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電子世界のファンタジア  作者: 永遠の中級者
初めてのVRMMOと始まりの大陸
24/237

24 リアル談議*


Pi Pi Pi Pi Pi Pi



 ゲームの中で講義を受けたり訓練をしたりと色々とあった日の夜。

 自分の部屋で実は出されていた夏休みの課題を少し進めていると、携帯から味気ないメロディが鳴り響く。此れはただ単に設定を触っていないだけである。とはいえ全て同じ音楽という訳ではなく違いはある。この鳴り方は電話だ。


 動かしていたペンを置き、電話に出る。


「はい、もしもし」

「あ、凛?」


 着信相手を確認せずにとったが相手は朱里だった。其れならと機能をTV電話へと切り替えて机の奥に立て掛ける。向こうも既に切り替えていたらしく、画面には直ぐに朱里の顔が映し出された。


「あ、珍しく映った映った」

「こんな時間に何?」

「いやぁ、今日の事でもと思ったんだけど……何、リアルでも勉強してたの?」

「夏休みの課題。幾つか出てたでしょ?」


 そう言うと、朱里は「そんなのあったっけ?」といったような顔をしていた。出ていたのである。テスト期間に入る前の最後のHR(ホームルーム)で少々早めに提示していたのでお忘れかもしれませんが。出されたのは現代国語と数学ぐらいだけど。ちなみに先程進めていたのは数学の課題。


「まだ夏休みに入ったばかりだからまだしなくても」

「そう言ってると絶対最後に焦る結果になるよ。覚えているうちに済ませておきなさい」

「流石に今日は疲れたからパス」


 そう言ってお手上げのようなポーズを取る朱里。気持ちは分かる。

 今日のプレイは大猪に始まり種類のある基礎訓練と、半分以上が街の中だというのに中々に動いていたのだから。途中身体的には休める機会はあったとはいえ、精神的に疲れていても仕方が無い。正直自分も疲れは感じている。


「でも、意識していないとどうせ最後迄忘れてるでしょ」

「って言ってもさー、現代国語とかすぐに終わることじゃないじゃん。読書レポートなんて」

「なら数学の方をすればいいでしょ。計算プリントなんだから出来るでしょ?」

「…私の数学の成績を知っててそれ言ってる?」


 そう言えば朱里は計算となると頭が停止するほど数学が苦手だったかな。ゲーマーズ・ドライブ内でダメージやら価格やらで計算に対する嫌悪感は薄れてきているとは思うのだが、それでも駄目なのか。逆に何故ゲーム内は良かったのか。あ、嫌っているのは公式云々だから関係ないか。


「よくアレの後で頭使えるよねー」

「珍しく弱音吐いてるわね。私より体力あるくせに」

「いや、正直まだ大丈夫と言えば大丈夫なんだけどね。あの流れは無いかなぁって」

「あー、あのアスレチックね…」


 私たちが行った基礎訓練、その後半である身体訓練の内容は最初に受けた手順のある武器訓練とは違って、優しい補助も何も無い紛れもないアスレチックだった。それも、私たちが選んだ訓練が幸運に対する訓練だったからなのか、只でさえ進み辛いルートに加えて不規則に発生する妨害要素やその時によって正解の変わるルート等、運要素の強いアスレチックだった。恐らく、他の訓練を選んでいればまた違ったアスレチックだったのだろう。ちなみに結果は駄目だった。


「取った方が良いだろうけど、どうせなら言っておいて欲しかった」

「あくまで質問の返答として言ったに過ぎないから」


 基礎講義では性質についてが中心だったので、オマケで話した訓練について情報が幾らか抜けていても仕方が無い。


「あーそうそう、講義といえば、言ってたこと理解できた?」

「あの性質とか?まぁそうね。所々に書かれていて気になってたけどあの講義で色々と納得は出来たかな」

「そういえば、凛は付加魔法とか使ってたもんねー」


 付加以外にも性質は含まれているのですがそれは。


「それとさ、性質の話の最後辺りに言ってたことなんだけど」

「最後?【暴乱】がどうこうっての?」

「いや、そっちじゃなくて」


 性質の話の最後といえば【暴乱】を持つ敵は危険だから注意といった話であった筈。其れ以外となると参加者からの質問ぐらいだけど、どれの事だろうか。


「開放戦の方だよ」


 開放戦?

 言われてみれば少しだけど確かに言ってたかな。ゲームに関する説明ではなく、講義を開いてくれたボン師匠の素性について質問された事で判明したのだ。


「その開放戦がどうしたの? 初心者の私たちには縁のないことじゃない」

「そうなんだけどさー。一回ぐらいは参加してみたくない?」

「いや、其処で訊かれても…。でも私たち程度で行ける範囲だと精々"始まりの大陸"の最後だけど、もう次の大陸が開かれているから意味はないじゃない?」


 開放戦はその名前の通り、次の大陸への道を開くために必ず行われる大規模ボスイベント。だけど其れが行われるのは初回のみ。一度クリアした後はボスイベントは発生せず、次への道だけが開かれているらしい。ただし直前までのイベントは発生するとかしないとか。どういう事なのだろうか? (ここまで事前のネット情報)


「そうなんだけど、ほら、こういうのってボスイベント前にフラグ立てる必要があったりするでしょ?」

「知らない」


 フラグ…。朱里が偶に言うから知らない訳ではない。

 此れが終わったら…云々ではないよね。流れ的に。


「まぁ、物によってはあったりするんだけど、これもクリア必須ダンジョンとかあるんなら其処だけでも行ってみない?」

「うーん、考えておくわ」


 流れを経験したいというのなら止めはしないけれど、まずは先輩に訊いてみてから考えよう。有無についてもそうだけど、有った場合の難易度等も。


 それから少し話が続き、電話外から朱里が呼ばれたところで通話は終わりとなった。終わったので、もう少しだけ課題を進めようとペンを持ち直すと、電話が再び味気ないメロディを発する。朱里が戻ってきたにしては早いと思いつつ相手を確認すると、なんと相手は先輩だった。


「こんばんわ」

「こんばんわ先輩。どうしたんですかこんな時間に?」

「…明日も行くの?」


 行くと言うのはやはりゲーマーズ・ドライブの事だろう。先程も朱里と入る約束をしたので、その事を先輩に伝える。


「そう…私は明日は急用が出来たから行けないの」

「そうなんですか。其れなら仕方がないですね。

…そうだ、先輩に訊きたい事が有るんですけど良いですか?」

「?」

「先輩って開放戦のことをどのくらい知っているのですか?」


 軽い気持ちで訊いてみると、意外と言うか予想通りと言うか、開放戦に参加した事があるという証言が返ってきた。最前線から来たぐらいだから特に驚くことはない。


「其れでですね、開放戦の前って何処かのダンジョンに行ったりする必要があるんですか?」

「?」


 あ、この反応はイマイチ伝わっていないようだ。言い換えよう。


「開放戦に行くためには何か条件があったりするんですか?」


 すると今度は伝わったようで、すぐに答えてくれた。


「開放戦をする部屋にはいくつかの鍵があって、鍵はその大陸にあるダンジョンで手に入るのだけど…何故そのようなことを?」

「えっと、さっき朱里と電話した時に、一度くらいは開放戦に参加してみたいと言っていたんですけど、私たちだと縁遠いのでそれならボスまでの順序ぐらいは追体験出来ないか、みたいな事になりましてね」

「…ん。其れなら出来る。だけど今のふたりだと心許ないから今度言う」


 確かに私たちがそういう場所に行くのはまだ早いだろう。だけど、いずれは行くということは決まったので良しとしよう。明日朱里にも言おう。


 そして先輩との電話が終わり、気付くと良い時間だったので、途中だった課題を片付けて今日のところはこれで眠ることにした。





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