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電子世界のファンタジア  作者: 永遠の中級者
第二の舞台 翠の大陸
42/237

42 ペッパー・リベンジ・ソード

道を教えると言ったな、それにチェーンして罠カード発動!←

「あれ、聞こえてねえのかな?ここで勝負しようぜ」


「二度も言わなくても聞こえてるだろ」


 聞き間違いではなかったようだ。何度も言っている。


「リベンジ希望!」


 以前も挑んで今回も挑もうとして……この人は決闘バカなのだろうか?

 まぁ、恨みを込めて言っているわけではなく、本当に楽しんでいるようだからまだまともではあるか。


「……ああ言ってますがどうします?」


「別に構わないわ。それで気が済むのなら」


 あ、面倒そうだ。

 勝てる相手だからという意味ではなく、本当に相手をするのを面倒がっている。こういう反応は珍しいかも。


 そう言って前に出た先輩の正面に決闘のウインドウが表示される。先輩がそれを承認して腰の鞘から刀剣を引き抜くと、二人の中心から円状に空間が形成され始める。詠たちは外野として少し離れたところからその様子を見ることにする。

 そして対戦者の情報が上空に表示される。



―――――――――――――

Bペッパー Lv24

〈武勇殿〉

―――――――――――――


―――――――――――――

せんな Lv 16

〈Celesta Sky〉

―――――――――――――



 表示された情報には以前と違ってレギオンの名前が記されている。


 へぇ、レギオンに所属していればその名が一緒に表示されるんだ。どうやら向こうもあれからレギオンに所属したようだし。それにしても何故武勇殿?武勇伝なら"でん"の漢字が違うけど、掛けてあるのか偶然なのか…。

 黒胡椒くんのレベルは私たちよりも上か。先にこの大陸に居たらしいだけのことはある。先輩も経験値配分を変えてそこそこ上がっているとはいえ、私たちの中では一番下。レベルの差が気になるけど以前のように技術面なら先輩の方がまだ上のはず。


「あの二人って何か因縁あったりするの?」


「前に一回同じように対戦したのが初だったんじゃないかな?」


「前はどちらが勝ったんですか?」


「先輩」


 隣ではそんな会話がなされているが、それとは関係なく開始のカウントダウンは着実に刻む。そしてそのカウントダウンも開始の合図である零を告げる。


「―――ッシャァ!」


 開始直後、気合の入った声と共に黒胡椒くんが地を蹴る。前回と同じように間合いを詰めると同時に剣が光を宿す。だが、その光を衝撃として飛ばすことは無く、そのまま先輩に突っ込む。


「〈ブラッシュ〉!」


 大きく薙いだその軌道を、先輩は後ろに軽く跳んで身体を少し後ろに倒す形で躱す。そのまま反撃に出る――かと思われたが動かない。何故かと思われたが敵のスキルはまだ続いていた。大きく薙いだはずの刃は描いた軌道を帰るように二撃目を放たれた。二連撃技だったのだ。


 だが、その二撃目も相手が踏み込んでこなかった為に空を裂く結果となった。そして先輩の刀剣に反撃と言わんばかりのスキルの黄色い閃光が宿る。〈スパークル・エッジ〉。以前と似た流れだ。スキルの後で隙を晒している黒胡椒くんに対してその刀剣を振るおうとした。その時―――


「同じ轍は踏まない!」


 二撃目の軌道によって左に伸びている右腕の陰から出された左手が先輩へと伸びる。そして――


「―――〈獄拳〉!!」


 下から抉るように繰り出された拳を受けて、先輩の刀剣に宿っていた閃光が消えた。叩き込まれたことで反射的に距離を空ける先輩。追い打ちは無い。


 静かに向かい合う二人。HPは黒胡椒くんがリード。

 以前の戦いなら距離が空けば先輩の遠距離攻撃が飛んでいたが、今回は飛んでいないどころか使う気配が無い。


 そんな光景を見て隣が少し騒がしくなった。


「なに今の!?」


「手刀!?」


「掌打じゃない?」


「どっちにしろ武器を使ってない拳の技なんてあるの!?」


 やはり注目しているのは先程黒胡椒くんが使った技か。それも当然か現在装備している武器とは系統の違う攻撃、それも素手で相手のスキルを消させるほどの威力の技だったのだから。あれも先で手に入れたスキルが関係しているのだろう。今はそう思っておこう。


「悪いけど魔法は今は使えないぜ」


 黙っている先輩に対して忠告のように言う黒胡椒くん。

(困っているのだろうと思ったらしいが、本人はただ単に余計面倒になったと思っているだけである)


「今使った〈獄拳〉は相手の詠唱を阻害する追加効果がある。と言っても俺だとまだ十秒くらいしか止められないけど―――ねっ!」


 十秒、ならそろそろ切れる。

 それを理解している黒胡椒くんは効果が切れる前に攻撃を再開する。


 スキルではない自前の剣使いに絡めるような剣技とその隙を補う拳撃。躱されようと簡単には反撃をさせない姿勢。現に〈獄拳〉を警戒してか、タイミングを見極めているかのように攻撃に移らない先輩。


 そんな光景を静かに見ていたBペッパーと共に居た男性プレイヤーはこの戦況に何かが引っかかっていた。


「(一見すると流れはペッパーにあるように見える。

だが、魔法を阻害すると聞いた時の反応は何なんだ? 焦っているようにも思えないし、それほど問題として受け止めている節も感じられない。実力者なのは聞いたが……てか、真面目に考えたら接近戦の相手に詠唱阻害入ってもあんまり困んねえのは当然だろ!?)」


 などと心中で自らにツッコミを入れているとは露知らず、当の本人は戦闘を繰り広げている。

 男性プレイヤーの観察通り、戦況は見かけではBペッパーが有利に見える。わざと隙を作って罠を張ったりと見え見えとはいえ絡め手まで加えながらとさらに追い詰めようとする。だがそれらは全て躱されており、実際に追い詰められているのはBペッパーの方である。


「(やばいな、飛ばし過ぎたか。MPもそろそろ尽きそうだ。

にしても相変わらず当たらねえな。どうするかな…)」


 Bペッパーは攻撃と誘いを兼ねて剣技スキルを使い続けていた。消費の少ない初歩的なスキルを選んで使っていたとはいえ、幾度と使い続ければそれも何時かは尽きる。そしてその時が近づいていた。だが、当人にはそれが好機だったのかもしれない。


「(俺が使えるスキルは多分軌道を読まれている。ならいっそスキルに頼らない方がいいのか?)」


 そう思い立ったと同時にせんなが動いた。スキルではない的確な軌道を描く刀剣が迫る。

 Bペッパーは驚きながらも反射的にそれを剣でガードし、お返しと言わんばかりに剣を振るった。


「ああ!惜しい」


「にしても向こうも対応してきたなぁ。この前ならあそこからの勢いで結構押し返したのに」


「あれか。漫画とかで戦闘狂が良く言う、『強者との戦いが己を強くする』とかうんたら」


「向こうも成長してるってこと」


「そうだろうね。レベルも上だった訳だし」


 それにしてもスキルを控えるようになってから黒胡椒くんの攻撃が先輩に少しずつだけど当たるようになってきている。ある程度動きが決まっているスキルとは違って不規則に変えてくるからなのか。

 と、ここで先輩が大きく動いた。


「―――〈クラック・レイド〉」


 身体の回転を活かして振るわれた横薙ぎ。それに伴う衝撃波によって地面から岩棘を起伏させた。

 先輩の動きに対応できるようになっていっても流石に地面からは予測できなかったようで、その攻撃をまともに喰らった上でバランスを崩した。先輩はさらに畳みかける。


「なんのっ!」


 先輩がスキルを使用する。黒胡椒くんは攻撃を察して崩れたバランスを何とか踏みとどまって防御の体勢を取った。だが―――


「〈インパクトブレイク〉!」


 先輩の攻撃はその防御を剣ごと弾き飛ばし、開いた懐に向かって強烈な打撃を叩き込んだ。もろに受けたその威力は相当だったのか、黒胡椒くんは背後の木目がけて飛ばされ、黄色手前だったHPが赤ゲージまで吹き飛ばされた。


 勝敗が決した。



―――――――――――――

決闘結果

せんな Win

―――――――――――――


思ってたより長くなった(´・ω・`)

意外としぶとかった黒胡椒。

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