33 ジャングルの王者 ターざん*
ターちゃんよりshowちゃん世代(某配信ネタ)
段々と茂みが深くなっていく森の中。
其処で木の幹や枝、終いには木から垂れさがっている蔦をも使って軽やかに森の中を飛ぶ影が一つ。其れは人のようで、その手には骨で出来た弓を持っていた。
「あれが犯人ってことで良いのかな?」
「そうでしょ。現に弓持って逃げてるからね!」
影から遅れる形で地上を走る。
相手の手に持っている弓を見て泥棒と判断するが、地上は生えている草が進む程に伸びていき、少しずつ進路の邪魔になっているのに対して、森の中を飛ぶ影はそんな事をお構いなしに進んでいく。速度が比較的速い方の獣人でもこの地形では動き辛く、油断すると見失い程。
「っていうか、アレ何!?エネミー?プレイヤー?」
「姿から考えればプレイヤーだけど……何だろう?」
「どうする、処す?処す?」
とりあえず処すのはやめなさい。
一応止めはしたけれど、冷静に考えても泥棒の正体が分からない。姿や行動から考えても不審な点が多くてエネミーかプレイヤーなのかすら判断出来ない。姿形は人型であるが、プレイヤーにしては動きがトリッキー過ぎる事に加えて、隙だらけだったとはいえ簡単に他人のアイテムを盗めるものなのかという疑問が出る。だからと言ってエネミーかと言われれば、大陸独自と言えば有り得るだろうけれど、盗むだけで直ぐに逃げるというのは此処迄のエネミーの動きとしては無かった。
未だに正体に迷っていると、それらに対する意外な回答が挙がった。
「あれは所謂、敵性NPC」
「敵性NPC?それってどういうことですか?」
「簡単に説明すると、イベント限定の特殊キャラみたいなモノ。コミュニケーションは一応出来るけど敵判定だから攻撃してくるし、撃破すればアイテムを得られる」
どうやらエネミーとプレイヤーの間のような存在らしい。敵として妨害してくるNPC。意外にも処すのは選択肢として間違っていなかった。
選択肢は置いておくとして、イベント限定という表現から考えるに、既に何かしらのイベントが始まってしまっていると思った方が良いのだろうか。其れこそ何時ぞやのゲリラのように。
「え、ちょっと待って、撃破ってこの状態でってこと!?」
「出来る人は出来るし、他の場所で戦う人もいるわ。ただ、一定以上距離を離されたりすると奪われたものは取り返せなくなる」
「というか、何で他人のアイテムを奪えんのさ!何かしらの規制か何かあるんじゃないの?!」
「さっきの事はあのターザンの能力。アイテムを奪ってはそれを使って襲ってきたりする」
思ったより面倒な事が始まっているようだ。虎の威を借る狐……じゃない、人の褌で相撲を取るということかな。
「というかアレの名前、ターザンなんだ…」
「…言われてみればそんな気がする」
自然を理解しているような身のこなしや木々が生い茂る舞台的には合っている存在かも知れないけれど、少なくともこの森はジャングルとかではないよね……。
「一体何処まで行くつもりなのでしょうか?」
「…確かに、襲ったりする割にはさっきから逃げてばっか」
「そうだよねー。弓を奪ったから射ってきたりしそうなものをねぇ?」
「というか…同じ所を回ってない?」
風景は先程から似たようなものばかりなため確信は持てないが、飛び移る泥棒の進路方向を見ていると、どうも一定範囲を回っているように思える。其の証拠に一定距離突き進むと決まって曲がっている。其れも決まって同じ方向に。
「何処かに誘ってる…訳は無いわね。同じ場所だから」
「あ、何か様子が…」
「…アレ、撃とうとしてない?」
此処で少しだけ泥棒に変化があった。先程から逃走に専念していたのに、急に奪った弓を触りだした。そしてちらちらと此方の動きを確認している。確かに相手は使おうと思えば使える筈。だけど幾ら弓と矢がセットと言っても相手の手元に矢を持っている雰囲気はない。案外弓は使えないのかも知れない。
「ちょっ!?危なっ!」
…かと思ったら平然と撃ってきた。
泥棒は木から木へと移動しながら空中で身体を前後回転させたり、枝に着地したりしたタイミングで此方に矢を放ってきた。お互いに移動中であるという事もあって狙いは其処まで正確ではない。あらぬ方向に飛んでくる場合もある。だがしかし、時に進行方向に障害物が現れるので妨害としては厄介だ。幾ら撃つときに逃走のペースが落ちると言っても、此方も止まっていては追い付けない。
「アレ本当にNPCなの?!やけに面倒なことをしてくるんだけど!?」
「まぁ……これが新しい大陸の洗礼なんじゃない……」
そう答えるとAkariから、そんなわけあるか!とツッコまれたのだけれど、そうとは否定しきれない感じが現在進行形で降り注いでくる。
とはいえ、たとえ洗礼であろうと素直に受け入れる必要も無いから此方も手を出させて貰おう。攻撃しても良いという事は既に分かっているので。
木を盾にしながら弓を構え、カウンターの容量で射るタイミングを狙う。
「《ホークショット》」
真っ直ぐに泥棒に向けて放たれる矢。しかし泥棒が直ぐに移動したために其れは空を切っただけだった。始めから当たるとは思ってはいない。反撃は此処から。次の木へと跳んだ泥棒に向かって、他のメンバーが枝やら石やら投げられる物を一斉に投げていた。(遠距離攻撃に乏しい上に有っても炎やらで森全体が燃えそうだからこうなった)
「キッ!?」
ダメージはほぼ無いとはいえ、注意を散らしたり体勢を崩したりと効果は出ている。現に構えを妨害したり、木から落としたりする事に成功した。其処に待ち構えていた先輩がスキルを放った。空中に現れた数多の光が泥棒に向けて撃ち出されていく。
「キッ!?キッ…!」
乱れ撃たれた光が二つ三つと泥棒に撃ち込まれて其の身体を奥へと吹き飛ばす。持っていた弓も手に撃たれた影響で地面に転がっている。
落とされた弓を拾い上げる。泥棒は地面に転がってはいるけれどまだ動ける様子であるが、奪われた弓は取り返したのでもう射撃は出来ない。
起き上がった泥棒は射撃が出来ないながらも此方を警戒している様子。それはそうか。
「もう袋叩きでいいよね?」
「その言い方どうなの…」
地面に落ちた事で出来なかった近接攻撃が出来るようになったとはいえ、その言い方は流石にツッコまずにはいられない。敵とはいえ姿が人型だからだろうか。絵面が酷くなる。
「けど、するなら早くした方が良い」
「え、それはどういう……」
トドメを刺そうと思えば直ぐに出来るであろう先輩がそんなことを言った。言葉としては面倒事の気配がするけれど、当人は大抵対処出来るから困ったことに焦りは感じない。
素直に理由を訊こうかと思っていると、今迄機を窺っていたターザンが構えた。そして次の瞬間――――
「キアァァァァァァァァア!!!」
天に向かって大声を上げた。
此方が怯んでしまう程のその奇声は瞬く間に森の中に響き渡り、鳴き終わる頃には静かだった周囲に気配が幾つも現れていた。
「何これ!?」
「周りにいっぱい……!」
木や草むらの陰の至る所に出現した影。其の数は一瞬で此方の数を上回っている。
「ターザンは追っている時に一定のダメージを与えると、救援を呼ぶことがあるらしいわ。……こんな風に」
説明の通り、周囲に集まった影をよく見ると泥棒ターザンと同じような姿の者たちだった。仲間を呼んだのだから全て敵性NPCなのだろう…
それにしても、呼ぶことがあるって確率の話なのに、それを引いてしまうなんてツいてない……
ステータス
レギオン『Celesta』
詠 / 狐人
Lv 17
―――
―――
HP: 158 (HP+150) / MP: 258 (MP+300)
STR(攻撃力):21 (STR+16)
VIT(耐久): 21 (VIT+10)
INT(知力): 52 (INT+20)
MND(精神力): 67 (MND+205)
DEX(器用さ): 38
AGI(素早さ): 81 (AGI+10)
LUK(運): 33
BP : 24
装備
「ノーマルアロー」(STR+8)(重複)
「ノーマルダガー」(STR+8)(重複)
「旅立ちの帽子」(VIT+5、HP+50)
「旅立ちのシャツ」(VIT+5、HP+50)
「旅立ちのロングスカート」(MND+5、HP+50)
「ノーマルブーツ」(AGI+10)
「霊宝珠のペンダント」(MP+300、INT+20、MND+200、全状態異常耐性+30%)
ステータス
レギオン『Celesta』
Akari / 鬼
Lv 18
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―――
HP: 274 / MP: 164
STR(攻撃力): 73 (STR+23)
VIT(耐久): 57 (VIT+20)
INT(知力): 31
MND(精神力): 34 (MND+10)
DEX(器用さ): 43
AGI(素早さ): 46 (AGI+10)
LUK(運): 19
装備
「銀の刀」(STR+23、MND+10)
「ノーマルシャツ」(VIT+10)
「ノーマルズボン」(VIT+10)
「ノーマルブーツ」(AGI+10)
ステータス
レギオン『Celesta』
せんな / 天使
Lv 12
【道を切り拓く者】
―――
装備
「白紙の妖刀 "白月"」Lv16
レギオン『Celesta』
わんたん / 猫人
Lv 16
レギオン『Celesta』
たんぽぽ / 兎人
Lv 16
レギオン『Celesta』
るる。 / エルフ
Lv 14