32 初めての新大陸*
此処からは二つ目の大陸『翠の大陸』に入ります。
トンネルを抜けると其処は大自然だった。
トンネルというには奥行きが無く、しかも光に触れると一瞬でワープされたのだけど。
ワープされて降り立った先は見渡す限り植物に覆われた土地だった。高低様々な植物に溢れ、直前の大陸と違って一目ではほぼ緑一色となっている。
ふと足場に違和感を覚えてよく見てみれば自分たちが立っている場所さえ大きな木の上だった。と言っても枝を足場にしている訳ではない。現実の物とは違い、葉の集まった場所が地面のようにしっかりした足場となっている。確認として踏みしめてみたが、抜け落ちたりする心配はない様だ。其処のところはファンタジーらしい。
このようなものは始まりの大陸ではなかった。見えているだけで無く、間違いなく別の大陸に移動できたという事だろう。
「なに此処……」
「一面緑の大陸だ!」
「凄っ!」
植物が溢れる大地に他のメンバーが驚いている。確かに植物だらけであるが、どうやら大陸自体が大きな森のようになっているようだ。地形のバランスが整っていた前の大陸と比べると、全体が森に覆われている分、街や集落といった場所を見つけるのは難航しそうである。
手掛かりは見当たらないが、気になるものはある。其れは遥か向こうに他の木よりも抜きんでた大きな樹木。
「あの大きな木は?」
「あれが大陸の中心である集落大樹『ラグレシア』よ」
「『ラグレシア』?」
「何その世界レベルで臭い花みたいなの?」
「その言い方は止めなさい」
そんな事はさておき、早速手掛かりはあったようだ。
先輩は先程"集落大樹"と発言した。集落と付いているのだから彼処を目指せば街のようなものでも有るのだろう。外見だけでは只の大きな木なのだけれど、他よりも高く目立つ大樹なので目的地の目印としては分かり易い。
「…じゃあ、彼処を目指して行けば良いんだね」
「目印としては前の大陸よりも分かり易いですね」
「ラフレシアでもラグレシアでもどっちでも良いんだけど……、これどうやって下に降りればいいの?」
そう言われて皆で自分たちの場所を再確認した。
現在地は転移時と変わらず木の上。その木は結構な高さがあるようで、飛び降りようものならどうなるかは分からない。強いて言えば隣の木との距離が近く、此方と同じように足場に使えそうな場所はあるので移動するだけなら此れが一番安全的だろう。とはいえ、後回しにしているだけで何処かで一度地面に降りなければならないのだが。
「出戻り覚悟で飛び降りてみる?」
「出戻りはその場で復活するものではないですよ?」
「それに復活しても前の大陸の筈」
「あ、そっか」
どうすれば良いのかと皆で道が無いか探す。木伝いに巨木に向かうという選択も出来るけれど、行った先に降りられる場所が無ければ引き返す事も有り得る。
少し迷っていると近くの木の上に淡い光が生じた。
「…そういえば、他のプレイヤーも転移門を使うよね」
光が収まると共に新たにプレイヤーがこの地に降り立った。転移先の着地地点は微妙に定まっていないらしい。立ち止まっていても邪魔にならなくて良いけれど。現れたプレイヤーは着地すると迷う事無く自身の足場を調べていた。すると直ぐにその姿が下へと消えた。
「やっぱり何処かに有るんだよ!」
「…というか彼処に行けば良いんじゃない?」
先のプレイヤーに倣い、私たちも下へと向かおうとした
そんな時、先輩がいなくなっている事に気付いた。
「あれ、先輩は?」
「此処」
声のする方を見てみると、高さの違う別の木から顔を出していた。
「下への降り方ならこっち」
「え、あ、はい」
先輩に先導されるように慎重に隣の木へと跳び移る。
この移動、ジャンプ距離的には問題は無いのだけど、木というだけあって着地時に足場が揺れるのが少々危険である。今も後ろで上下の揺れでバランスを崩して落ちかかっていた。何とか足場を掴んで落下を免れていたけど。
移動した先では先輩が木に絡んだ蔓を掴んで確かめていた。そして丈夫と判断したかと思うと、その蔓を軸として下へと滑り落ちていった。何処へ向かったのかと覗き込んでみると、二段程下の位置にも足場があって其処で待っていた。
「もしかして此れを続けていく感じ…?」
「そうっぽいね」
覚悟を決めて同じように下へと向かうと、其処でも先輩は蔓を使って下へと降りていく。そしてまた向かうと、葉溜まりの足場を飛び移って地上へと着地していた。
「ちょっとしたアスレチックね…」
動きを真似て、終始ハラハラする移動をする私たち。蔓での移動も危ないけれど、其の後の飛び移りも中々に危ない。クッション性を含んでいた葉溜まりの足場に飛び降りると、落下ダメージ等は無いけれど代わりにトランポリンのように身体を跳ね上げるから体勢が崩れる。そんな足場を跳び移るのだから油断出来ない。
「あ、ちょ、ま、危なぁあああ!?」
「そっちじゃないよー」
「此れなら得意」
後ろからわちゃわちゃと聞こえるけれど、高度は着実に下がり、最後の跳ね上げの勢いで地面に足を付ける。後続も最後が飛び込んできたこと以外は特に問題なく着地した模様。
此れが大陸に入っていきなり経験することになるということは、もしかしたらこの後もこういった移動をする場所があるのかもしれない。
「ふぅ……なんとか地面まで辿り着いたね…」
「凄く疲れてますけど大丈夫ですか?」
「なんとかなんとか…」
「それにしても、さっきの移動中に敵が出なくて良かったね。出てたら絶対に誰か木から落ちてた」
其れには同感。後続の様子から只でさえ今の移動で酔いの可能性があるかも知れないのに、エネミーの妨害迄加われば、人によっては脱落も有り得るだろう。上から見た限りでは木の上にはエネミーの姿がまったく見えないので、その手の心配は無いだろうけれど……。
「えっと、地面には降りましたけれど、此れからどうしますか?先程の大樹を目指しますか?」
「まあそうなるわね、降りたことで目印が見え辛くなったけど。……って、Akari何してるの?」
「え? いや、さっきのアイテムの整理をね」
「わざわざ実体化させる必要は無いんじゃないの?」
Akariがウィンドウを出しながらその手に持っていたのは、先程のボスダンジョンで手に入った骨…の束。素材などは同じものならある程度は一つに纏めて置けるシステムなのだけど、あんなに有ったとは…。
ちなみに今更だけど先程の宝箱の中身は全て先輩が持っている。分配は敵の居ないであろう落ち着いた場所で改めて行うとして、レベルはさておき一番安全であろう先輩に預けている。凄い安心感。
「そういえば、あの骨がこんなのも落としたんだけどさ、使う?」
そう言ってAkariが取り出したのは骨と糸を組んで作ったような弓だった。そういえば色んな武器を使う骸骨たちが居たね。この弓もそれらが使っていた物の一つだろうけれど……、イマイチ使いたいとは思わない。
「…これ使ったら残留思念とかあったりしない?」
「ないない。そう言うのがあったら詳細で書いてるでしょ」
それもそう……なの?それはそれでどうなの?
其れは兎も角として、くれると言うのなら預かっておこう。
そう思って手を伸ばそうとしたその時、目の前に何かが通り過ぎた。反射的に手を引っ込めたが、気が付くと其処に有った筈の弓が姿を消していた。
「あれ?さっきまで持ってた筈……」
「あっち」
状況がよく分かっていないAkariを尻目に、先輩は何が起こったのかを理解したのか、目的地の方向とは別の林の中へと走って行った。
「あ、待って」
「ちょ、どこ行くんすか!?」
それを追って林の中へと入って行くと、その先の空中に木を使って移動している素早い一つの影があった。
ステータス
レギオン『Celesta』
詠 / 狐人
Lv 17
―――
―――
HP: 158 (HP+150) / MP: 258 (MP+300)
STR(攻撃力):21 (STR+16)
VIT(耐久): 21 (VIT+10)
INT(知力): 52 (INT+20)
MND(精神力): 67 (MND+205)
DEX(器用さ): 38
AGI(素早さ): 81 (AGI+10)
LUK(運): 33
BP : 24
装備
「ノーマルアロー」(STR+8)(重複)
「ノーマルダガー」(STR+8)(重複)
「旅立ちの帽子」(VIT+5、HP+50)
「旅立ちのシャツ」(VIT+5、HP+50)
「旅立ちのロングスカート」(MND+5、HP+50)
「ノーマルブーツ」(AGI+10)
「霊宝珠のペンダント」(MP+300、INT+20、MND+200、全状態異常耐性+30%)
ステータス
レギオン『Celesta』
Akari / 鬼
Lv 18
―――
―――
HP: 274 / MP: 164
STR(攻撃力): 73 (STR+23)
VIT(耐久): 57 (VIT+20)
INT(知力): 31
MND(精神力): 34 (MND+10)
DEX(器用さ): 43
AGI(素早さ): 46 (AGI+10)
LUK(運): 19
装備
「銀の刀」(STR+23、MND+10)
「ノーマルシャツ」(VIT+10)
「ノーマルズボン」(VIT+10)
「ノーマルブーツ」(AGI+10)
ステータス
レギオン『Celesta』
せんな / 天使
Lv 12
【道を切り拓く者】
―――
装備
「白紙の妖刀 "白月"」Lv16
レギオン『Celesta』
わんたん / 猫人
Lv 16
レギオン『Celesta』
たんぽぽ / 兎人
Lv 16
レギオン『Celesta』
るる。 / エルフ
Lv 14




