7 スキルを求めて*
"スキル"
確かメニュー画面にそんな項目があったなぁ。ゲームにおいては重要な要素のようで此処でも〈術技スキル〉と〈技能スキル〉と二種類に分かれているが、始めたばかりな事もあってまだどちらも得ていない。
「クエストをするなら、せめて何かスキルを使えた方がいいわよ?」
「そのスキルっていうのは、どうすれば使えるようになるんですか?」
「そうね…スキルの会得は色んな方法があるわ。戦闘中の行動がきっかけで発現したり、何かの課題をクリアしたり、誰かから伝授してもらったり様々ね」
「へぇー、本当に様々だ」
「けど、初心者がするなら、やっぱりプラクティスかしらね」
プラクティス…言葉の意味を考えれば結局はひたすら練習ということなのだろうか。
「でもプラクティスと言っても練習しろってことじゃないわ。この街の近くにプラクティスエリアっていう名前の通り初心者の練習用みたいな場所があるのだけど、その奥にスキルを覚えられるアイテムがあるの」
へぇー。やはりスキルは早めに得ていた方が良いのだろうか。其れを思えば一種の初心者支援なのかもしれない。ただ、そんな便利なアイテムがあるのなら、皆が取りに行くのではないだろうか?いや、そのスキルにもよるか?
「へぇー。じゃあそれを使えば誰でもスキルを覚えられるの?」
「えぇ。でもそのアイテムが少し癖があるんだけどね。場所が場所なだけにそのアイテムも初心者用でね、会得スキルが合計三つ以下のプレイヤーしか使えない上に、覚えられるスキルが完全にランダムっていうのがね」
成程。其れなら誰かが独占したりという事は無いだろう。数を越えてしまえばただの荷物になる訳だし。だけど、その制限だと取りに行く途中でスキルが発現してしまえばスキル数が増えて使えなくなると言うこともあり得るのか。此れは完全に初心者向け案件だね。ほんと。
「私たちなら大丈夫そうね」
「まあスキル一つもないからねー」
「じゃあこれから其処に行ってみることにします」
「プラクティスエリアがあるのは街の西の方よ。分からなかったら雑貨屋でマップデータを買うと良いわ」
「ありがとうございます。それじゃあ」
◇ ◇ ◇
「まさかマップデータがそこそこするとはね…」
「買う順番間違えたかな?」
勧められた事もあり、準備のついでにマップデータを確認しようと雑貨屋を探して訪れた。店内には確かに他の消費アイテムと同じようにマップデータが売られていた。其処までは良かったのだけどそのマップが千Fと、装備を買い揃えた後の今の所持金的にはまあまあ高い金額だった。マップデータの内容はスタート地点からネクスとその周辺という、ネクスを当分の活動拠点とするなら充分な内容であった。
「まあ一応方向は教えて貰ったから無くても大丈夫な筈だけど…」
「自分で踏むしかないね。ま、其れも有りだけど」
マップというのものは本来は黒一色であり、自分の足で進むことで自動マッピングが行われて地図が出来ていくという仕組みらしい。その手間を省くのがマップデータを買うという行為なのである。必ずしも必要と言う訳では無い。なので買えない訳では無かったけど、回復アイテムは補充しておきたかったので其方を優先した。
ちなみに言うとマップデータを売るというのは運営ではなくどこぞのプレイヤーの提案だとか噂を聞いた。先人の善意である。
「回復アイテムは幾らか買えたから此れで少しは生存率は上がった筈」
「回復系はあって困らないからね。所持金は殆ど無くなったけど金策すれば良いだけだもんね。またゴールドスライムでも出ないかなー」
「またあの惨劇を繰り返すの…」
個人的にはあんなぐだぐだはもうしたくない。装備が一新されても格上な事には変わりないからね。
「でさあ、プラクティスエリアはまだなのかな?」
「一応聞いた通りの方向には来た筈だけど」
方向としては間違ってはいない筈。その証拠に周囲を確認してみれば、此処で練習をしているプレイヤーも居れば、移動しているプレイヤーの姿も確認出来るのだ。その移動は自分たちと同じように向かっている移動もあれば逆に何処かから帰ってくるような移動も含まれている。
「此処ら辺がもうそうなのかな?じゃあ奥の方に行けばアイテムが有るんだよね?」
エリアと広い言い方をしているのだから既に入っている可能性は十分にある。だけどアイテムらしき影は見当たらない。こんな所にあるのなら他のプレイヤーが群がっているか、既に拾っている気がする。
「奥となると向こうの方にやけに深そうな森があるけど…」
視界が開けていて周りの動きが分かり易いこのエリアでやけに怪しい森が進行方向に見える。雰囲気からして初心者用には思えないが、人の動きを見ていると其処に出入りしている様子がある。他に奥と言える場所は見当たらない。
「行ってみるしかないか…」
「大丈夫だって。この辺りが練習用のエリアなら危険な場所を近くに置かないでしょ……此処の運営の事知らないけど…」
確信は持てないまま自分たちも其処に向かおうとした。だけどその前に対応しなければならない事が出来た。
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スライム / Lv 2
ブルースライム / Lv 3
イエロースライム / Lv 4
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これはまた新色を増やしてまあ。
数は兎も角としてレベルとしては近い分まだなんとかなるだろう。スライム系の動きも数回見ているので行動は読み易いだろうから弓矢の練習には良いかも。
腰の筒から矢を一本取り、弓を構えて手元に添える。この矢は弓に付属されてたもので、弓と矢、あと矢を入れる筒を合わせて一つの弓武器という仕様になっている。弓の付属品の矢という扱いだが、無くなれば弓とは別で補充しなければならないらしい。少々面倒である。其れなりの数はあるとはいえ慣れないうちは消耗が荒いのに。
現実で経験はないがイメージの見様見真似で放たれた矢は真っ直ぐに風を裂いた。そして奥に居た通常色スライムに突き刺さった。本当は横に居た青いスライムを狙ったのだけど、其れでもゲーム仕様により初めてでも意外と遠くまで射ることが出来るようだ。
「ズレたけどHPゲージが四割程減った…これなら結構戦えるかな」
「おお、じゃあ私も…っとと…」
ふらふらだけど大丈夫なのだろうか…。
その心配とは裏腹に、Akariは大剣の重さで右に左にふらふらしながらも、その重さを逆に利用して遠心力の要領で薙ぐという形で通常色スライムを撃破、青スライムのHPを大幅に削った。…狙ったのだろうか?
「意外となんとかなったー…にしても結構重いんだけど!」
狙ってないね、これは。というか、アンタさっきまでそれを背負ってたんでしょうが。
そんな事よりも戦闘に戻る。今の攻撃でHPが大幅に減ったから其処を狙ってもう一度矢を射る。今度こそよく狙い、なんとか青スライムも仕留めた。此れであとは黄色スライムだけね。今の状態なら簡単そうね。
【スライム etc. を倒した。115EXPを獲得しました。】
【☆レベルアップ☆ ポイントを振り分けることが出来ます。】
と、あっさり終わらせてレベルアップ。
まだ狙いに慣れなかったり射るまで少々時間が掛かるところはあるものの、支援としては悪くない。とはいえ誤射の心配はあるから油断は出来ない。短剣の練習もしないとなぁ…
「ん?あれなんだろ?」
Akariがとあることに気付いた。Akariが見る先には入り口のように不自然に開かれた木々が存在した。言うなれば植物のゲートだ。今も其処に他のプレイヤーが入っていく。
「プレイヤーが入っていくところを見るに、あそこから進入しろって事かな?」
「じゃあ私たちも…」
などと言っていると…
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ブルースライム / Lv 3
ブルースライム / Lv 3
ブルースライム / Lv 3
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……またですかぃ。
ステータス
未所属
詠 / 狐人
Lv 4
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―――
HP: 75 (HP+150) / MP: 150
STR(攻撃力): 7 (STR+16)
VIT(耐久): 9 (VIT+10)
INT(知力): 17
MND(精神力): 20 (MND+5)
DEX(器用さ): 15
AGI(素早さ): 26 (AGI+10)
LUK(運): 14
BP : 3
装備
「ノーマルアロー」(STR+8)(重複)
「ノーマルダガー」(STR+8)(重複)
「旅立ちの帽子」(VIT+5、HP+50)
「旅立ちのシャツ」(VIT+5、HP+50)
「旅立ちのロングスカート」(MND+5、HP+50)
「ノーマルブーツ」(AGI+10)
ステータス
未所属
Akari / 鬼
Lv 4
―――
―――
HP: 150 / MP: 75
STR(攻撃力): 20 (STR+15)
VIT(耐久): 17 (VIT+20)
INT(知力): 12
MND(精神力): 14
DEX(器用さ): 16
AGI(素早さ): 15 (AGI+5)
LUK(運): 10
装備
「ノーマルブレード」(STR+15 AGI-5)
「ノーマルシャツ」(VIT+10)
「ノーマルズボン」(VIT+10)
「ノーマルブーツ」(AGI+10)




