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電子世界のファンタジア  作者: 永遠の中級者
第二の舞台 翠の大陸
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番外編 〈サイバース・レーシング〉2

そういえば、今迄でレース系描写とかって読んだこともなければ書いたこともない気がする(;・∀・)

 チュートリアルを終えてホールに戻った後、詠たちは建物から外に出てみることにした。今居たホールは初めの通過地点であってメインではない。居座るのもかえって他の邪魔になる。なので外に。


 建物から出てみると、住宅街というより何だろ…所々にガレージのような場所が点在していた。

 そしてガレージの並ぶ広大な土地の周りを先程のチュートリアルのコースが囲っている。

 先程はレースに集中してあまり周りを見ていなかったが、改めて見てみると、ここも変わった世界だなと思った。都会の様とは違うし何処か未来感が漂っている気もする。


「で、何すればいいの?」


「さっき聞いた話だと、大体のレースは奥にある大きな建物で受付してるらしいわよ?」


「大きな…まさかアレ?」


 Akariが指差したのはこの土地で一番大きいと思われる建物。特に変な装飾などは無いのだけどやけに目立つシルエットをしている。

 チュートリアルの最後にガイドがさらっと言っていた建物は恐らくあれで合っているだろう。実に分かり易くて助かる。


「この世界の主な活動はあそこらしいわ」


 活動っていってもレースだけであり、他の事はあの建物じゃなくても出来るとかなんとか。


「じゃあこの辺は特に何もないの? …って言ってもガレージばっかだけど」


「さぁ?

でも、ガレージじゃない所もあるから何かあるんじゃない?」


 ガレージよりも数は少ないが、確かに別の建物もある。商店らしく看板を出しているところとか。


「とりあえずあの建物に向かいましょうか」


「でも遠くない?」


 Akariがそう言うのも分かる。今居る場所はスタート地点となんら変わらず、それでいてこの街の隅の方にある。誰だってこれは遠いと思う。だけどご安心を。


「その為にああいうのがあるんじゃない?」


「へ?」


 詠が示した先の道路には何かが通り過ぎた。

 そしてまたもそれは通った。


「セグウェイ!セグウェイやでアンタ!」


 なにそのキャラ…。

 まあセグウェイに限らず、何かしらの乗り物に乗って移動している人がちらほらと確認できる。土地が広いからこそ移動手段として採用しているのだろう。ファンタジーの『ゲーマーズ・ドライブ』とは違って、あっても不思議ではないからね。


「じゃあ何か乗り物でも探そうよ」


 そういうので一応探してみることにする。

 といっても見つからなかった場合の事を考えて歩く方向は当初の目的だけど。


「それにしても、所々機械的な感じもあるのに、あんまりそんな印象は受けないね」


「まあ、電脳世界だから…というよりはその辺は工夫してるんじゃない?」


 どちらかというと、レースのサーキット場をまるまる街に改築したかのような印象がある。コースが周りを囲っているからそう思うのだろうか?






◇    ◇    ◇






 はい。見つかりませんでした。

 そして結局目的地まで徒歩で進みました。徒歩で来た。

 電脳世界なので疲れはそれほどありませんのであしからず。


「着いたぁ…」


「そうね。それじゃあ入るよ」


「少しは待ってよ…」


 早速中へ入って行くと、始めに目に入ったのは天井から吊るされている大きなモニターだった。それが複数ある。そこにはレースの予定が表示されていたり、現在行われているのだろうレースのライブ映像が流れている。

 そして中には始めのホール以上の数のプレイヤーたちが居た。

 プレイヤーたちはカウンターの前で列を作っていたり、近くでモニターを見ていたりと様々だ。


「あ、二階もあるんだ?」


 確かに入り口からはモニターで少し隠れていたが、二階の存在が確認できる。

 二階でもモニターを見ているのは変わらないが、一階よりも寛いでいる雰囲気がある。


「とりあえず受付……なんだけどどれだろう?」


 何はともあれ受付をしなければ始まらないと思ったのだが、受付らしきものは複数あった。受付だと判断したのはどちらも人の列があったから。

 回転率はそれほど悪くなく、一方はそれなりの人が順番に済ませており、一方はもうすぐ列が無くなろうとしている。


「丁度いいし、空いた方でいいんじゃない?」


「そうね」


 丁度列を捌ききった方の受付へと向かう。


『いらっしゃいませ。こちらはフリーモードの受付となります。バトルモードはあちらとなりますがお間違いないですか?』


 受付の前に立つと、受付の女性型AIがそう話しだした。


「フリーモード? 向こうとは違うの?」


『フリーモードは使用に制限のないレースをお楽しみいただけます。それに対してバトルモードは自身の有するマシンのみでレースを行いますが、その分ポイントが貰えます。』


 つまり、楽しむならフリー、上を目指すのならバトルってことで良いのかな?

 あれ?まだ他にも受付ってあったよね? それらもバトルの受付なのかな?


「他にも受付があるみたいだけど?」


『ゲームモードでございますか?』


「ゲームモード?」


 これ自体がゲームのはずなんだけど?


『ゲームモードでは順位を競うレースとは別のルールで対戦が行われます』


「へー」


 レース一つでも結構用意されていたりするのね。

 楽しむ目的だからゲームモードでもいいかもしれないけど、初めは基本をすることにしよう。


『それではフリーモードをなさいますか?』


「あ、はい」


『ではルール内容をお選びください』


 そう言うと目の前に【シングル】と【マルチ】という選択肢が現れた。意味はなんとなく分かるので、話し合った結果、【シングル】を選択。多分これで個人戦なのだろう。

 すると次に【レンタルレース】と【ビルドレース】という選択肢が現れた。


「レンタルは分かるけど、ビルドは…自分で組み立てたりでもするの?」


「何それ面白そう!」


 後ろでテンションが上がっているのが居るけど、今回は【レンタルレース】を選択する。個人戦であることは分かってるからね、一人で組み立てるとか出来ません。


 そして一通りの選択を終えてから、案内に従って近くの扉へと向かう。Akariも一通りを済ませて付いて来る。

 扉に入ると、光と共に別室へと飛ばされていた。その部屋はガレージのようで沢山のマシンが並んでいた。



『レース時間までにご自分が使用されるマシンをお選びください。時間となりましたらレース場へと移動となります。時間までに選べなければランダムとなります。繰り返します――――』



【残り00:11:47】



 ガレージ内に響くアナウンスと共に、時間が大きく表示されている。

 残り十分もあれば充分じゃないかな。


 ガレージ内には既に何人かプレイヤーが入っており、選び終えて待っている者も居れば、まだ選ぶのに迷っている者もいる。


「私たちも選ばないとね」


「おお、性能とかも確認できるんだ?」


 Akariが近くに置かれていたマシンのウインドウに触れてプロパティを確認している。マシン一つ一つプロパティが異なるのだろう。それが沢山あるのだから、拘る人からしたら思った以上に時間がかかりそう。

 マシンはタイプ別に並べられていて、上下に二つずつ配置されている。入口付近にあるものが予め運営が用意していたもので、奥の方にはプレイヤーが製作したものが置かれているらしい。(壁に貼ってあった地図によると)

 プレイヤー作のものもあるとは思わなかったな。だから向こうに結構集まっているのだろうか?


「これ極端だな…」


「でも扱いきれさえすればMAXスピードは他とは段違いだぜ?」


「その分、コントロールも悪いんだが!」


 向こうにいるプレイヤーの会話が聞こえてきたけど、プレイヤー作はぶっとんでいるらしいです。誰かが面白がって作った結果なのだろう…。


 とりあえず私も確認から始めよう。

 近くのマシンのプロパティを確認する。この辺りは結構バランスがいいらしい。


「Akariはどうす……」


 Akariの様子も確認しようとAkariが先程までいた場所を振り返ろうとすると、当のAkariが例の方向へと歩いていっていた。例のぶっとんでいるマシンエリアに。…放っておこうか。時間が迫ってるし。


【残り00:06:24】


「とりあえずこれにしよう」


 ウインドウをタッチして決定する。

 詠が選んだのは比較的バランスが取れているマシンだ。クセもない。しいて言えば加速が遅めな代わりにコントロールが効きやすいぐらい。

 これで後は時間まで待っているだけ。

 ちなみに時間内なら何度でも選択を変えれるらしい。試しに隣のものを選んだら選択が上書きされた。


 そしてどうやらAkariも選び終わったらしい。ツッコまないぞー。

 Akariが選んできたのは、最高速が少し低く、コントロールも少々利かない代わりに加速が早いという性能のマシンだった。……向こうから戻ってきた割には思っていたよりぶっ飛んでいなかった。まだ許容範囲内。


「後は待っておけばいいの?」


「そうらしいわね。他のプレイヤーのこともあるから先に始めたりはないようね」


 …時間に間に合わなかった者には無慈悲だけど。


 それから、後から部屋に入って来たプレイヤーが急いでマシンを選んだり、最後まで悩んでいるプレイヤーなどを見ながら時間になるのを待っていた。そして―――


『時間となりました。レース会場へと転送を開始します』


 そのアナウンスが終わった時、頭上に何かの大きなルーレットが現れ回転を始めた。そのルーレットが止まると、気付いたら周りの景色は変わっていた。


『今回のステージはオーシャンサーキット1となりました。周回数は三回。皆さまマシンにご搭乗下さい』


 転送された場所は海がよく見えるコースだった。

 周りから聞こえたことによると海ステージの中でも基本的なコースらしい。1と言っていたから他にも海のコースはあるのだろう。


 さて乗り込もう。

 まもなくスタートの合図があるはずなので、乗り込んですぐにエンジンをかける。


 並ぶマシンの数は十二台。

 次々にブルンブルンとエンジン音がスタート地点に響き始める。


『それでは、まもなくスタートです』


 周りが静かになり、コースにはエンジン音とスタートまでのランプの音だけが響く。



――――ピ


――――ピ


――――プー!!



 スタートの合図と同時に一斉にアクセルを踏むプレイヤーたち。

 一台残らず、スタートから走り出す。


「スタートは何とか上手くいった…」


 スタートダッシュは上々。だけどそれは他も同じ。それなのに既に差が生まれつつある。

 マシンの性能が既に出始めているのか、マシンの団体は二つに引き裂かれていく。簡単に言うと、スピードを発揮している前衛組と安全に進んでいる後衛組。私は後ろでAkariは前。


「やっぱり加速の差かな―――」


 スタート直後だというのに出来ている差、恐らくそれは加速力の差であろう。加速というのは言うなればスピードの中でも速度変化だと思う。それ故、加速が速いというのは最高速が速いのではなく、そこに至るまでの時間が短いこと。

 つまり今先頭にいるマシンは他よりも早く最高速度に至ろうとしている。(ここまで全て推測)


 だけどそう上手くはいかないらしい。


「うわっちょっやべっ!?」


 独走していたはずの先頭のマシンが急に速度を落とし始める。

 その後に続いていた何台かも"それ"に気付いたのか、同じように速度を緩めだす。


「お先ぃ!」


 そんな先頭組の中をAkariが駆け抜けてコースを曲がっていく。そう、ここでカーブである。長い直線からのカーブとは、速度を思いっきり飛ばすことを見越した上で配置していると思うとなんか恐ろしい。

 それにしても海辺だけあって景観はいい。本物とは違うものの、それ故に景観を阻害するようなものはない。海に生き物もいないけどね。


「あ!」


 景色を見ている間に状況は変わり、Akariの独走が終わってすぐに別のマシンが先頭に躍り出た。さっきまで同じ後衛組にいた人だ。今の場面でそこまで上がったとは。

 おっと、私も急がないと。


 進路先を確認した上でスピードを上げる。

 見たところこのコースはたまにカーブがあるぐらいで比較的真っ直ぐなところが多い。その為、順位の変化がつきにくく、少しのミスが大きなミスに変わる。


「待てこらー!」


「誰が待つか!」


 …Akariが先頭に喰らい付いていっているけど、変な方向にヒートアップしている気がする。これ危なくない?


 そんな状況が続き、レースは最後の一周に。

 順位に変化は無く、一位は先程からAkariたちが争っており、その後を他のマシンが追う。

 三位以降は頻りに変動するのだが、一位と二位は先程から同じままだ。コースにも慣れてそれによる変化はないとして、この状態が続く理由として考えられるのは最高速度の限界値だろうか。

 Akariは恐らく既に最高速度に達しているのだろう。それでいても追い抜かすまでには至らない。Akariはなんとか打開策がないかと探している。


 レースはいよいよ最後のカーブにあたろうとしていた。それを曲がれば後は直線だけ。

 Akariは未だに二位のままだ。一位を走っているプレイヤーが思いの外ミスが少ない上にコース取りが上手い。中々追い抜く機会が訪れない。

 ちなみに詠は六位辺りをキープしている。ビリじゃなければそれでいい。

 

「この直線で何とか―――!」


 最後の直線。

 カーブを曲がり切ったマシンたちが一斉にスパートをかけていく。

 コースアウトを気にしなくていい思い切った加速。


「いっけぇぇぇ!」


―――――――!


 マシンが次々とゴールラインを通過する。

 上位争いは皆がラストスパートをかけたことによりかなり接戦となっていた。

 皆がゴールした後、上空を飛んでいたモニターに順位が記載される。


 結果、Akariは追い抜かすことが叶わず二位となった。ちなみに詠は八位になっていた。あれ?下がってる?


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