58 次なる目標
別の日。
事前にある程度予定を合わせてログインした詠たちは修練島から翠の大陸へと戻るために、往復チケットを使って移動艇の中で発進までの時を待っていた。
「それにしても、今日は先輩抜きで進めるのかー。いいのかな?」
「一応許可は貰ってるけど?」
今回は先輩は欠席である。
本当なら大丈夫だったはずだけど、急に予定が入ったとのこと。
そのことを連絡してくると同時に「気にせずに進めていていい」ということも聞いているので、今日はそれに従って自由に進めておく。
「それと、ある程度進めても追いつける範囲だと思うから、ってことも言ってた」
「先人ぱねぇ…」
まぁ、先輩の予想通り、移動に関しても攻略に関しても今の範囲なら何処へ行ってもすぐに追いつけるだろう。
それどころか先輩が相手なら、追い越すどころか逆にこちらがまだ追いつけていない疑惑だってあるのだけど。
「…それで、戻ってどうするの?」
「うーん、一応は技能スキルを探そうかなぁ…って思ってはいるけど」
クエストで技能スキルを得られることは聞いた体験談とかで実証されている。なので今回はそれを目指していくことにしたのだ。
クエストで得られると聞いた技能スキルは今のところ三つ。
以前に決闘などの交流があった二人が使っていた双剣を使えるようにする〈二刀の心得〉と格闘が出来るようになる〈体術〉。あとはクーガのようなエネミーを従者とすることが出来るスキル。
「スキルを探すって、何か候補があったりするのですか?」
候補と言うよりは行き当たりばったりというか。
ミストウェルに教えてもらった従者のスキルは、最近増えたシステムなので先輩も持っていないだろうからこれはまたの機会にしよう。
そうなると〈二刀の心得〉と〈体術〉が目的となる。詠的には〈体術〉を取っておきたいところだが、そのクエストがあるかどうかがまだ分からないので、クエストが見つかった方から挑戦することになると思う。
一応そのことを言ってみた。
「あー、そういえばそんな事があったね。そうか、あの二人が使ってたスキルかぁ。すっかり忘れてたよ」
「確かにあれは持ってて損は無いと思うな。というか欲しい」
「私にはあまり必要ないと思いますけど…」
まぁ、後方専念のるる。には近接関係と言えるこの二つは必要ないかもしれない。護身用として〈体術〉くらいは持っていても良い気はするけど。
…というか後方のことを言ったら詠も必要無いようになってくるが、詠は先の決闘の後から地味に近距離で魔法を使ったりする暴挙も増えてきているので、あった方が良いのである。
とそんな時、スキルの話をしていた為か、ふと思い出したかのように話題は切り替わった。
「そういえば…本当に私で良かったんでしょうか?」
「あれ? まだ使ってなかったの?」
そう言われたるる。の手には見覚えのある巻物のようなアイテムがあった。
これは詠とAkariが以前使ったことのある同系統のアイテム〈秘伝の書"序"〉のランダム習得とは違い、決まったスキルを獲得できるものである。
何故そういった物をるる。が持っているかと言うと、勿論買ったからである。
皆がダンジョンでメダルを集めてきたお陰で交換が可能となっていたので、使い道を考えた結果、折角だからと交換したのだ。
今回集まったメダルは3枚。
交換可能なものの中で、初級の中の初級と言えそうな効力の低いものなどは必要なメダルが1枚だったので、3人に1つずつスキルを増やすことにしたのだ。(ただしお金はそこそこかかる)
そして増やしたのは、Akari、わんたん、るる。の3人である。
詠たちはメダルを入手できなかったので遠慮し、せんなに関しては必要ないので、この3人ということになっている。
「そういえばるる。はどのスキルにしたんだっけ?」
そう訊くAkariは既に巻物を使っており、勿論剣で使えるスキルを増やしていた。
結局どれにしたのかまでは把握していないが、応用としてなのか?基準の武器以外に他の武器で使えるスキルもあったりしたのでその辺りを選んでいそう。
「確か、回復系じゃなかった?」
続くわんたんも既に巻物を使っており、こちらもAkariと似たようなものだった。
なんというか、武器の系統が似ているからか、方向性がAkariに似てきたなぁ…
「あ、はい。メンバーで回復術を使う人があまり居ないみたいだったので…」
パーティの事を考えて選んでくれたらしい。
実は言うと先輩も回復術を持っていたりするけど、回復役が増えるのは有難い。
るる。が選んだスキルは回復術。それも初級の割に持続回復だった気がする。初級でそんなのがあるんだと思ったけど、回復量はあまり多くない感じだったのでそちらでバランスを取っているのだろう。だけども少しとはいえ回復するのなら良い。
そんなこんなでスキルの話をしているとアナウンスが流れる。
【まもなく発進致します】
「どうせすぐに到着するんだろうけどね」
はい、それは分かってても言わない。
さて、目標はスキルのクエストを探しにまずは集落大樹!
あるかどうかも分からないけど、頑張っていこう。
レベル変化なし