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電子世界のファンタジア  作者: 永遠の中級者
夏の終わりと蒼乱の大陸
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70 重々しいと思いきや、ただの方針会議だったりします

 入り口でかけられたレツオウの一言により、先程まで緩かったホーム内の雰囲気が少し引き締まったように思えた。そう思わせるように、その言葉を聞いたマリナはレツオウを中心の卓へと進ませた後に壁際に置かれてたホワイトボードのようなを引っ張ってきて、レツオウは静かに椅子に腰掛け、少々だらけていたフィルメルさえも気持ち座り直したように感じた。


「…えっと?」


「…とりあえず場所空けとく?」


 詠たちは唐突な雰囲気の変化に戸惑いながら、なんとなくで席を空けることにした。流石に何も言わずに帰るのもどうかと思うので出て行くことはしないけれど。


「あ、すみません。座っていても大丈夫ですよ」


 何やら準備らしきことをしていたマリナが立ち退いていた詠たちに気付いてそう言った。「用事か有るのならこんな形になってしまいましたが送っていきましょうか?」とも続けられたけれど特に用も無いのでもう少し居座ることにした。聞いてはいけない内容なら居座らせないだろうし、そうしないのだから良いのだろう。……そもそも追い返そうとしなさそうだけどあの人。


 そうして内輪で雑談(たまにマリナを交えて)でもして待っていると次々にホーム内に人が戻ってくる。


「戻ってんのか。ったく、変な手間かかせんじゃねえよ」


「なにを!そっちが勝手にかいたんじゃん!」


「てめぇ…!」


「まぁ落ち着け」


 戻ってきたプレイヤーの一人とフィルメルが喧嘩を始めそうな時に、身長の割に体格ががっしりとしたもう一人の男がそれを制止する。そしてそのままその男は手に何かを持ったままマリナの元へと進んでいく。


「そういえば、こんな物を拾った。何かの役に立てとくれ」


「はい、分かりました」


 その後ろではまだ喧嘩しているような雰囲気だったが、男が先に切り上げて空いている場所へと移動した。


「で、遂に判明したんだって?」


「はい。ですがそのお話はもう少し待ってください。折角ですのでシグさんが戻ってからにしましょう」


 マリナは探しに行ったシグを待つという。メンバーではないと言ってもやはりこのレギオンにとっては仲間には変わりないということだ。そう返された男も特に反感しない程度には仲間意識はあるようだ。

 そういうことで男は案外静かに待つことにしたらしいが、不意に此方を見ては今更のように「誰だ」と問うてきた所、「客です」と答えたら「そうか」と言って話題が終わった。割とその辺には興味はないらしい。


 そういえば、もう一人のプレイヤーは席には座らなかったと思って探してみると、ホームの奥に消えていこうとしているところを発見した。彼方は彼方で待っている間に何かをしておこうという感じだろうか。


「これで全員なのかな?」


「さぁ、どうかしらね」


 とはいえ、これで全員というのは其処まで外れてはいないとは思う。少なくとも現在ログインしているという意味では。


「あれ?」


「どうかしましたか?」


「いや…さっきあの人が二代目って言ってたから、もう一人先代が居るかと思ったけど、もう一人別に居るんじゃ無くてこの中の人が先代だったかもなーって」


「…何言ってんの?」


 急に言い出すから何かと思ったけど、要は頭数に先代を忘れてませんかと思ったら既に先代がこの中にいるかもしれないと納得した訳か。…あまり訳せてない気もするけど気にしない。


 …などと言いながらシグが戻ってくるまでホームの中を観察していた。止められても静かに喧嘩を売っているようなフィルメルだったり、先程の人が雰囲気的にドワーフっぽいなぁとかだったり。暢気なことをしばしば。

 そしてふと入り口の方を眺めようと其方に視線を移したとき、タイミング良く入り口に人影が見えた。


「入ってくれ」


 声と共に入り口から二人のプレイヤーが入室してくる。最初に入ってきたのはシグだった。シグが戻ってきたということは本当に連れてきたらしい。


「おお、遅えぞシグ」


「すまないな。人捜しをしていたんだ」


 入ってきてすぐにそんなやり取りが行われている横で一緒に入ってきたプレイヤー、先輩が此方に合流した。


「…お待たせ」


 随分と落ち着いている、普段通りの先輩だった。

 そして二人が来たのを見て、マリナが「揃いましたでしょうか?」と返事を期待するでも無く言った。今来た二人にはどういう意味かは分からないだろうけどシグは壁際で腕を組み、先輩は空いている椅子に座った。そうしてマリナはいよいよ本題に移った。


「では始めたいと思います」


「あ、その前に」


「何でしょう?」


「これ本当に私らが居ていい話?」


 Akariが確認の意を込めてそう聞くと、折角ですのでという返答が返ってきた。内容がはっきり分かっている訳では無いけれど独り占めしようという意思は無いようだ。

 質問で止められたけどマリナは改めて本題を出す。


「えっと、他の人も居るので振り返りも踏まえて進めようと思います。

私たちのサークルは各自自由に行動する傍ら、最近はとあることを調べていました。」


「とあること?」


「謎解きのようなものだ」


「謎解き?」


 マリナの代わりにレツオウが言う。


「…と言っても確証は無かったのですけどね。この大陸に居る数名のNPCがそれらしい事を言っていただけなので。ですが数名が共通のヒントのようなものを言っていると思ったので私たちは動きました」


「…それで当たりだったと?」


「はい。ですよね?」


「左様」


 恐らくそのヒントを聞いたことが一種のフラグだったのだろうか。それを聞いて調べたことでこの人たちが他の人たちよりも先に隠された場所に辿り着くことが出来たのだろう。


 マリナに応えた後、見てきたであろうレツオウが現れたものの説明に入る。レツオウが言うには、此方に戻ってくる道中に確認を行った時にそれは湖に現れたという。正確にはギミックが動いたと。


「湖って多分さっきのだよね?あそこにそんなギミック隠されてたんだ?」


「気付かなくても当然だろう。絡繰りは水中にあったのだから。それにただ触っただけでは何も起こらないからな。」


 水中。確かに立ち寄りはしたし、水の中を見たりもしたけど、それは一部分に過ぎない。その中にそのようなものが紛れていても一目では気付かないだろう。それに訊けば鍵のような存在を窺える。


「《《湖の上に出現した》》のは間違いなくダンジョンの入り口であった。中まで確認するまで至っていない為ダンジョンの難度までは測れていないが」


「いえ、大丈夫ですよ。当初からどうであれ挑むという決まりでしたので」


 どうやらダンジョンがあった場合の行動を事前に決めていたらしい。


「ですので、これから簡単な打ち合わせをしたいと思うのですが…」


 打ち合わせを始める雰囲気に移行したかと思うと、その前にと言ってマリナの視線が此方に移る。


「今確認しますが、皆さんは参加なさいますか?」


「え、いや、この状況どうすればいいかと思いましたけど良いんですか?」


「はい。実は言うとダンジョンがあった場合は他の人を誘おうかとも考えていたんです。今回皆さんを呼んだのはお詫びの他に様子を見て誘ってもいいかと判断する目的でもありましたので」


 だから追い出すような動きは無かったんだ。判断によっては誘うかも知れないから。


「本当に良いの?私らも参加させて貰って」


「その確認は報酬云々のことを思っての意味ですか?

確かに未踏の場所ということは独り占めという選択肢も無くは無いですがそれは攻略できたらの話です。それよりも成功確率を上げる方が良くないですか?」


 確かに独り占めを狙って少数で挑んで返り討ちにあえば元も子もない。確率を上げるのは分からなくも無い。


「それとこのお誘いはお詫びの続きとでも思ってください。と言っても強制はしていないので選択権は貴女方にありますよ?」


 その選択を前に此方のメンバーの顔を見る。皆否定するような意思は見られない。それなら手伝うことにしよう。 …というかこの流れだと私が選択する流れなのね。


「それなら微力ながら参加させていただきます」


 その返答を受けてマリナは少し微笑んだ後、それではと改めて作戦の打ち合わせを始めるのだった。




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