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電子世界のファンタジア  作者: 永遠の中級者
其れは、紅く燃える強者の大陸
220/237

205 依頼

「何とか目的の物は手に入りましたね」

「…一応多めに拾ったから此れだけ有れば十分と思う」


 偶々受けた依頼の関係で熱気渦巻く都市間の道へとやってきた私たちは其処で目的であった鱗を回収した。その鱗は砕いて混ぜれば薬の材料になるものなのだが、手に入れるまで少々あった。


 聞いていた話では"竜の鱗"という名称だったので、竜を目印として探していたのだけど竜らしきものは居ても鱗を持っている個体が見つからなかった。それもその筈。竜と言うだけで大きめを想像して探していたのだが、目的の個体は割と小さいサイズであったのである。とはいえ見つけてしまえば後はそう難しい事でも無かった。


「…というか、一匹捕捉するのに時間が掛かったのに、後は簡単だったのが何とも言えない…」


 目的の個体は私たちに気付いて逃げ出した。ようやく見つけた対象なので当然追いかけたけれど熱風と砂によって逃げられてしまった。だけどその逃げた先には目的の鱗が落ちていた。其れも複数。個体の撃破は関係無く鱗の入手が目的なので其れを拾う事で目的は達成された。


「思ったよりは早く終わったから良いじゃん。早く戻ろうよ」

「こうしている間もHPは削られるから急ごう」


 確かに展開はどうあれ油断すればすぐにHPが無くなるので、急いで街へと戻ることにした。都市間なので少し足を伸ばせば次の街に避難するという事も出来るけれど依頼で来ているので結局は戻らないと行けない。とはいえ一度入っておくのも良かったと後から思い出した。

 早々に戻る為に先輩が行使したスキル〈テレポート〉によって集まっていた私たちは光に包まれて瞬時に熱気の中から抜け出した。…既に訪れている街にしか飛べないから最近は機会も減っていたけれどこのスキルなら行って戻る事も出来たんだった。



 街に戻ってから私たちは真っ直ぐに宿へと戻って依頼をしてきたNPCに頼まれていた鱗を渡した。必要数よりも多く取ってきただけあって足りないと言う事は無く、それどころか報酬を少し増やしてくれるらしい。そういう事で渡された報酬は休む場所だからなのかちょっとした料理アイテムだった。其れだけでは少なく思えるが其れに加えて変わったものが出てきた。


「えっと…此れって設計図?」

「確か"型番"って言うアイテムだったかな?」


 報酬として渡されたのは型番アイテム、要は装備などの設計図である。型番アイテムは複数枚を繋ぎ合わせることでようやく使う事が出来るものであり、以前にも欠片を入手しているが、今回貰った物は欠片ではなく歴とした完成形だった。


「以前に来たお客さんのどなたかが残していった物なのですが、此処に有っても使い道は無いので」


 そう言って渡された設計図だけども、此れを使って作成出来る装備品はどうやら槌タイプの武器のようである。ハンマーなら"たんぽぽ"が基本装備にしているので何かしらの用途はあるだろう。問題は作成出来るかどうかだけど。


「本当に貰って良いの?」


 報酬として出しているので本当に良いらしい。その証拠に報酬を渡した後NPCは改めて礼を言って去って行った。残された私たちは一旦宿から出て設計図を確認した。どうするにしてもまずは確認である。


「折角貰ったんだし作ってみようよ」

「確かにスキルはあるから作ろうと思えば作れるけど…」

「…設計図で中途半端に分かる分、余計に難しそう」


 設計図の存在は大きい。ある程度工程が決められているので其処に向かって行くだけで物は出来上がる。しかし決められているからこそ回避出来ない難しさというのもある。自由に作成できるのなら近い技術で代用出来たりもするが、決められた工程だと下手に応用や代用技術を入れれば本筋からズレるかもしれない。経験の少なさから細かい部分は判断が付かない。


「じゃあ誰かに頼んでみる?」

「まあ其れなら技術面は大丈夫かもだけど」


 鍛冶に慣れた誰かに依頼するとなれば技術面は補える。何ならその方が質が良いものになる可能性は高い。技術に関して考えなくて良いのだからそれ相応の人材を探せば良い。幸にもその手の知り合いには心当たりが幾つかある。連絡先も知っているので何とかなるだろう。


「鍛冶方面の知り合いと言えば…"ジャンキー"辺りかな?」

「あの人も確かにこの手にも経験があったけれど、もしかしたらそれ以上の助けを得られるかも知れない…」

「そうなのですか?」

「鍛冶業を専門としたレギオンがあるらしいから、其処に持ちかけてみればもしかしたら…」


 ウインドウを呼び出してとある人物に宛ててメッセージを書き始める。その人物とは以前に交流のある従者持ち仲間の一人の"カナー・L"。彼女自身が鍛冶をしている訳では無いけれど彼女は鍛冶レギオンに籍を置いているのでレギオン内に話ぐらいは通るだろう。型番アイテムと言えば興味を惹くかもしれない。丁度ログインしているようなので返事もそう掛からない筈。


「これで良し」

「どうだった?」

「送ったばかりだから。…一応話を持ちかけてはみたけど、結果がどうあれ材料ぐらいは用意した方が良いかもね」


 気前の良い相手ならある程度受け持ってくれるかもしれないけれど、気前が良いとは限らない。其れに何よりマナーとしても依頼している側なので全て押し付ける訳では無いと分かる程度には用意しておいた方が良いだろう。…どうせ依頼が通らなければ自分たちで作る訳なのだから集める事にかわりは無い。


「結局は色々しないといけないのかぁ。で、材料ってどんなのが必要なのさ?」

「明確な指定はされていないみたいね」


 設計図を調べてみれば、工程については指定されているようだけど肝心の材料に関しては割と緩い指定が為されている。其れでなければいけないという指定が無いという訳では無いが、大抵は条件を満たせていれば良いという感じになっている。


「素材指定されているものが二つあるけど、その他は手頃な鉱石でも大丈夫みたいね。完成形の質が変わるみたいだけど」

「其れなら鉱石拘った方が良いじゃん!」

「…其れで、指定されている素材ってどんなの?」

「えっと…」


 必ず必要とされている素材はヒートコアとロックアンバーという名称のようで、聞き覚えがあるかはさておき、どちらも手持ちに無い素材だった。どうやらその素材について調べる所からになりそうである。

 指定素材もだけど所持している鉱石自体が売ってしまったり元から少なかったりで疎らなので一度採掘する必要性がある。良い機会でもあるだろう。


「採掘なら前に行った集落が丁度良いんじゃない?」

「あー彼処かぁ。彼処ならある程度の補助があるから掘り易いね。問題は物が残ってるかって事だけど」


 以前に訪れた集落には採掘にうってつけの場所が存在する。其処は鉱山が軸となっているような集落なだけあって採掘に関する道具の貸し出しなどが行われている。なので近場で採掘するぐらいなら集落に向かう方が良いだろう。領域によるダメージも無いので。ただこの大陸における最初の拠点となり得る場所なだけあって大陸に入ったプレイヤーが流れ込んでいる可能性があるので、目的の鉱山が掘り尽くされていないか心配なところ。(時間が経てば戻るけれど、今回のログイン内では待てない)


「ともかく行こうよ。場所が場所だから素材の事も訊けるかもだし」

「そうですね」

「じゃあまたスキルで…」


 そう言って先輩がウインドウを操作して先程も使用した〈テレポート〉を起動する。大きく戻るにしてもスキルのお陰で領域の中を進まなくとも熱気を越えられるのは本当に助かる。


 スキルの効力が完了する頃には其処は鉱山集落 エンサン。

 暑い事には変わりないけれど領域の外というだけ有って温度が控えめと思える不思議。



 



【独り言】

別作品の修正をしていたら書き溜めがもう…

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