51 修練島
あけましておめでとうございます。
今年もぼちぼち進めていきます。
【修練島に到着しました。お降りの方は―――】
転移による移動で移動艇はあっという間に目的地へと到着した。船と岸を繋ぐ橋を渡ってプレイヤーたちが降りるとそこはまた別の大陸である。
「おお、これが修練島かぁ」
船を降りてAkariが真っ先にそう言った。Akariには悪いけどまだ入り口に立ったぐらいである。今はまだ翠の大陸の乗り場とそれほど景色に違いはない方である。
近くにあった掲示板によると、此処から少し進むと、各修業の場に行けるエリアに入るらしい。つまりまずは進まないと始まらない。
「ん? 他にも船あったんだ?」
言われて振り返ると、詠たちが降りた場所とは違う場所にも色の違う移動艇が止まっており、其処からもプレイヤーが降りてきていた。向こうで乗る時にあのような色の船は無かった。…確かこの島には何処からでも入れたんだったよね。どうやら他の大陸からの移動艇も必ず此処に来るようだ。
他のプレイヤーたちが案内に従って乗り場を出て行くので、詠たちもその通りに進んでいく。するとそれほど歩くことなく次の場所へと辿り着いた。
大きめの掲示板や幾つかの商店のある大きな広場。そしてその周りに点在しているダンジョンのようなもの。此処からが修練の場だと分かる。
「何かいっぱいあるけどアレで修業するのかな?」
「…そうみたいね。この掲示板に説明が書いているわ」
広場に分かり易くでかでかと設置されている掲示板にはこの島で利用できるものの説明が記されている。
それによると、今居る広場に存在している商店は他の大陸の店とは違って回復アイテムなどが売っていない代わりに、スキルを売っているという凄い店だという。ただしスキルを買うにはお金以外にこの大陸で手に入る物も少量必要らしい。そう簡単には手に入らないようにしているようだ。簡単に手に入らないといっても、それを一番必要としていそうな人は、購入するお金すらあまり無い気がするのだけど。
「あ、本当だ。スキルが売ってるよ」
…って、早っ!?
勝手に行ってしまったので、無理に引き戻すのは面倒ということで説明を一旦置いて自分たちも商店の内容の方を確認することにする。
いらっしゃいませという店員の声と共に商品一覧のウインドウが表示される。直接一覧が表示された。何故かこちらから売ることが出来ない。
「一番安いのでもそこそこの値段するねー」
「それに加えて変なメダルも必要だし」
確かに安い物でも他所の回復アイテムよりも値段が張る上、見知らぬメダルを1~3枚程度必要としている。このメダルがこの大陸で手に入るものらしい。
売っているスキルは術技スキルが殆どで一覧の下の方に技能スキルが少しある程度だ。
「一応、どの武器で使えるスキルなのか分かるようになってるのね」
「じゃないと、間違えて買ったら勿体ないじゃん」
「別に全てが勿体ないというわけではないと思うんですけど……」
売っているスキルは武器別で結構ばらけてるのね。それにしても内容を確認できたから直感的に分かったけど、売っているスキルは殆どが初歩的な技もしくはその少し先ぐらいのレベルの技だけだ。例として先輩が使っていたスキルは此処には一つも無い。
考えてみればそうか。初心者にいきなり強いスキルを渡すわけにもいかなかったりしそうだからね。そうなると上級者の人たちは利用したりするのだろうか?
「ん?」
などと考えながらウインドウをよく見てみたら上の枠の辺りに謎の数字が書かれていた。どういうことだろうか?
「それにしても、此処で買えるようになったのならスキルの習得も楽になるね」
「…その代わり出費が激しくなるけど」
「それに初級スキルだけに限定しても此処に全部がある訳ではないわ」
という事らしい。
つまりアレだね。出費する代わりに確実に狙ったスキルを得られるこの方法か、出費はないけどランダム性が高くていつ増えるか分からない此れまでの方法か、ってことね。どちらが良いかはその人次第。あ、アイテムによる増やし方もあったね。以前のアレもランダム性があったけど。
全てにメダルが要求されていて今は買える物が無いので商店についてここまでにして、掲示板の説明に戻ろう。
次に一番重要とも言える周囲にあるものについて。あれは予想通り全てダンジョンだという。さらに言うとこの島で敵が湧くのはダンジョンの中のみだけらしい。つまりダンジョン内以外は全て安全圏のようだ。
そんなことはさておき、全てのダンジョンは普通と仕様が異なっているという。修練島特有の仕様となっており、ダンジョン毎に特定のステータス能力が設定されており、敵の特定の能力が上がっている代わりに、プレイヤーもダンジョン内で経験値を稼いだり、レベルを上げたりすると、その際に特定の能力が伸びやすくなると言う。その他にその手の能力を底上げするアイテムも手に入るらしい。底上げするアイテムと言ったらエレメンタルオーブだろうか? ……そういえば特典で貰った透のオーブはまだ持ってるけど、ボスダンジョンで手に入れたオーブってどうなったんだったかな…?
ともあれ、此処の修練は能力の一つを狙って上げることが可能のようだ。だからと言って一つに限らなくても、順番に回って行けば全体を上げることも出来そうだ。
「んじゃまあ行きますか。この島はダンジョンがメインだけど皆はどうする?」
「能力を優先して上げられるんでしょ? じゃあみんなで行くより、それぞれ上げたい能力の所を行った方が良いんじゃない?」
ここで提案されたのは自分の上げたいものを優先するということ。少し不安があるけど、それはそれで個性が出る。問題はダンジョンの難易度だけど誰でも来れるのならそれほど高くは設定していないだろう。
まだ心配はあるもののその提案を飲み、皆は自分のステータスを確認して上げたい能力を考え始める。意識して上げるにしても、長所をさらに伸ばしたり、短所を補ったりとやりようはあるのだ。
そして決まったのが―――
「じゃあ私らは先に行くから」
「それじゃあ後でね。何かあったらメッセージ飛ばすからー」
同じ選択をしたAkariとわんたんが先にダンジョンへと向かって行った。
自由に決めた割には三つの班に分かれるという結果になった。
まず先に行ったAkariとわんたんはSTR、攻撃力を上げることを選んだ。Akariに関しては長所を伸ばすという選択だろう。
二つ目の班は詠とたんぽぽ。比較的素早さが伸びやすい獣人である私たちは、それを避けて別の能力を選択した。それはVIT、耐久面である。たんぽぽは攻撃面は接近武器に頼る故、私は伸びが良いMNDに対してVITの伸びがよろしくない為、である。
そして三つ目の班は―――
「よろしくお願いします」
「ええ」
先輩とるる。である。二人はMPを優先することを選んだ…と言うのは少し違うか。MPを選んだのはるる。であって先輩はそれに付いて行く形である。
るる。は武器を変えて接近型になった他二人と違って魔法を主としている為、その使用回数を増やす目的でMPを伸ばそうとしたのだ。そして先輩はというと……心配だからと同行するのである。
「それじゃあ私たちも…」
「そうだね。行こっか。
それじゃあ先輩、そっちは任せました」
「分かった。」
「それではまた後で~」
先の二人に遅れながら詠たちもそれぞれのダンジョンの方へと歩き出していった。少し不安はあったけど二人ずつなら何とかなるかな。
…努力値?