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電子世界のファンタジア  作者: 永遠の中級者
夏の終わりと蒼乱の大陸
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89 夏休み最後の冒険

リアルではもう夏休みは終わっておりましょうが、作中の時間では夏休み最後の一日です。

終わりの始まりです。

 夏休み中の登校日も済み、夏休みも残り一日となった。

 登校日は金曜日で、正式な登校再開は土日を挟んだ月曜日という早めのスタートなのだが、登校日の後、朱里が課題を終わらせていないことが発覚したことでその日は終わるまで朱里を勉強漬けにした。幾つかは自分でもしていたようだったので一日使うことで何とか終わらせることは出来た。終わった後の朱里はぐったりしていたけれど。

 その次の土曜日は家庭の事情で一日が済み、残る夏休みは一日となった。


 そんな夏休み最後の日に、もういつも通りと言っても過言では無いかもしれない程に訪れたあの世界に、お決まりのメンバーでやって来ていた。



「いやぁ、その節はどうもありがとうございました…」


「いきなりそれか」


 前回の続き、木の中のギルドからスタートした一行は、そのまま何かあるという訳でもなく掲示板の下へと移動する。何も目的が無いというわけでは無いが、クエストはランダムであり目当ての物が確定ではないので、確認とばかりに軽い気持ちで掲示板を見る。

 ちなみに、今更であるが最初の唐突の礼はAkariのよるものである。


「…今日は何する?」


「折角だし自由行動でもする?」


「偶には其れもいいかもね。その場合はまた後で成果でも比べるの?……どうかした?」


 詠は掲示板の内容に一通り目を通し、そしてとあるクエストに目が止まった。其れは基本的な討伐クエストでも無ければ採取クエストではない。しかしそのクエストの名称は以前訊いた事のあるものと同じであった。


「此れってもしかして…」


 詠はそのクエストに手を伸ばし、詳細画面を開いた。すると案の定予想していた通りのものだった。




――――――――――――――――――――――――


試練:【自然の心を感じ取れ】

概要:生きとし生けるものとして、

   意思疎通は忘れてはいけないだろう。

   種族の違いが争いを生むのだとしても、

   分かり合えれば可能性は増える筈だ。


――――――――――――――――――――――――




「なんか演説みたいな事書いてるんだけど…?」


「此れがどうしたの?」


「…もしかしてあの時に訊いたクエスト?」


 内容はどうあれ、此れが従者システムに関するものと思って間違いは無いだろう。以前に出会ったエネミーを従えたミストウェルからの情報とも合っている。報酬についても伏せられているし。


「このクエスト、一人用なんですね」


「げ、これ制限厳しくない?」


 皆が目を通す中、Akariがクエスト内容に記されてる制限を見て少々驚いた。其処に記されている制限、守らなければクリア出来ないその内容というのが、"クエスト中、エネミーを撃破してはいけない"というものだった。

 説明欄に意思疎通と書いているだけあってそう制限する理由が理解できなくも無いのだが、街の外に出た場合はひたすら逃げ続けなくてはいけないという事でもある。

 とはいえ、その辺はミストウェルからアドバイスを事前に受けていたりするので、ある程度解消されるかもしれない。


「それで、受けるの?」


「まぁ折角見つけたことですし……あ、でも一人用だから皆は…」


 気になって詠は皆に確認した。自分たちがやりたいときは別の機会にすれば良いと、一応このクエストは譲ってくれるらしい。

 それと此れを切っ掛けに今日は自由行動という事にもなった。その証拠に好きにクエストを選んで受けている者もいたりする。其れならと詠もクエストを受注した。


「本当に大丈夫なの?内容を見る限り明確なクリア方法無いようにも見えるんだけど」


「その辺りはコツみたいなものがあるらしいから」


「コツ?」


「コツ。」


 コツというより進め方のようなものだけど。

 その為には幾つか必要な物がある。


「それじゃあまた後で合流ね」


 そう言ってわんたんがギルドを飛び出していき、残ったメンバーもクエストだったり買い出しだったりと行うようであり、詠もクエストの為にまずは買い出しへと向かった。





◇      ◇      ◇






 大樹を見ての反応が初々しいプレイヤーたちとすれ違い、謎の懐かしさと既視感を覚えながら道を歩く。その歩みは商店の多いエリアへと向かっていた。


 大陸の中心であろうとセーブポイントにもなる宿屋以外のお店は基本的に必要になる基本的な店の種類の数ぐらいしか無かったりするのだが、人の出入りの多いところでは例外がある。

 此処ではスキル次第でプレイヤー自身が店を開くことが出来るようになるのである。流石に経営規模などに限界はあれど、人によっては余った素材を売ったりする者等も存在するので、レアリティが極端に高いものとかで無ければそこそこあったりするのだ。その者たちの店は共通してNPCのお店に気を遣っている節もあり、此方にないものは彼方にあるという品揃えであったりする。

 …実のところ詠は其処まで把握していないのだけれど。プレイヤーが此処でお店開いている程度の発見と認識だったりするので。


「はいはい、何かお探しですかー?」


 詠が訪れたのは少女プレイヤーが開いている店であった。店の規模は商店というより祭りで開かれる屋台のような感じで、商品も店頭に並べられている。

 ちなみにプレイヤーの店はNPCの店と違って計算や最終的な金銭取引以外はアナログだったりする。実際に商品を並べていたりと。盗難が心配である。


 並べられている商品を確認してみる。見た感じでは取り扱っている物は、調合などを自分で行った自作の品のようであった。恐らく店主の少女がその手のスキルでも持っているのだろう。

 そして都合の良い事に、その中に目的の物に該当するものがあった。


「これは?」


「此れは餌ですね。エネミーに対して撒けば相手の気が引けるので逃げ易くなります。最近ではペットにしている人もいるらしいので、そういう理由でも使えますよ」


「じゃあ、これを」


 一回じゃ終わらないだろうからと、念のために複数買うと、何故か少女に驚かれた。買い占めすぎたかと思ったが、この餌は不人気らしくまだあまり売れていないとのことだった。

 考えてみれば、システムの実装時期からして従者を持っている人はまだまだ少なく、逃げに使うにしてもこの辺りは素早い敵も其れなりにいるので効果が薄いと判断されたのだろう。仕方ない。


 目当ての品を手に入れたのでその店を後にして街の外へと向かおう。整頓がてら改めて購入したアイテム名を確認してみると「惹き付けペットフード(フィニッシュ味)」という名称だった。





……フィニッシュ味!?





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