた先ほどのDQN二人を従えている。


「よくも俺の舎弟を失禁させて、アレシアメーターを粉砕してくれたな。あれはどう見てもヘアアイロンにしか見えない外見の通り高いんだぜ? 弁償して貰わねーとな。ぱんちゅのクリーニング代出して貰わねーとな!」


色々と突っ込みたいことはあったが、タチバナさんはそれを許さない。

胸ポケットからフエガムのようなものを取り出す。


「これ知ってっか〜? 巷で流行ってるドラッグだぜ。飲むと握力が飛躍的に上昇し、小学生女児になれるんだ」


割と意味不明な説明文だ。

すんなりと受け入れられるやつは相当な包容力の持ち主だろう。


「タチバナさんはこの辺りの不良の中じゃ一番ヤベーんだぜ。幼女の姿でSNS(タックチック)にちょっとえっちな自撮りあげて資産運用に活用してんだ。間違いなく一番つえー人だぜ」


確かにヤベーけど、なんかヤンキー的なのとは違う種類のヤバさだろ。

つえーけどその強さは手に入れちゃいけない強さだ。


「おお! なるぜ小学生女児によおお!」


タチバナさんは瞬く間にピンク髪、黄色い通学帽子、赤ランドセルの小学生女児となった。

服まで変化した理由はさっぱりわからない。

きっと考えないで感じる案件なんだろう。


「3秒ってとこだな」


小学生女児になったタチバナさんは、拳を鳴らす。無駄に可愛いのがマジで腹立つ。


「まずはボコボコにして有り金全部いただくぜ。俺はこんな外見にならねーとまともにチヤホヤされねーからよお。リア充は大嫌いなんだ。となりにいやがるテメーのかれぴっぴも地獄に送ってやるぜ!」


完全に巻き込まれた感ある。


「ゴリラのかれぴっぴを持った覚えはないんだけど……そんなこと言ってる場合じゃないみたい。ねえゴリラくん、力を貸してくれる? アイツ結構強いわよ」

「俺はゴリラくんじゃない。織田宇治春だ。共闘は構わないが、せめてその前に名前くらい教えてくれないか?」


JKは少しだけ気を許してくれたのか、ふっと一瞬笑って答える。


「ヴォルフガング=フォン=真冬=シュトロハイム」


やだ、この人嘘ついてる……。

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