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電子世界のファンタジア  作者: 永遠の中級者
夏の終わりと蒼乱の大陸
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66 夏の嵐

明けましておめでとうございます?(新元号的な意味で)

一応新章です。といってもそんなに何かがあるというわけではないですが。

劇的に(?)変わるようなことはもう少し後にしておきます。

 気付けば長かったはずの夏休みも残り数日。特に問題も起こらずに課題も予定も殆ど終わらせた。思えばそれ以外だと電子の世界に結構行っていた気もする。毎日は行ってはいないので休みの半分とまでは行かなくてもそれでも三分の一ぐらいはあの世界で誰かと居たような気がする。


「まぁ、あんな世界を実際に体験するとは思ってもみなかったからね」


 どちらかと言えばアナログな人間である凛からしてみれば、最先端な技術に長く触れているということも珍しいことであるのだからそう思うのは当然である。



Pi Pi Pi Pi Pi Pi



 そう思っている間にも近くに置かれていた端末から音が流れる。集合予定の時間だ。凛は端末を拾い上げては、自宅を後にしてあの世界に再び向かった。





◇    ◇    ◇





「あ、居なくなってる」


 ログインしてログハウスからスタートした一行は、人によっては数日ぶりの世界の中で伸びをしながらログハウスの外を軽く見渡して近くで居たはずのNPCが消えていることに気がついた。


「クエストが終わったからではないですか?」


 確かにあのNPCはクエストの中心人物であり、その考えも分かるけど、前回クエストが終了してからログアウトするまではずっとその場に残っていたはずなのだけど、ログアウトしたことで一定範囲内から離れたと判断されたということだろうか。……とはいえ残っていても特に用は無いのだけれど。


「さてと、また行きますか!」


「次はどうしますか?」


 此処に来た理由はクエストで、それももう終わったから現在一行に目的は無い。

 この辺りにはあまり来たことが無いからこのままこの辺りを散策してみるのもいいかも知れないけれど、合流のことも考えて一度中央に戻ってみるのも一つの選択肢ではある。さて、どうしようか。


「ん?なんかあそこ動いてない?」


 そう言われて近くの草むらを見てみると確かに何かが居る。敵かと警戒してはみるが、最悪まだ後ろにあるログハウスの中に戻れば良いのでそれほど危険には思わない。

 そしてそれは次第に草むらから姿を現す。


「……何アレ」


「鹿だね」


「鹿ですね」


「…鹿」


「三票鹿入りましたー」


 鹿でした。


 草むらから出てきたのはそれなりの立派な角を持った鹿でした。…こんな世界だから本当に鹿なのかどうかも怪しいのだけど、聞きたいのは其処じゃない。


「そうじゃなくて!あれはエネミーなのかNPC的なものなのかどうか!」


 見た感じこちらの事は気にも留めていない感じではあるけれど、敵だったら急に来ることがあるからなぁ…


「大丈…夫なんじゃない?」


「そうですね。普通の鹿のように見えますけど…」


 そう言って皆はその鹿に近付いてみては、鹿に逃げられている。本当に現実での鹿と同じ感じである。ああいったのも居るんだね。探してみると鹿以外にも動物が居たりしている。自然が多いから?

 などと気の抜けたことを考えていたが、とりあえず中央方面を向きながら進むことにした。途中で何かあれば其れで良いし、何も無ければ中央に戻る。要は単なる行き当たりばったりである。


「とはいえ、こうも景色が同じだと少し歩いただけで方向を見失いそうになるわ。」


「やっぱりそうなるよねー」


「でも地図を見ていれば何とか分かるからまだマシだって。もしもの時はさっきのログハウスに戻れば良いし!」


 場所と方向は地図で確認出来る上、先程のログハウスの場所も一応マーキングしておいた。これなら何かあれば近い方を駆け込めばいいけど、即逆戻りはどうかと…。下手すれば全く進めないよ、三歩進んで四歩下がるかもしれないよ?


「それはさておき」


「さておくな」


「いいじゃん。

それで、先輩もログインしてるんだよね?」


「そう言ってたからね」


 フレンド欄を見ても先輩がログインしているのは確認出来る。恐らくこちらに向かってきている事だろう。早ければ数十分後には合流できるだろう。とはいえ、場所が場所なので時間がかかることだろう。入れ違いの可能性だってあるから気をつけないと。


「それより…本当に合流できるのでしょうか? 流石に先輩さんでもどの辺りに行ったのかを知らないと厳しいんではないでないですか?」


「それはそうだけど…いざとなればメッセージを飛ばせばいいし…」


「先輩なら本当に来そうだし」


 Akariが続けた言葉にその場の皆が納得した。してしまった。割と無茶ぶりなことでもしれっとしてしまいそうなのがあの人なんです。本当に出来るかどうかは分からなくとも。


 一行は雑談をしながら森の中を進む。道中で出てきた敵は制限が無くなったことで特に問題はない。あったことと言えば見つけた現実寄りの動物に釣られて道が少々逸れたぐらいか。

 そんなこんなでふと、受けていたクエストが終わったのだから何か変化があるだろうかと行きに見つけた人体樹が気になって、寄り道することにした。マーキング機能のお陰でまたこの中から探し出すという苦労が軽減されて有り難い。


 そして、もうすぐ辿り着くであろう頃――


「この辺だったよね?」


「そうね」


「ほんと、どういう意味があるんだろうアレは」


 あの人体樹の意味するものは本当に分からない。クエストを受けていない状態なら何かあるはずというのも只の可能性の一つであって確証なんてこれっぽっちもない。だけど謎が気になるから様子を見に行く。……何処の風変わりな探偵だろうかこの行動原理は。


 そんな彼女たちを電脳の風が背中を押す。


「……風」


 木の葉がかさかさと風の存在を主張する。そして―――風と共に面倒事もやってきた。


 少し立ち止まっていた一行がまた歩き出そうとした時、上空の木々から何かが飛び出した。それは紛れもなく人の形をしていて、真っ直ぐに一行に向かって下降し、その手に光が宿る。



ゥゥ―――――ドシャァ!!



 突如として降り注いだ攻撃が地面に激突し、砂煙を巻き上げる。

 その煙の中で立ち上がる人影が新たに淡い光を帯びたのが見えた……


レベル変動なし

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