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電子世界のファンタジア  作者: 永遠の中級者
夏の終わりと蒼乱の大陸
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77 Aルート 蟹、おかわり入りました

「やっぱり、此処って此奴らのダンジョンなんじゃないの?!」


「確かに頻度は高いよね!」


「いや、固定されてるだけでしょう」


 ズカンと地面を叩く力強い音と共に発生した衝撃を難なく躱し、無難に距離を取る現在戦闘中の『Celesta Sky』の面々。その目の前には記憶にも新しい大きな蟹が立ち塞がっていた。



――――――――――――――――――――――


ジャイアントメタルクラブ / Lv 28 (レア)


――――――――――――――――――――――



 『サークルブルーム』と一度別れた後、一行はもう一つの道へと進んだ。その道では特に変わったことは無く、出てくる敵も少数で今のメンバーでも問題なく処理できた。そして上で訪れたような広い場所に辿り着いた。

 正面奥にはさらに道があって其処から其処から僅かながら光が漏れていた。道中の壁に埋まっていた石も光っていたけれど、漏れている光はそれとは別の感じがする。光り方が違うというか。

 それよりも、この場所に着いた時はなんか既視感があると言うことで警戒しながら周りを見ていたが、特に敵の姿が見えなかった。正面の道の前も開いている。何も居ないのならそれはそれで怪しく思ったけれど、周囲に敵が湧く様子も無かった。とはいえ、嫌な予感は続くので各方面を注意していた。


 なのに、油断した。

 驚きは無かったけど油断した。


 確かに周囲に敵は湧かなかった。だけど――――頭上に蟹が湧いた。


 頭上に現れた蟹は泡を伴いながら落下し、地面に着地する衝撃と共にデバフの泡が散らされる。皆は回避行動が間に合い、落下に踏み潰される事は無かったが、泡に触れてしまった為に能力が下がった状態での開戦となった。


 今目の前に立ち塞がる敵は先程見た蟹と同種ではあるけれど、レベルは此方の方が地味に高い。それ故なのか気持ちその姿がより大きく思えなくもなかったりする。全然うれしくない。


 そして、戦闘が始まってみたものの、このメンバーでは決定打に欠けていたりする。というより打数が足りない。甲羅の無い場所を狙っても先輩以外有効打と言えるものがあまりない。長期戦必須の雰囲気が漂う。


「いっそのこと、また爆破でも…」


「いや、それは待って!」


 巻き込みを恐れたからか止められてしまった。まぁそもそも使えないのだけど。アレはMPがほぼ全快している時ぐらいしか使えないからね。先程使ってから半分くらいまでしか回復していない。…回復すればいい話なのだけど。


「だから待って!」


 冗談でアイテム欄から回復アイテムを出したらまた止められた。其処までトラウマを与えていたのだろうか。冗談だったけどアレぐらいしかダメージ手段が無いんだけどなぁ。


「こっちこっち!―――よし来た!」


「〈スカイグルーパー〉!」


 せんなの上空に風が集まって形成された鳥のようなたちが、蟹の甲羅の無い部分を目がけて次々に飛来する。命中と同時に破裂するように小さな旋風が起こり、複数回に渡って蟹を徐々に後退させていく。


「…タイミングは…ここ!」


 後退してきた蟹の背中に向かって、たんぽぽとわんたんが攻撃を当てる。甲羅に向かっての攻撃だったのでダメージは其程ではないけれど、攻撃が繋がったことで連携が続く。

 それより先程のたんぽぽの攻撃、微かに光が発生していたように見えたけれどスキルをいつの間にか発現させていたのだろうか?


「まだまだ!」


 さらなる連携で、Akariが蟹に迫って刃を振るおうとした。するとそれは光を帯び、いつもとは違う動きへと繋がった。

 その場でAkariが回り始め、それによる連続斬りが蟹の腹付近を三度斬りつけた。アレは以前にも見たことがある。以前決闘した相手が使っていたスキルだ。確か〈ターンスライド〉。Akariの反応からして偶然出たのだろう。そんなAkariを気にする事なく後ろからせんなが跳び上がった。


「〈スパークル・エッジ〉」


 稲妻の如く振り下ろされた一撃が蟹を斬る。大ダメージとはいかなかったが、一撃で発生した電撃が蟹の身体に残って、それが動きを阻害する。さらなるチャンスが訪れる。今のうちに少しでも減らさねば。…とりあえず効果が無くとも出来そうなことをしよう。


 敵が動けないうちにHPを削ろうと皆が畳みかける。


「〈クラック・レイド〉」


「〈ターンスライド〉!」


 詠も気を引く程度には矢を放っている。…ヘイトは明らかに皆の方が稼いでいるけれど、HPは少しずつとはいえ確実に削っている。蟹の阻害が解けても再び雷撃の一撃が迸り再度阻害が発生する。そして追撃のように総攻撃が始まる。それの繰り返し。先とは違って戦力が少ないけれどこの調子なら何とか出来そうではあった。

と思ったら――。



――――ッ! ――――ッ! ――――ッ!



「嘘!?此処でそれ!?」


「湧いたりしないんじゃないの!?」


 蟹のHPを削ることに集中していると、ふと来た道付近から吹き出すような音がした。そちらの方向を見てみると、運の悪いことに別のエネミーが其処に湧いた所だった。こういう状況では他は湧かないと勝手に思い込んでいたがそういうことでは無いらしい。



――――――――――――――


アクアスパイダー / Lv 23

ロッククラブ / Lv 22

アクアプラント / Lv 20

アクアプラント / Lv 20

アクアプラント / Lv 20


――――――――――――――



 兎も角この状況は少し面倒。


「そっちは任せるからこっちを何とか止めてみるわ」


 そう言って詠は足止めの意を込めて追加の敵に矢を次々と放つ。正直向こうの蟹を相手するよりは戦い易い。相性は悪いけどまだダメージは通るからね


「私も手伝います! 〈ライトニング〉!」


 るる。も此方側に加わり、二人で足止めをする。

 正直に言えば、前衛と後衛が分かれてしまっているのが気になるので早めに対処しておきたい。


「あ、危ない!」


 攻撃を撃ち漏らし、対峙していた敵の一体が詠に向かって飛びかかった。詠は咄嗟に至近距離から炎を出そうと手を伸ばしてしまったが、炎が出ることは無かった。それよりも先に通路の方から何かが飛んできて、飛びかかった敵が吹き飛ばされた。


「っっっしゃぁぁぁあああ!!!」


「――フィルメル!?」


 フィルメルの襲撃の後、その後ろから続々ともう一つの道に行ったはずの『サークルブルーム』の面々が現れた。


「やっぱこっちの方が盛り上がってるみたいだな!」


「助太刀いたす」


「大丈夫ですか?」


 状況を予想していたかのような『サークルブルーム』の面々は、状況を確認してから各自戦闘に参戦していく。




・・・・・・。

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