40 進撃の追跡者
――――ダンジョン "廃れた縦穴" ――――
再確認ですが、今回は攻略が目的ではありません。この大陸のレベル基準を探るために三、四回戦闘が出来ればいいのです。それで少しは予測が出来ます。
もう一度言います。今回は攻略が目的ではありません。なので危険なことには手を出しません。
―――――――――――――――――――
チェイスワーム / Lv 18 (レア)
―――――――――――――――――――
――だから手を出しません! というより出せません!
「「「生理的に受け付けない!」」」
一行がダンジョンに入った途端、モンスターに出くわしたかと思うと、それはダンジョンの通路を塞ぐように敷き詰まっていた長いモンスターだった。それなりに太く、それでいてかなり長い。本当気持ち悪い。
モンスターのレベルが下であるにも関わらず、そのビジュアルに負けて、全力疾走で逃走する詠たち。調べる目的は何処へやら。
ダンジョンに入ってそれほど進んでいなかった為に、彼女たちはすぐにダンジョンの外まで走り出た。だがしかし、彼女たちを追っていたモンスターまでもがダンジョンの外まで追って来たのだ。
「なんで!? ダンジョンのモンスターは外まで来れなかったりするんじゃないの!?」
「あ!今気付いたけどあのモンスター、レアって書いてある!」
「本当だ!――じゃなくて!それ多分関係ないでしょ!」
「じゃあ今のこれはどういう事!?」
そんな会話を繰り広げながらも森の中を逃げ続ける。
レベル差とこの数なら戦えば勝てるだろうけど、やはりそのビジュアルが受け付けないので戦闘に転じようと言う考えにはどうしても踏み切れない。だけどこのまま逃げ続けるのも切りがない。あのモンスターはエリアが変わろうと止まる感じはしないのだから。
「――どうする?流石にこのままはキツイんだけど」
「いっそのこと上まで逃げますか?」
「そうするにしてもまずは上がれる所を探さないといけないけど…」
「……その余裕はないかな?」
―――――――――――――――――
スパイダー / Lv 13
スパイダー / Lv 13
スパイダー / Lv 13
―――――――――――――――――
わんたんが先に気付き、皆もその視線を辿るように正面を確認すると、進行方向に運悪くモンスターが立ち塞がっていた。前門の虎後門の狼とはこのような状況なのだろうか。でも、これはまだマシだったのかな。
「ヘイト集めようが知らない!」
Akariが走りながら躊躇いもなく剣を抜いた。そしてその剣に淡い光が宿り出す。強行突破の気らしい。それもそうだ。止まれば後ろに捕まる。後ろに特攻をかけるぐらいならまだマシな見た目の前に突っ込む。
確認すると、Akariに続くように近距離攻撃が出来るメンバーは全員攻撃態勢に移っていた。Akariに釣られたからなのか誰一人遠距離攻撃をしようとはしていない。力押しで道を切り開くと。それはなんとも……
勢いを乗せた一斉の攻撃に無惨にも前方に群がっていた蜘蛛は吹き飛んだ。(一応言うが倒せてはいない) そして一時的に開けた道を大急ぎで走り抜けていく面々。その後吹き飛んで空中に居たモンスターたちは走り抜けた後にその場に落下した。これで少しは足止めに―――
「な!? 嘘!?」
誰かがそんな声を上げた。
後ろを振り返ると、先程吹き飛ばし落下したモンスター達は、その奥から迫るワームに蹴散らされる、丸呑みにされる、といっただけで勢いは一切落ちてはいなかった。大きなモンスターといえどゲームのプログラムなのだから障害物があれば道を変えてくると少しは思ったが、そんな望みは無かった。それどころか気のせいだろうか、今一瞬経験値を得たように見えたのは…
「共食いとかアリ!?」
「いやアレ絶対同じ種族じゃないから!」
「ツッコむべきはそこじゃないですから!!」
まさか、まだ二つ目の大陸でモンスターがモンスターを喰らう場面になろうとは…。その原因はこちらにあるけどそこには触れない。
そうなると状況はかなりキツイ。撒こうにも撒けず、逃げ続けるにしてもこの世界では現実よりも動けるとはいえ精神が走り疲れる。こうなれば仕方ない。
「ここで迎撃するよ」
「受け付けないから逃げてたんだけど!!」
「仕方ないでしょ、逃げれないんだから」
反論しながらも、向かってくるモンスターに対して弓を構える。始めは魔法をと思ったが、詠の使える魔法の殆どは火。この森の中で使うのはどうしても気が引けるので当分は控える。
即座に射った矢は綺麗な軌道を描いて見事にモンスターの頭部?(頭全体が口のようなものなのでどこからが頭なのか分からない)に突き刺さった。確認の為にモンスターの上部に表示されたゲージを見たが、あまりHPを削れてはいないようだ。
「ちょっ、危なっ!?」
「うわっ!」
矢を受けて本格的に戦闘状態に移行したのか、モンスターはパターンを変えてくねくねと辺りを縦横無尽に動き回っては口を大きく開けて突進を繰り返す。一同はそれを危なげに躱しながら、ちまちまと攻撃を繰り返す。
唯一軽快に躱している先輩の刀剣に淡い光が宿る。お馴染みの〈スパークル・エッジ〉だ。その剣技を斬り上げる形でモンスターにぶつけ、モンスターの身体は空中に向かって反らされた。だが、今回はひるんではいない。
「――ッ」
モンスターはそのまま伸し掛かる。先輩は躱し、その場にドシンという音が響く。
「詠、いつもの付与は!」
「……それぐらいなら大丈夫かな」
付与ぐらいなら燃え移ったりしないかな。それにこんな敵は早いところ終わらせたいしね。
少々考えたのち、詠はこの場の全員に対して〈エンフレア〉を唱える。皆の武器に燃える様な色が纏われる。そんな時だった。後ろから声が聞こえたと同時に何かが頭上を通り過ぎた。
――――――!!
その一撃はモンスターに突き刺さり、叫び声を上げると共に動きが止まった。
一撃が飛んできた方向を見ると、木の上にこちらに向かって親指を立てた拳を向けている一人のターザンの姿が。そういえば称号の得点で援護が発生することがあるってあったような気がするけど、まさかこのタイミングとは。
って、こうしている場合じゃない。この支援はありがたい。これを無駄にしてはいけない。
「みんな!」
今の流れを逃さぬように一斉に攻撃を再開した。スキルの光、武器がぶつかる度に弾け、攻撃がヒットする度に上がる炎のエフェクト。確実に流れにのった攻撃により、反撃の隙を与えることなく、モンスターのHPをどんどん溶かしていく。
そしてそれも終わり、モンスターは光となって砕けていく。
【☆レベルアップ☆ ポイントを振り分けることが出来ます。】
終わってみれば、見た目がアレなだけで勢いに任せればなんてことは無かった。考えてみれば見た目がアレで大きくてもボスではないのだから強さにも限度がある。冷静に対処していれば意外と早くにすんなり終わっていたのかもしれないわね。今はレギオンが居るし。
何度でも言おう、見た目がアレ。
ステータス
レギオン『Celesta Sky』
詠 / 狐人
Lv 20 → 21
―――
ターザンの同盟者
HP: 108 → 110 / MP: 191 → 194
STR(攻撃力): 24 → 25
VIT(耐久): 25
INT(知力): 47 → 49
MND(精神力): 54 → 57
DEX(器用さ): 37 → 39
AGI(素早さ): 72 → 77
LUK(運): 26 → 27
BP : 19 → 22