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電子世界のファンタジア  作者: 永遠の中級者
夏の終わりと蒼乱の大陸
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87 大陸帰路



「ということで、前の大陸に戻ろうと思います」




 フィールドから街まで戻り少し休んだ後、やはりというべきか、一行はそういう行動方針を決めた。別にこの辺りで無理を感じたという訳では無く、レベルよりもスキル面でまだ此処を進むのは早いのでは無かろうかという話になったのだ。

 せんなは既に何歩か先に居るような感じなのでスキルはそれなりの数を持っているであろうが、他の面々は進行に必要な物に限らず、そもそもレベルに比べてスキルが少ない方だろう。(一般プレイヤーのスキル習得速度を知らないけれど)

 なので続きはある程度スキルを増やしてからしようという流れになったのだ。


「まだ大陸の情報が少ない此処より、ある程度進んだ地形の方が動きやすそうだからね」


「殆ど陸地だし」


 此処より以前の大陸は蒼の大陸に比べて、全域をそのままの足で回れるので、どういう行動を取るにしろ、動き易いのは確か。

 そういう理由などで一行は街の中を現在進行形で戻っているのである。と言っても、大陸の間の部分には踏み入った事が無いので戻るという感覚はあまり無いけれど。 



「あれ?戻るのか?」


「ああ。案外スタート地点の方が試し切りには向いてるからな」


「言われてみれば確かにな。んじゃ、そうするか」



 近くには、武器を新調でもしたのか、鞘に入ったままの剣を持ちながら、同じように戻っていくプレイヤーたちの姿があった。その者たちは真っ直ぐに街の端の方へと向かっていく。そして遠くには、その端の方からはまた初めて訪れたであろうプレイヤーの姿もある。そこそこ人の往来のある場所である。


 大陸間の移動が行われる場所は、街の中という事は流石になく、街と隣接した場所にちょこんと存在している。

 その場所は街のカプセルにくっつけるように置かれたブロックのようになっており、その中の空間に大陸移動が出来る場所がある。

 街の端に用意された大きめの扉を通じて、プレイヤーたちがブロック内とカプセル内を行き来している。一行もその扉を使って中へと入っていく。


「そういえば、大陸を戻る為にこういう場所に来るのは初めてだけど、中はダンジョンみたいだね? エネミーが湧いて街に行ったりしないのかなぁ?」


「大丈夫じゃない?それを考慮して扉で区切ってるみたいだし、何よりプレイヤーの往来があるから出現しても対処されるだろうし」


「そうですね。それならあまり街に被害は及ばなさそうですね」


「けどさー」


 隣接する街への被害は無いだろうと、会話をしていると、わんたんが何かを思ったように会話に入ってきた。


「それを敢えて放置して、襲撃イベントとかに発展したり……しないかな?」


「「「あー」」」


 何故かその可能性は否定できなかった。それどころか、言われてみればそれを見越して隣接させているような気がしてならない。ゲリライベントの理由付けとしてはあり得そう。だけど、それをするならもっと広い街でした方がいいのでは?


「…ま、可能性の話をしていてもしょうがないから此れは置いておこう」


「…そうだね。まだエネミーが出ると決まったわけでもないし、したとしても他の場所にでしょ」


 発生しても離れる自分たちにはあまり影響はないだろうと、話を切り上げる。そしてダンジョンに似た薄明かりの洞窟のような道を進む。上からは此処が水中であると思い出させるように水滴が滴り落ちていたりするが、道は人の手が加わったようになっており、どちらかというと坑道と言った方が近いかもしれない。

 そんな坑道で偶に向こうから歩いてくるプレイヤーとすれ違いながら、思ったよりも入り組んでいる道を進む。


「これって…エネミー?」


「…多分ね」


 偶に道の側面に現れる窪みに、特に襲いかかってくる気配も無いエネミーが佇んでいるが、無視しよう。エネミーが少なからず居ることは分かったが今は見なかったことにしよう。

 その後、後ろからエネミーと思われる悲鳴が聞こえたけど気にしないでおこう。先程のエネミーはきっと元気だよ。


「あ、やっと抜けた」


 体感的にぐるぐる回っているような感じだった道を抜けると、其処は採掘途中の現場のような場所だった。流石にツルハシは無いが、砕かれた岩の破片や砂山などが現場の至る所に存在した。そしてその中心部分には砂山などはなく、代わりにボスダンジョンで見たような扉があった。


「大陸を移動するだけあって、この前のアレみたいだね」


「ボスダンジョンの奴? でも場所的なものなのかサイズは少し小さくない?」


「まぁ、既に通った場所に戻るのだから、このくらいなんじゃないの?」


 戻りの扉を見たのは初めてだから、それとしては此れが適正サイズなのかは分からないけれど、ボスダンジョンの扉よりは小さいとはいえ、此れでも数人纏めての移動ぐらいは十分出来るだろうとは思う。


「サイズはどうであれ、これで本当に移動できるんですよね?」


「ええ」


「なら行きますか」


「…ちょっと待って」


 いざ扉に行こうとすると、不意にたんぽぽに止められた。

 何かと思うと、扉の前に居るプレイヤーたちが何やら騒がしくなっている。険悪なムードというわけでは無いようだが…


「だから、さっきのは俺の一撃がだな!」


「あー埒が明かん。それなら、勝った方の物ってことでどうだ」


「言ったな!手加減はしねえぞ!後で後悔するなよ!」


「そっちこそな」


 どうやら喧嘩と言うわけでは無く、何かを賭けて決闘をしようとしているようだ。気付けば、雰囲気に気付いて足を止める人も少しだけど増えてきた。場所が場所なので往来はあれど其処まで増えないだろうと思ったが割と観客がいる。

 というより、今にも決闘を始めようとしている場所が扉の真ん前なので、通るにも通り辛いというのが強かったりする。


「どうする?」


「通るにしても巻き込まれそうだしなー。…まぁそんな急ぎでもないから無理に通ることもないんじゃない?」


「…そうね。じゃあこれが終わった後で」


 急ぎでもないのだから巻き込まれるような危険を冒す必要もなく、静かに決闘が終わるまで待つことにする。他にも同じような観客がいるのだから邪魔さえしなければ構わないだろう。此方は道が空くのを待っているだけなのだから。


 観客に囲まれている二人の意思表示が済まされ、二人を中心として決闘のフィールドが展開されていく。そして宙にカウントが浮かび上がり、それが無くなった瞬間、二人は地面を蹴った。




――――――――勝負!!




 振られた二人の武器がぶつかり、火花が散り、金属の甲高い音が薄暗い辺りに響き渡った。



最後の決闘は観戦です。なので期待はしないで下さい。



報告ですが8月最後となる明日も更新を予定しております。

本編では無く番外編ですけど。

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