76 Bルート 鉱床
完全な『サークルブルーム』パートですね。
『Celesta Sky』の面々と別れ、横道に逸れた『サークルブルーム』の面々。運任せで決めた道は始めは人一人より少し広いぐらいの幅だったが、次第に広くなっていき、今では武器を振り回せる程の広さにまでなっていた。
続く道の壁には点々と青白く光る石が埋まっていて、それが道案内のように薄暗い中で弱く光っている。
「この石も少しずつ増えてきたな。見やすくなるから良いけども」
「此れは鉱石なのだろうか? であれば採掘出来そうだが…」
「出来るのなら土産にちと頂戴しておきたいが…」
そう言ってゴードンはメニューを呼び出して小さいつるはしをアイテム化させると、コツコツと光る石のある一箇所を叩き始めた。すると叩いていた箇所が少々崩れ、光る石がアイテム化した。
「取れたな」
「はやっ! 相変わらずそういう行動は早いなアンタ」
「別に此処で取らなくても奥に行けば良いんじゃないの?奥に行くほど多くなってるみたいだし、大きいのも増えてきたし」
「ふむ。それも一理あるな」
確かにフィルメルの言う通り、進んでいく程に壁に見えていた鉱石は大きいものが目立つようになってきていた。それはこの先に関係のあるものがあるという証拠なのか、欲を呼び寄せる為の罠なのか。照明が増えるという意味では進む者に有り難い傾向だけれど。
「にしてもさっきの爆発は何だったんだよ。地味に巻き添え食らったんだが」
「ああ、アレは後衛に居た向こうの娘の一人が放ったものだな」
明かりの増えてきた道を進む一行。話題はレアエネミーとの戦闘の終盤で詠が放った爆炎だった。あの一撃には敵どころか味方さえも不意を突かれる形となり、大きくないとはいえ、少なからずダメージを受けていた者もちらほら居る。
「いや、それは状況を見れば分かるわ。あんなのを使えるとは思えなかったんだが」
「確かにの。こう言うのは失礼だが、向こうのメンバーの殆どはレベルはそこそこだが、まだ初心者のような部分があったからな。それまで使っていたスキルも弱いものが多かったからなあ」
「そう思ってたところにアレでしたけどね。確か〈エクリプス〉でしたっけ?」
「ああ。恐らくはそうだ。以前も使っているのを見た事がある」
「アレ、そんな名前だったのか」
メンバーの殆どは知らないようだったが、マリナとシグはスキルに見覚えがあるようだった。シグに至っては集団戦闘で使っていて仕舞いにはそれで自滅したという光景を見たらしい。やはりアレは巻き添えが激しいようだ。今回使った詠の様子を思い出すとそれすら知らなかった恐れがある。
「威力は高いが使い時が困りものって一部で言われていたな」
「あー分かる。アレ狭いとこでぶっ放したら巻き込み確定だもんね」
戦闘の都合上なのかそれなりに開けていたあの場所でさえ、爆発はかなりの範囲を占めていた。通路などですればそのまま自滅もあり得るだろう。
「無意識にフレンドリーファイアとか割と怖えんだが…」
「流石に一度使えば把握するだろう」
などと少し恐怖が混じった会話をしながら歩いていると、道は広いところに出た。
「ほう、こいつは…」
「ほうほう、ちょっと綺麗かな」
「ほうほうほう、…どういう場所だ?」
「ほうほう言いたいだけになってませんか?」
一行が辿り着いた場所は、至る所に青白く光る鉱石が点在しているだけでなく、中央部分に大きな結晶が存在している空間だった。この集合具合からするに、鉱床というものだろうか。
「鉱石の塊はあるが…行き止まりだなこりゃあ」
「正解はあちらであったか?」
「とはいえ、此処も其程外れではないようだ」
そう言ったシグの指す方向には予想通りと言うべきか、鉱石を削り出そうとしているドワーフの後ろ姿があった。その傍らには既に削り出したであろう鉱石が一、二個置かれていた。
「…はやっ」
「てか、削られてから思い出したけどその鉱石、蒼の大陸でも見た気がするぞ?」
そう言った者の他にも鉱石をじっくり見て見覚えがあると思い出す者も数名居た。
大陸毎にテーマと言うべきか、明確な違いがあるように、エネミーや入手し易いアイテムも大陸によって大体は分けられている。だけど一部の場所では先駆けて先のデータが混ざっていることがある。恐らく此処に先で見た鉱石が存在しているということもそういうことなのだろう。
「まだ行っとらんから知らん」
「そういえば予定が合わなくて行ってなかったっけ?」
メンバーの中でまだ次の大陸に行っていないドワーフが言いながらも鉱石を削る。他にも行っていないメンバーは居るが、それらもまた予定の都合で行っていないのである。逆に行ったことがあるのはこの場で四名程だけなのだが。
「好きに動けば良いんじゃないの?」
「お前さん、これで次に行けると思うか?」
「やればできるんじゃないの? ほら、とある偉い人も言ってたじゃん。『ベストを尽くせ』って」
「尽くした先にロストする未来が見えたんだが?」
「逃げるにしてもお二人では速度が違いますからねぇ」
対比する相手以前の話であるが、そんなことにツッコミは無く、鉱石を採掘しながら暢気に会話が続いていく。
「この結晶は取れないのでしょうか?」
「どうやら此れは破壊不可能オブジェクトらしい。無理だろう」
「そうですか」
一番目立つ場所に位置している結晶に触れてみたが、触れるだけで何も起きることもなく、削ろうとしても弾かれるだけ。他とは違ってわざわざ破壊不可能と知らせるぐらいなら何かありそうだけれど、今はただの景色の一部らしい。…と思ったら、調べていると結晶の裏に何かがあるのを見つけた。
「あ、宝箱」
「…確かに宝だな。この結晶はこれを隠すための壁役だったということか?」
その考えも分からなくも無いが、そうしてまで隠したい程のものが入っているのだろうか?二人は宝箱を開けて中身を確認することにした。宝の中にはたった一つだけ小型のケースが入っていた。
「さらに箱?」
ケースを取り出し、それをも開けてみると中に数枚の札が入っていた。
「それは…呪符か?」
「そうみたいですね」
ケースに入っていたのは特殊な武器の一つとされている呪符だった。というより収納できるケースも含めて武器判定なのである。
呪符は最近では最初の武器選択でも選べるようになったらしいが、普及率も認知度も其程高くない。その理由はあまりショップなどで取り扱っていないからなのである。希少武器と言うわけでは無いが、序盤ではまず同武器へと付け替えが出来ない。それは恐らく初心者向けでは無いからだろう。それ故に序盤では扱っていないのだろう。
それがまさかこんな形で拾うとは。
「とりあえず貰っておきましょうか」
誰かが使うかは分からないが折角見つけたのだから回収しておく。
これで、此処は大体調べただろうか。これ以上進めないとなると戻る必要がある。
「皆さん、一度戻りましょう」
「そうだな。これ以上の発見は無いしな」
探索も採掘も切り上げ、一行は一度戻ることにした。どうせ奥に行くなら向こうに行かなければならないし。
――――――――――。
そんな一行の耳に、なにやら音が聞こえた。
「…やっぱ向こうが当たりっぽいな。なんかイベントでも起こしてるんじゃないか」
「まぁ、此方でも発見があったのだから、向こうで何かあっても不思議ではないであろう」
「そうか?…って、おい待てフィルメル」
何かが聞こえてから、我先にと他をほったらかしにしてフィルメルが来た道を戻っていく。
「私たちも一応急ぎましょうか」
一行はフィルメルを追いかける形で来た道を戻り、もう一つの道へと入っていく。
日を跨ぎたくないから急いで終わらせた感。