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電子世界のファンタジア  作者: 永遠の中級者
第二の舞台 翠の大陸
47/237

番外編 〈サイバース・レーシング〉3

三回目ですよ…

「うがー。後ちょっとだったのに」


(…そうだったかなぁ?)


 レースを終えて、受付の前へと戻って来たAkariが唸った。

 正直、一位になった人の運転は安定していた上に慣れているような感じがあったので、ミスしたとしても勝てたかどうか怪しいところである。

 まぁこのモードでは何位を取ろうとポイントが発生したりはしないので、そこまで勝ちに拘る必要もないと思う。それでも楽しむことは出来るから。…プライドが邪魔をするのはしらない。


「ぐぬぬ…なら次だ!」


『いらっしゃいませ。こちらはフリーモードの受付となります。バトルモードはあちらとなりますがお間違いないですか?』


 Akariがまたすぐに受付にしようとしている。

 そして今回は先程とは違って【マルチ】を選択する。てっきりリベンジの為に【シングル】でもするのかと思ったら違った。

 【マルチ】を選択すると、次に何かの名簿が現れた。その一番上にはAkariの名前が既に記載されている。【シングル】では無かった項目だ。Akariがすぐに自分の名前の下に私のアカウント名を入れて次へといく。どうやら【マルチ】と書かれているが要はチームのことらしい。

 さらに次の選択肢で【ビルドレース】を選択した。先程とは真逆の選択である。


『【ビルドレース】ですね。説明は必要ですか?』


「はい」


『ではご説明します。

フリーモードの【ビルドレース】は、まずレース前にプレイヤー自身がご自身の乗るマシンを時間内に作って頂きます。こちらはフリーモードなので使えるパーツは始めから一部を除いて解禁しております』


 訊いていたら、使えない一部はバトルモード用の物の為、フリーモードでは使えないとのこと。

 さらに質問したら答えてくれたのだけど、バトルモードでも【ビルドレース】があるらしいのだが、ルールが少々異なるらしい。その辺は自分のマシンを使うことが前提のレースだからなのかな?


『他に質問はございませんか?』


「あ、じゃあもう一つ。

チームの場合は役割ってどうなりますか?運転手とかエンジニアとか」


『その場合はどちらもが運転手でありエンジニアということになります。レースの際は人数分が乗れるマシンを作らなければなりません』


「作れなかったら?」


『走れないことはありませんが、ペナルティが発生しますね』


 つまり二人で扱うマシンを作れと。

 ペナルティについて訊いてみたが教えてくれなかった。なんでよ。


 とりあえず、一通りの選択を終えてから、案内に従って近くの扉へと向かうことにする。

 扉に入ってガレージへと移動する。今回転送された部屋はガレージではあったが、先程のレースとは違い、製作場所が宛がわれているだけでガラガラだった。マシンどころかパーツの一つも置いていない。いや正確にはあるけど、あるのは別チームが作ったマシンになる予定のものだけ。



【残り00:28:58】



 時間はまだまだある。他の場所では少しずつでもマシンを組み立て始めている。

 ちなみにここはマルチ用に組み分けられているのでソロはおらず、どこのチームも少なくとも二人以上で作っている。


「とりあえず作り始めようか」


 他のチームの動きを見ていると、宛がわれた範囲の両端にある端末を触っている。どうやら端末を使って製作するらしい。

 なので、同じように端末に触れてみる。すると、電源が入って目の前の景色を切り取ったかのような画面とその横にいくつか別のウインドウが開く。

 横のウインドウをスクロールしてみたけど、どうやらこのウインドウがパーツ一覧らしい。項目別なので分かり易い。どう使うのかと動かしていると、画面内の場所と同じ場所に透け透けのスケルトンのパーツが出現した。タッチしてスライド するとその場所にパーツを出すことが出来るらしい。スケルトンパーツは配置がまだ決定ではないからか、手で触ることもできない。これはこれで後で修正がしやすい。


「おお、変なパーツ」


 そう言ってAkariが出現させたのはアームだった。……アーム?


「いや何で!?」


「え?」


「え?じゃなくてなんで腕よ!」


「面白そうだったから」


「まずは基礎を組み立てなさいよ…」


 間に合わなかったらペナルティなんだから…

 とはいったものの、パーツ一つ選ぶにしても簡単ではない。何故ならパーツ毎にステータスのようなものが存在するしコースの向き不向きも存在する。例えば、タイヤ一つでも重い物や軽い物、砂地向きだったり水辺に弱い物などがある。適当に組んでもいいけどその場合は予想外の事態が起こりそうで怖い。


「あ、これ別にその場所に付けなくてもいいんだ」


「だからって何処に付ける気よ…」


 悩んでいたらAkariが小型ロケットを出現させて(そんなのもあるの…)、先程出して置いていたアームに持たせた。ちなみにマシン予定場所の何処にも接していないので地面から生えて来た腕がロケットを持っているという謎の建築物が誕生してしまった。……あ、消せた。出した本人じゃなくても消せるのねコレ。


 って、そろそろ本当に作らないと。遊んでいる間に十分程が経ってしまっていた。まだ何も決まってないのに。

 とりあえず骨組みから簡単に作ろう。基本的なものを作るだけ作って後から帰ればいいのだから。それなら一応は間に合うはず。


「Akari、適当にタイヤでも付けておいて。こっちは上の方を簡単に組んでおくから」


 っとと、そういえば二人乗り用にしておかないといかないんだっけ。

 えっと座席は…あったあった。だけどこれどう配置しよう? 座席があったのはいいけど、当然と言うべきか二つセットになってるものは無く。一つずつ配置するしかない。


「座席だけど、どう配置する?」


「座席?うーん、一列に並べとけば?」


 じゃあそれで。

 というかそこは助手席として横に並べるんじゃないのね。


「あ、これエンジンも決めないといかないんだ。じゃあこれ置いとこ」


 徐々に組み立てられていくマシン。バランスなどは今のところ考えていない。

 たまに混ぜられるAkariのはっちゃけた選出を拒否しながらも一応は形になった。後は再調整と改良かな。


「……後は好きなもの付けて良いよ。私も調整するから」


「はーい」


 とは言ったものの、早速出してるその大きいのは止めなさい。絶対誤爆するから。


 時間はあと少し。それまで微調整をする。

 より良いと思ったパーツを出しては既に出しているものと入れ替えていく。その間にAkariが変な物を付けたりしていたのを半分ほど却下する。どう考えてもアーム四本は邪魔だった。

 

「とりあえずはこれでいいか。残りも後二分か…

Akariの方は終わったの?」


「もうちょっと待って。これ付けたら…」


 そう言ってAkariは内部に何かを付けている。後付けしたパーツを操縦するための部品を取り付けているらしい。ああいうのもちゃんと自分で付けないと扱えないとは細かいなぁ。


『まもなくビルドタイムが終了します。

皆様、直ちに製作を完了し、レースに備えてマシンに搭乗してお待ちください』


「…だって。」


 残り一分となると流れるアナウンスを受けて、詠は製作完了しようとする。だけどその前にAkariの取り付けの待つ。


「よし、多分これでオッケー」


「それじゃあ押すよ」


 完了を選択すると、今迄実体が無かったマシンが一瞬で実体化した。

 二人は急いでマシンに搭乗する。他のチームも既に乗り込んでいた。


ビーーーー!


『時間となりました。ステージセレクト後、レース会場へと転送を開始します』


 その言葉の後、大きなルーレットが現れてレースの舞台を決め始める。

 ルーレットが止まったのは―――薄い土色の景色…砂漠?


 そして次の瞬間、その示した場所に転送されていた。


『今回のステージはデザートサーキット3となりました。こちらのステージは周回が無く、案内を頼りに離れた場所にあるゴールを目指すという形となります』


 コースの周囲は一面砂と岩壁となっていて、コースの上にも少々砂が飛んできている。砂に埋もれている場所もあるけど道なりに沿って行けばなんとかなりそうではある。

 それにしても…


「ゴール何処?」


 時折吹く砂風を抜いてもゴールらしきものが見当たらない。一体どこまであるのだろうか…?


『それでは十秒後スタートのカウントを開始します。皆さま準備をしてお待ちください』


 それを聞いて、周りのマシンがエンジン音を鳴らし始める。

 詠たちが乗るマシンも運転手であるAkariがマシンを起動させる。

 二人の役割配分はというと、Akariが運転に専念して、詠がそれを後ろからサポートということになっている。なので詠が乗っているマシンの後部座席付近にはその手の設備をのせてある。


「ねぇ、私の方が操作内容多くないこれ?」


「何とかなるって。…それより始まるよ―――」


 Akariが言うようにスタートラインの上空ではいつの間にかランプが出現していて光を灯している。



――――ピ



 何とかなるって言われてもイマイチ分からないんだよね。Akariが興味本位で付けたものばかりだし、説明書がある訳でもないし。



――――ピ



 とりあえず、このモニターぐらいは付けておかないと…どう付ければいいんだろう……あ、なんか触ってたら点いた。



――――プー!!



「GOぉおおおおお☆」


「あ、ちょっ!?」


 スタートと同時にAkariが思いっきりアクセルを踏み込む。急な加速をするものだからその反動で頭打ったんですけど…。

 Akariはそんな後ろの状態など気にすることなく、さらにスピードを上げていく。


 スピードが安定してから現在の状況を確認すると、全チームがスタートダッシュに成功したものの、勢いがつきすぎて早速コース外の砂に突っ込んでいるチームが存在する。そのチームがそのまま砂で足掻いているところから察するに別にアウトになったりはしないようだ。かなりのタイムロスになるだけで。

 自分たちの前方には五チーム。それぞれが砂に突っ込まないように気を付けながらコースの真ん中辺りを走っている。


「あー、邪魔!走りにくい! 詠、撃っちゃって!」


「撃つって何よ!」


「そこに付けてるはずのミサイルぶち込んで!」


「そんなもの何時の間に付けたのよ!?」


 まさか最後の方にマシンの左右に付けてた箱型って迎撃ミサイルか何かだったの!?

 全部目を通していた筈なのにこれ知らないんだけど!

 ちなみにミサイルポッドの下にもう一つずつ箱型のものがあるが、これはロケットである。そうです、ブーストです。付けたときは少し悩んだけどすぐには使えないらしいので何となく放置していた。


 あー、これか。

 ミサイルの操作に使うと思われるパネルを発見して、準備をしてみる。

 モニターと連動しているらしく、パネルを取り出すとモニターの中央付近に十字型のカーソルが現れ、こちらの操作に合わせてそのカーソルが動く。


「ぱぱっとやっていいよ!」


「……ぱぱっとっていうけどまだ撃てないみたいよ」


「嘘!?」


 本当。

 十字カーソルと共にモニターに何かのゲージらしきものが現れており、今それは空を示している。どうやらこのゲージはエネルギーのようで、それが空のままでは何度射出を試みてもミサイルは出なかった。

 念のために他にも付いているものをAkariに訊いてから確認してみたが、それら全てにゲージが存在し、同じように零を示している。


「どうやったら使えるのさ!」


「訊かれましても…」


 そんな時、コース上に何やら光るものが現れ始めた。その光は一つだけでなく、多くは無いが所々一定間隔毎に出現している。

 障害物かと思ってそのままその光を観察していると、一台のマシンがその光へと突っ込んだ。マシンは何の影響も無く、光はマシンに吸収されるように消えていった。


「……?」


 障害ではない?

 他にも見ていると先程のチームのように光に向かっていくマシンがある。そしてそれらも光を吸収する。


「Akari、次にコース上に光を見つけたら取ってみて」


「ん?」


「いいから」


 そう言うとAkariは分かったと言って、光を見つけると他のマシンよりも先にそこへと走っていく。そしてその光にぶつかる。


「……」


 結論から言うと増えていた。

 ゲージの中のエネルギーが少量だけ増加していた。ゲージは全て共通らしく、全てが等しく同じ量を表示していた。


「多分だけど、あの光を取っていけば特殊機能を使えるみたいね」


「え、マジで!?」


「証k―――」



――――――――ゥゥ―ドォン!!



「何事!?」


 証拠はないけど、と言おうとするよりも先に、マシンのすぐ近くが突然爆ぜた。

 不意の事だった為に、それによってコントロールがぐらついてしまい、思わず砂地に飛び込みかけ―――たところを辛うじて耐えた。


「…後ろからの攻撃らしいわ。

というかそんな直接的な攻撃ってありなの!?……同じく積んでる時点で分かってたけどっ…」


 このビルドレース、パーツが色々あった時点で察していたけど、練習とかとは違って本当に何でもありなのね!その所為で血で血を洗いそうな展開がすぐ近くまで来てるんだけど!これ本来はレースなんだよね!?


「ここからが本番ってことだね!」


「……なんか嫌な予感」


 Akariはそう理解すると同時にさらにスピードを上げる。

 後ろではまたもや地面が爆ぜる音がしているが、別にこちらを狙っているという訳ではないようだ。…にしても、後ろが賑やかになってきたんだけど。どれだけエネルギー持ってるのよ…。




 それからもマシンはコースの上をキープしながら進み、スタートからもうすぐ十分程が経とうとしていた。

 上位陣はエネルギーを取ってもそれを温存してテクニックでキープし、下位陣はエネルギーが溜まるや否や上位に向かって攻撃を放っている。

 その間にいる詠たちは躱すだけでも一苦労で、コースアウトギリギリを走りながらなんとか順位に喰らい付いている。


「…結構走ったよね。ゴールはまだ?!」


「見えてこないのならまだなんじゃない―――左後ろから攻撃っ!」


「はいはい!」


 後ろから飛んでくる爆撃を回避しながら、ゴールはまだかと前方を探す。

 すると、コースの前方がカーブとなっており、上位陣はそのカーブを曲がって岩陰となっている方向へと走っていく。

 そのカーブを曲がると、直線コースの遥か先にゴールの模様が確認できた。


「あった、ゴール!」


「それじゃあラストスパート!」


 残りは直線と分かるとAkariは遠慮なくアクセルを踏む。ついでにブースト準備の指示も出してきた。

 そしてそれは他のチームも同じで、カーブを曲がり切ったマシンから獲得したエネルギーを発散させていく。後ろからロケットによるブーストで急加速をして追い抜かしていくチームも居れば、攻撃が激化し出すチームも居る。


「詠、こっちもロケットブースト!」


 溜めたエネルギーは五十%弱。一回の使用でどれだけ消費するかは分からないけど、出し惜しみする理由は無い。


「それじゃあ―――いくよ!」


 マシンの進行方向に誰もいない道が出来た一瞬を狙ってロケットを点火。マシンは急激な加速をしてみるみるうちに前に居たマシンを抜き去って行く。

 だが、それでも一位になるには足りない。

 ロケットによる急加速が終わり、エネルギーはまだ残ってはいるが、もう一度使おうにも連続で使用することはできないらしく、ロケットブーストは時間を置かなくてはならない。


「追い付けない!

こうなったら……詠、ミサイル!」


 …言うと思った。

 仕方ない。最後の賭けとでも思って放ちますか。


「狙いは?」


「正面!」


 Akariのリクエスト通り、正面を走っているマシンに狙いを定めて、残りのエネルギーを攻撃に回す。

 発射したミサイルは全て躱されたが、着弾と同時に発せられた爆風が他のマシンを襲う。……なお、自分たちにも。


「やばっ!?」


 ちゃんと道を開けるように放ったはずだったのだが、爆風が予想外の規模に拡大した為に、巻き込まれる形となった。

 だけど運が良いことに、両側から爆風が来たことが逆にバランスを安定させる結果となった。


「このまま行けるか!?」


 エネルギーは使い切った。正面に居たチームはバランスを崩された為に僅かながらスピードが落ちた。この状況ならまだ可能性はある。Akariは荒れる風の中を強引に突き進む。

 そして風を抜け、誰よりも先にゴールへ――――と思いきや


「これで―――」


「後ろから何か来るよ!」



――――――ォォォォォオオォォォォォ―――――!!



 詠たちがゴールに入ろうとした途端、無茶苦茶な速度で真横を何かが通り過ぎてゴールの向こうの砂へと突っ込んだ。

 詠たちはゴールを過ぎた後、マシンを止めて通り過ぎたものを冷静に見た。それは抜いたはずの上位陣の中にいた一チームのマシンだった。


「これってまさか……」


「そのまさかね。最後まで隠し玉を持ってたってことね」






◇    ◇    ◇





「今回は行けたと思ったのになぁ…」


「それでも二位は大したものだと思うけど?」


 受付前に戻って軽い反省会である。

 判定の結果、爆速マシンは詠たちよりも先にラインを越えたという事であちらに一位を取られたわけだが、その一位を取ったチームは砂だったとはいえ、あの速度で変に突っ込んだことで中で軽いダメージを受けていたりしたらしい。(先程そのチームと思える人達が愚痴を零しているのが聞こえた。)


「今日のところはもう帰ろうか」


「…ん、そうしよっか。

それよりさ、偶には違うのも良かったでしょ?」


「そうね。

さて、いい息抜きになったし、帰ったら課題でもしましょうか……ねぇ?」


「……え」


 このあとめっちゃした。(Akariが)

 それでも終わってない。(Akariが)


今回で番外編は一旦終わりですね。

また気が向いたら復活させます。

この世界かまた別の世界か。


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